作家インタビュー第17回 赤い魔術師さん

インタビュー作家座談会

赤い魔術師さんは23歳の男性。独身です。サッカーが大好き。プロのパズル作家として、日々パズル作りに励んでいるそうです。

(竹)まずは小さいころの話から。新潟県の佐渡島出身だそうですね

赤い魔術師はい。生まれも育ちも佐渡島です。佐渡には何もないんですよ。パズルくらいしかやることがなかった。ニコリを知ったのも佐渡にいたときです。学校の図書館でパズルについて調べていて見つけました。島内では売ってなかったから、船で新潟市まで買いにいったんですよ

(竹)実家は今でも佐渡島?

赤い魔術師はい。農業をやっていて、田植えの時期には毎年呼び出しがかかってます

(竹)えっ、田植えの手伝いのために東京から帰省してるの? 偉いなあ

赤い魔術師人手不足なので(笑)

(竹)今日はそんな親孝行な赤い魔術師さんの素顔に迫ります。パズル作りで生計を立てているんですよね?

赤い魔術師はい、専業パズル作家です。パズル以外の収入はありません。大学2年のときにパズル一本で生きていこうと決めて、しばらく休学したあとに大学をやめちゃいました

(竹)ニコリ以外でも活躍されているということですが、一日に全部でどのくらいの問題を作っているんですか?

赤い魔術師平均すると1カ月に50問くらいかな。でも、忙しいときとそうでないときの差が大きいので、正確なところはわかりません。クロスワードや数独を中心に作ってます。ぬりかべのようなロジカルなパズルをもっと作りたいんですが、現実にはクロスワードや漢字パズルのような言葉ものの需要のほうが高いんですよ。ふだんパズルをやらない人でもとっつきやすいからでしょうね。言葉ものでも、スケルトンパズルのような理詰めで解けるものがもっとはやるといいですね。数字ものよりも見た目が柔らかいので、ロジカルな数字パズルへの入り口になると思います

(竹)ニコリのパズルを作るときと、他のところ向けにパズルを作るときで、意識の違いはありますか?

赤い魔術師あります。ニコリのパズルを作るときは、何か新しいことをやろうと思いながら作っています。ほんとうはいつでも新しいことをやりたいんですけど、他のところだとふだんパズルに触れない人が解くことが多いので、あまり無茶はできないんです。それと、ニコリなら安心して冒険できるというのもあります。編集部がしっかり問題をチェックしているから、あまりにやりすぎた問題はちゃんとボツになります。他のところだと、プロとしてすべて自分でコントロールしないといけません

(竹)なるほど。新しいこと、とひと口にいってもいろいろな新しさがありますよね。見た目の新しさとか、手筋の新しさとか。赤い魔術師さんが目指すのはどういう新しさですか?

赤い魔術師見た目で勝負するのは僕には無理です。解き筋や解く過程のような『中身』で新しい方向を目指しています。過去に誰かが使ったネタでも、自分の中で新しいと思えれば使います。パズルそのものに対する感覚って、時代とともに変わってきますよね。昔使われていたネタでも、歴史がひと回りすれば新しいとらえ方、感じ方が出てきます。そうなったら、もう別の新しいものと考えてもいいと思っています

(竹)深いなあ。パズルを作るときだけでなく、解くときのこだわりもありますか?

赤い魔術師速く解くことよりも、気持ちよく解くことを大事にしています。例えば、ぬりかべを解くときは、シマ(白マス)になると決まったマスには印をつけています。スリザーリンクの線が通らない部分もそう。そのほうが解いていく過程が目に見えて楽しいんです。他の人が解いているのを見るときも、印をつけながら解いている履歴だと見ていて面白いんですよ。その人の目線の動きがわかりますからね

(竹)解くときの過程や解き手のことをとても意識していますね

赤い魔術師僕は、パズルというのは、解き手と問題の対決の場でなく、解き手と作り手のコミュニケーションの場だと思っています。作り手は『解き手がどう考えるか』を想像しながら問題を作る。シミュレーションです。実際に解き手がどう考えたか、自分の想像があたっていたかどうかは結局わからないんだけど、そこが面白いんです

(竹)話題を変えます。得意なパズル、苦手なパズルを教えてください

赤い魔術師ぬりかべは作るのも解くのも得意です。他に、数独やへやわけを作るのもかなり好きです。ただ、どちらも解くのは苦手です

(竹)へー、数独を解くのが苦手というのは意外です。いつもいっぱい作っているのに

赤い魔術師解くときに『自分ならどう作るか』とかいったことを想像しながら解いているからかもしれません。自分の想像と実際の問題の展開が合っているとすんなり解けるんですけど、違っているとなかなか解けません。それはそれで楽しいんですけどね

(竹)作るのが苦手なパズルはありますか?

赤い魔術師ケータイパズル数独にはないパズルですけど、橋をかけろです。問題として成立させるためのコストが高いんですよ

(竹)コスト?

赤い魔術師僕はできるだけ自分が好きなことを問題に織り込みたいと思っているんですけど、橋をかけろでそれをやろうとするとほとんどハタンするんですよ。ハタンしないように作ろうとすると、やりたいことの多くを犠牲にしないといけない

(竹)なるほど。そういう意味だと、数独もコストがかかる気がするんですが…

赤い魔術師うーん、そうですか? そうすると、単純に慣れの問題かもしれませんね。橋をかけろはあまり作ったことがないので

(竹)将来の話。例えば、自分で新しいパズル雑誌を発行するというようなことは考えているんですか?

赤い魔術師いつかはやってみたいです。でも、具体的にどうすればいいんでしょうね。実際に行動に移せるまでは考えが至っていないです。それに、今の出版業界は大きく変化している時期なので、出版に限らずいろいろな方法を探っていかないといけない気がしています

(竹)そんな中で専業でパズル作家を続けていくことに不安を感じたりしませんか?

赤い魔術師そこは大丈夫です。でも、ずるずる続けていくだけじゃ先細りになってダメだとも思っています。いただいている依頼をこなしていくだけじゃなく、先のことを考えて行動しないと。実際、知り合いのつてをたどって売り込みにいったりもしています。ほんとはそういうの苦手なんですけど、苦手だなんて言ってられないので

(竹)エネルギッシュですね。私が大学生のころにはパズル作家として生きていくことなんて考えもしなかったんですが、今は赤い魔術師さんのようにパズル作家を目指している学生さんが増えてるんでしょうか

赤い魔術師いると思います。実際、何人か心当たりはあります

(竹)そうなんですか。じゃあ、せっかくいい機会なので、作家志望の学生さんにアドバイスをお願いします

赤い魔術師自分が作りたいものばかりでなく、いろいろなパズルに手を広げないと生き残れないと思います。僕自身、ほんとうはマニアックなものばかり作っていたいんですよ。でも、それじゃダメ。世の中にマニアな人はほんの少ししかいないので、マニアじゃない人に注力しないと先がないです

(竹)いろいろなパズルといえば、赤い魔術師さんはペンシルパズルだけでなく、メカニカルパズル(知恵の輪や組み木などの立体パズル)にも手を広げているんですよね

赤い魔術師まだ勉強している段階です。メカニカルパズルのいいところは、ルールがわかりやすいところですね。基本的には『外せばいい』だけですから。ペンシルパズルは、ルールを理解して、その上で解き方も理解しないといけない。取り組みやすさではメカニカルパズルのほうが上ですね。ただ、メカニカルパズルの世界には、難しさや解けるまでに動かす手数の多さを競うようなマニアックな風潮もあるんです。それだけだと普通の人には敷居が高い世界になっちゃうので、敷居を下げる方向で活動できたらいいなと思っています

(竹)最後になりますが、解き手のみなさんに対して何かどうぞ

赤い魔術師いつも解いてくれてありがとうございます。僕は、自分が作るときに思い描いた通りに問題を解いてくれなきゃイヤ、とは思っていません。盤面の左上から強引に解いてくれたってかまいません。でも、何かしらあなたにとっての『面白いところ』を探しながら解いてくれると嬉しいです。それが僕が想定していたのと違うところでもかまいません。自分が一番気持ちよく楽しめるよう、自由に遊んでください


インタビュー : 2008年8月 2008年9月21日公開