作家インタビュー第30回 ぽっつさん

インタビュー作家座談会

パズル作家をおよびしてお話をうかがうパズル作家インタビューのコーナーです。今回のゲストはぽっつさん。33歳男性、独身。ガタイがいい。ナンバーリンクをはじめとして、こだわりのパズル問題をたくさん作ってこられたベテラン作家です。nikoli.comにも、ナンバーリンクを中心に問題を提供していただいています。聞き手はニコリスタッフの(竹)。にぎやかし役として(金)も参加しました。

(竹)なにやらとてもお忙しそうですが、どんなお仕事をされているんですか?

ぽっつレジャー系の会社で販売の仕事をしています。4月は特に忙しくて、お休みは3日しかありませんでした。正直、最近もちょっと忙しくててんてこ舞いですが

(竹)そんななか、今日は時間を割いていただいてありがとうございます。ニコリのパズルとの出会いについて教えてください

ぽっつパズル通信ニコリ』の29号を買ったのが最初です。ふくめん算に感動しました。特に大西京子さんの問題。コトバが数字になっている。ただのパズルじゃなくて、見た目に訴えているところがおもしろかったです

(竹)そのあとご自分で問題を投稿されたのが、44号の虫くい算ですね。積が『44444444』と完全に明かされている異色作でした

(金)44444444を素因数分解する問題です

ぽっつ今だとたぶん禁じ手に近いですね。当時から一発ネタが好きでした。初投稿、初掲載。デビュー作が載ったから、そのあと調子に乗っちゃったのかも。今思うと、もっと正統派な問題も作ろうよ、とあのときの自分に言いたいです(笑)

(竹)ナンバーリンクの初掲載は46号ですね。いきなり数字が点対称に配置されている問題。ナンバーリンクに詳しくない方のために説明すると、ナンバーリンクで対称配置でかつおもしろい問題を作るのはとても難しいのです

ぽっつ作ってみようと思ったら、できちゃった感じです。対称配置というのもあまり意識してなかった。白紙の盤面を見ていたら、勝手に線が浮きでてきた。コンセントレーション。浮きでてきたのを見て『これイケるじゃーん』って作ったら、あの問題ができました

(竹)意味がわかりません(笑)。ふつうそんなの浮かびあがってこないですよ。投稿するまでにたくさんの問題を解いたり作ったりされていたそうですから、そのおかげでしょうか?

ぽっつそうそう。経験の蓄積が大事ですね

(竹)聞くところによると、最初に投稿するまでに習作を300問作ったそうですね

ぽっつそうそう。頭のなかだけで組みたてただけのものも含めてですけど。載せることを意識して作ったのがあのデビュー作です。初投稿で載れたのは、当時としては対称配置のナンバーリンクは珍しかったという理由もあるのかな?

(金)珍しかったです。ナンバーリンクの対称配置はぽっつさんが始めたんじゃなかった?

ぽっつその前に、サマンササマサマさんがいましたよ。『パズル・ザ・ジャイアント』3号のナンバーリンク・ザ・ジャイアントでキレイな対称配置をやっているのを解いて、あ、神だな、と思いました。あの問題がなければナンバーリンクを作らなかったですね。他人の影響をすごく受けやすい性格なんです。さっきの虫くい算ももともとは大西京子さんのふくめん算に影響されて作ったものだし

(竹)なるほど。個性的な問題を作っているから、ちょっと意外でした。ところで、今日は12年前に別の場所で行われたぽっつさんのインタビュー記事をもってきました。当時ぽっつさんは『パズルはアート。第一印象が大事』という話をされていました。今でもそうですか?

ぽっつアート、かつ、サービス業。最近は解き手を意識するようになってきました

(金)12年前も解き味が大事とは言っていましたね

ぽっつ今はより強く解き味を意識しています。プロ意識。あのときはまだアマチュア的に『思いついたからやっちゃえ!』って好き勝手にやってました。いい意味でも悪い意味でも

(金)成長しましたねえ

ぽっつ仕事をするようになって変わりました。他人になにかを送るときには、受けとってもらう努力もしないといけない。アートだけじゃダメ。質を落とさずに、さらにわかってもらうためのプレゼンテーションをしないといけない。むかしは『載ればいいんでしょ』的な考えかたが大きかったけど、今は載ってから解いた人の反応が気になります。12年たって、一回りして、性格も作品も丸くなりました。BMI的というか、体格的にも丸くなりましたけど(笑)

(竹)オチはまだ早いです(笑)。話題を変えて、数独の話を

(金)ぽっつさんは、明かされている数字を1,2,3,…と並べるのが好きですよね

ぽっつ誌面を見たときに、作者の名前がなくても『あ、これはあの人の問題だ』と解き手にわかってもらえるような問題にしたいんです。目立ちたがりなんでしょうね。それと、問題をトータル・パッケージとして提供したいんですね。解く前にも楽しんでもらって、解いているときにも楽しんでもらって、解いたあとにも『あー、なるほどね』と感動してもらえるような。プロ野球といっしょなんですよ。観る前の楽しさ、観てるときの楽しさ、観たあとのおみやげを買う楽しさ。本質だけじゃなくて、その前後も大事

(竹)なるほど

ぽっつ数独で数字を規則的に並べる意味はほかにもあるんです。入る数字が探しやすいとか。たとえば、こういうときに、ここに9が入るってすぐわかる(と図を書きながら説明してくれましたが、深すぎるので割愛します)

(竹)そのことも最初から意識していたんですか?

ぽっつ作るようになって、あとから気づきました。最初はやっぱり見た目から入った。篠崎さんスゲー、と思ってマネしはじめました。さっきも言った通り、他人に影響されやすいので

(竹)篠崎さんというのは、むかし、今のぽっつさんと同じように数字を並べた数独の問題をたくさん作っていらっしゃった作家です。ほかの作家の話が出たところで、ついでに聞いちゃいます。今、注目している作家は?

ぽっつナンバーリンクだと、にょろっぴぃさんですね。意外性のある問題をよく作っています。それから、nikoli.comのナンバーリンクは作っていないけど、きつねのえふでさん。神、というか、宇宙人です。ナンバーリンク作家から見て、こういうコンセプトの問題を作りたいけど数学的に無理だよね、と思っていることを実現してくれる。ナンバーリンクから離れるとGutenさんがそんな感じ。こういう問題があったらいいな、というものを作ってくれる。理想を実現化してくれるチカラをもっています。ついこないだもスリザーリンクで『こりゃムチャでしょー』っていう問題がありました。クリエイティブですよね

(竹)ほかには誰かいますか?

ぽっつCastyさんのトータライズ的な問題。神ですね。自分にないものをもっている人は素直にスゴイと思います

(金)ぽっつさんの場合、オーソドックスな問題を作ろう、と思っていても、ついつい違う方向にいっちゃうんでしょうか?

ぽっつそうですね。自分は悪い意味で天才肌なので。自分で言っちゃうのもなんですけど。10×10サイズの問題でも、作れるときは2分で作れるのに、作れないときは1日たっても作れない

(金)たぶん、自己主張をしたいんでしょう。だから、自己主張できるネタが見つからないといつまでも作れないんですよね

ぽっつそう。基本的に自己主張。この問題が俺のブランド、みたいな気持ちで作っています。流して作ることはできるんだけど、それは自分が許せない。完成した問題でも、解きなおして『こんなのオレじゃなーい』って自分でボツにすることもよくあります

(金)そのあたりはむかしから変わっていませんね

ぽっつあとは、デビューが近いおらけさんゆーたんさんあぶら虫さんあたりにも刺激を受けました

(竹)解くほうはどうですか? 他人の問題は解いています?

ぽっつケータイの問題は全部解いています。クロスワードは苦手なんですけど、いちおうがんばってますよ。nikoli.comもナンバーリンクは全部解いています

(竹)ぽっつさんはケータイのヘビーユーザーですよね。メールを打つのも、パソコンのキーボードよりケータイのほうが早いとか

ぽっつ早いですね。ニコリにパズルの原稿を送るときもケータイメールで送ることが多いです。いまだに自宅にパソコンがないんですよ。数独とカックロはパソコンよりケータイに向いたパズルですよね。数字の入力が自然にできますから

(竹)ケータイで解かれることを意識して問題を作ったりしますか?

ぽっつやってますやってます。数独で、なるべく指を動かさなくても解けるように数字を選んだり、なるべく同じ数字を連続して入れられるようにしたりとか

(竹)へええ、そんな配慮をしてたんですか。さすがだー。パズル以外のお話。お休みの日はなにをやっていますか?

ぽっつ空手を教えています。友人が道場開いているので、ボランティアで手伝っているんですよ

(金)極真空手の四段でしたっけ?

ぽっつ三段です

(竹)体格がいいですもんねえ。武勇伝もいくつか聞いたことがあります。格闘家の故アンディ・フグ氏とスパーリングをしたこともあるとか

ぽっつはい、あります。2分間。蹴りを入れられたんですけど、痛かったという記憶がないんです。痛いというより、もう、熱いんですよね

(竹)道ばたで悪者を取りおさえたこともあるんですよね

ぽっつ新宿でナイフを持った人に襲われて、しかたがないから交番につきだしたことはあります

(金)ぽっつさんを襲うなんて考えられないけどねえ、怖くて

ぽっつ自分では、根はオトメな人間だと思ってるんですけど(笑)

(金)お菓子に詳しいですよね

ぽっつスイーツとラーメンに詳しいです。某情報サービス会社で働いていたことがあるので詳しくなりました。ラーメンの本のレビューも書いたことがありますよ

(金)1日8杯のラーメンを食べたとか言っていましたよね

ぽっつそういうこともありました。今はハシゴしても2軒とか3軒ですね

(竹)じゅうぶんでしょう(笑)。さて、そろそろシメたいと思います。最後に、解く人に向けて、なにか一言どうぞ

ぽっつ感じるまま解いてください。問題にこっそり仕掛けを入れることもあるんですけど、気づいてくれる人だけ気づいてもらえればそれでいいと思っています。自分の作品からフィーリングでなにか『感じて』いただければうれしいです。ロジカルなパズルの世界でもフィーリングを大切にしていきたいと思っています

(竹)ありがとうございました。これからも個性的な問題をよろしくお願いします


インタビュー : 2010年6月 2010年7月21日公開