作家インタビュー第19回 串丸さん

インタビュー作家座談会

串丸さんは40代の男性。古くからのニコリスタッフで、nikoli.comやニコリのケータイパズル数独の責任者なのです。今回はスタッフの立場を忘れていただき、あくまでひとりの「パズル作家」としてお話をうかがう予定だったのですが…。

(竹)幼いころの話から入りたいと思います。パズルに最初に触れたのはいつごろですか?

串丸幼稚園のころに『はめ絵』で遊んでいた記憶があるから、それが最初かな。厚紙に絵をはめ込むだけの簡単なものでしたけど。小学生のころは週刊誌に連載されていたメイロを毎週解いてましたよ。袋小路をぬりつぶしたりしてましたね

(竹)袋小路を順々にぬりつぶして正解路を絞り込んでいくというのは、迷路を確実に解くときの常套テクニックですね。自力で発見されたんですか?

串丸そうです。道をたどる方法だと、消しゴムが必要になったりするじゃないですか。消しゴムが面倒だから、解くのにはより面倒な袋小路ぬりつぶし法。本当の暇つぶしでしたよ。ほかには新聞に載っているクロスワードもやってたけど、こっちは小学生の語彙だと解けないことも多かったですね

(竹)勉強はできるほうでした?

串丸小学生のときはアタマよかったですね。中学で普通になって、高校でバカになりました(笑)。小学校の算数はパズルっぽいから面白かったなあ。中学、高校と進むにつれてパズルっぽくなくなってきて、つまらなくなってしまいましたね

(竹)ニコリとの出会いは大学生のときでしたよね

串丸そうです。『パズル通信ニコリ』の5号を友だちが見せてくれて、一緒に遊びました。すぐに本屋に買いにいって、9号まで毎号買い続けましたね

(竹)そのあと、ニコリに入社した、と

串丸はい。当時のニコリの事務所は町田の通り沿いにあったんですよ。プレハブ小屋の窓にニ、コ、リのでっかい文字がはりつけてあったから、ここがニコリの事務所なんだなって覚えてたんですね。ある日通りかかったときに、買いそびれていた本があったのを思い出して、本を買いに寄ったんですよ。そしたらなぜか社長とそのまま飲みにいくことになって。いま大学5年生で、就職決まってないって話したら、じゃあうちに来いよということになって、そのまままだニコリにいます(笑)

(竹)入社してすぐに本の編集をしたんですか?

串丸最初は営業として入ったんですよ。といっても、当時は本を作るときはみんなで手分けして作って、売りにいくときはみんなで手分けして売りにいくって感じだったけどね。新刊は全部、自分たちで書店まで運んで直接納品してました。車を運転できるのが私と社長しかいなくてねえ…って、今日はニコリスタッフとしてじゃなくて、パズル作家として話をするんじゃなかったっけ?(笑)

(竹)ああごめんなさい、つい(笑)。というわけで、強引にパズルの話題に戻します。パズルを作るようになったのはニコリに入ってからですか?

串丸そうです。営業回りの移動中に電車の中で作ったのが最初でした。処女作はケイスケだったかな

(竹)ケイスケというのは、まっさらな盤面にリストで与えられた数字列たちと黒マスを埋めていくニコリのパズルです。ケイスケって、そのころにはもう世の中に存在していたんですね

串丸いやいや、ケイスケというパズルのルールそのものからね

(竹)えっ、ケイスケって串丸さんが考案したパズルだったんですか?

串丸考案したといっても、ナンスケとケイだけクロスを組み合わせただけなんだけどね(ナンスケ、ケイだけクロスはパズルの名称)

(竹)組み合わせるだけといっても、オリジナルのパズルを作るのはすごいですよ。カックロのブームが来たのはそのあとですか?

串丸うん。ブームといっても、ニコリ事務所の中だけのブームだけど。社長が火付け役。私と社長で、お互いに問題を作っては解かせ、作っては解かせをひたすら繰り返してたなあ

(竹)カックロはどのあたりが面白かったんでしょうか?

串丸理詰めで解けること。パズルを知らない人でも楽しめること。このふたつかな。当時からパズルマニアの集団はあったんだけど、どうしても難しい問題が高級な問題、という意識になりがちなんです。だけど、私も社長も一般人だから、マニア向けの激しく難しい問題をあまり面白いと思わなかったんですよ。それで、ニコリはマニア向けでなく一般の人向けの問題を提供していこうって決めました。カックロは、ちゃんと作れば誰でも最後まで解ける問題になります。だから気に入ったのかな

(竹)いま、いちばん好きなパズルもカックロですか?

串丸いまはスリザーリンクがいちばんかな。カックロはケータイやパソコンの画面ではちょっとだけ解きにくいんですよね。そういう意味ではぬりかべもけっこう好き。でもパズルとしての完成度からいうとやっぱりスリリンだと思います

(竹)完成度というのはどういう意味での完成度ですか?

串丸ルールのわかりやすさ、奥の深さ、問題を作るときのコントロールのしやすさ。特に最後が重要だと思います。スリリンって、ひとつひとつの線の引きかた、曲がりかたを細かくコントロールできますよね。たとえば、へやわけ(ニコリのパズル)は数字や部屋割りをひとつ決めただけで周りまで一気に決まっちゃうことが多いじゃないですか。スリリンはひとつの数字が及ぼす影響が広範囲にわたりにくいからコントロールしやすいんですよ。ということは、作家の個性が出やすいので、いろいろなタイプの問題が集まるから楽しいというところもありますね

(竹)なるほど。逆に、嫌いなパズルはありますか?

串丸パズルの種類として嫌いというのはありません。ただ、どのパズルでも『解きにくい問題』は好きじゃないですね。より正確にいうと『解くための配慮がない問題』は、いいとは思えないんです

(竹)串丸さんは立場上いろいろな種類、いろいろな難易度の問題を作らなければいけないことも多々あると思います。そんな中でも、パズル作るときのこだわりはあるんですか?

串丸こだわりは、あまりありませんね。ただ、簡単な問題であれ、難しい問題であれ、解く人にストレスをかけないように、ということは心がけています。難しい問題でも初心者を放り出さないような配慮は必要でしょう。初心者でもうんと考えれば、必ず次の解き筋が見えてきて、なんとか最後までたどりつける。そういう問題が理想ですね。だから、奇抜な仕掛けを使った『一発ネタ』の問題は作りません。仕掛けに気づかない人には永遠に解けない、逆にいえば仕掛けに気づく人だけを対象とした問題だから。もちろん、そんな問題を否定しているわけではなくて、そういう問題も必要だと思っているんだけど、私が作らないっていうだけね

(竹)串丸さんにとってパズルを作ることはどういうことなんでしょう

串丸仕事です(笑)。それはおいといて。私にとってのパズル作りは、自己表現ではなくサービス業です。自分を理解してもらいたいということはまったくなく、解いてくれる人を楽しませたいという思いだけです。パズルの楽しさを知ってもらいたいですね。あるパズルの問題を1問解いてもらったときに、それがたまたまつまらない問題だったおかげで、そのパズル自体を否定されてしまうのが最悪ですよね。だから常にみんなが楽しめる問題を作りたいと思っています。編集についてもまったく同じことなんですけど

(竹)パズル以外のことも少し聞かせてください。趣味は何ですか?

串丸バイクのツーリングですね。目的地までばらばらに走って、目的地で仲間と合流して、キャンプして、酒を飲むっていうスタイルが気に入ってます。ツーリングがしんどい歳になったら、ずっとバイクをいじっていたいですね。ネジを緩めたり締めたりをただただ繰り返す(笑)。老後の楽しみかな。ほかに、読書も趣味かも。堅いのも柔らかいのも何でも読みますよ

(竹)最近は水泳にハマってますよね

串丸そうですね。だんだん長い距離を泳げるようになっていくのは楽しいですね。だけど自己流なんでスピードがまったく上がらない。こんど一緒に泳ぎにいって教えてよ

(竹)まかせてください、ばっちり教えちゃいますよ。さて、そろそろお開きにしたいと思います。最後に、解く人に対してメッセージをお願いします

串丸パズルを楽しんでいただければ、それでじゅうぶんです。もしも楽しめない問題があったとしたら、作家を責めないでください。すべて編集の責任です


インタビュー : 2008年10月 2008年11月12日公開

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