作家インタビュー第31回 裄紘さん

インタビュー作家座談会

ひとりのパズル作家とじっくりお話をするコーナーです。今回のゲストは裄紘さん。22歳男性。大学院で電気系の研究をしているそうです。マジックを趣味にしているエンターティナーでもあります。

(竹)まずは定番の質問から。子どものころはどんなお子さんでした? 頭を使うのは好きでした?

裄紘頭を使うのは好きでしたけど、使う方向がヘンでした。小学校1年生の算数で、竹ひごをつなげて好きな形を作るという授業があったんです。ふつうはなにかの図形を作るのに、漢字を作って遊んでいたんですよ。『木』とか。そうしたら先生に『そういうのは国語の時間にやりなさい』って怒られちゃって。おかげで国語と算数の違いがわかりました

(竹)成績はどうでした? 神童とよばれていたりして

裄紘神童というほどではないですけど、よかったですよ。中学校、高校と進むにつれて落ちぶれていきましたけど

(竹)パズルと出会ったのはいつごろですか?

裄紘新聞のパズルコーナーは小学生のころから見ていました。神経衰弱のような、絵を見て解くパズルを軽く解いていました。たしかスリザーリンクや橋をかけろもあったんですけど、ちょっとだけ手をつけて、挫折しました

(竹)そんな裄紘さんが、ニコリのパズルを始めたきっかけは?

裄紘最初はニコリとは関係ないところだったんですよ。高校1年生の冬休みに、暇をもてあましてインターネットでおもしろそうなことを探していて、キャストパズルを見つけたんです。それで試しに始めてみたらハマっちゃって。キャストパズルのパッケージに、芦ヶ原伸之さんの紹介文が載っていました。挑戦的な書きかたがおもしろいなあと思って、今度は芦ヶ原さんについていろいろ調べてみたんです。そうしたら、ある雑誌に連載していたコラムがまとめられて一冊の本になった、という情報を見つけて。それで買ったのが『パズルの宣教師』という本なんです

(竹)以前ニコリが発行した単行本ですね

裄紘はい。そこで初めて『ニコリ』が雑誌や会社の名前だということを知りました。それまでも新聞なんかで『ニコリ』の名前は知っていたんですけど、どこかにいるひとりの作家くらいにしか思ってなかったんです。それで雑誌の『パズル通信ニコリ』を買いはじめたのが、ニコリとの出会いです

(竹)『パズルの宣教師』から入ってきたとは、珍しいパターンですね。そこから芦ヶ原さんの著作を漁る方向でなくて、ニコリへ向いたとはおもしろい

裄紘いやー、芦ヶ原さんの本も欲しかったんですけど、絶版になっているものが多くて(笑)

(竹)ニコリのパズルはおもしろかったですか?

裄紘おもしろかったです。自分が成長したおかげか、小学生のとき新聞で見て解けなかったパズルも解けるようになっていましたし

(竹)ニコリを買いはじめて、最初に気に入ったパズルはなんでしたか?

裄紘フィルオミノ(決められたルールに従って、盤面に数字を埋めつつブロックに区切るニコリのパズル)です。キャストパズルにハマっていたころ、ペントミノ(正方形をタテヨコに5つつなげてできる形)のブロックをケースに詰めこむパズルにもハマっていたんですよ

(竹)テンヨーさんのプラパズルですね

裄紘はい。それにちょっと見た目が似ていたので親近感を覚えました。そのほかだと、へやわけも好きでした

(竹)『パズル通信ニコリ』に初めて投稿したのはいつですか?

裄紘110号("05春号)を買って、その夏に投稿したのは覚えています。初めて載ったのは何号だったかなあ?(注:113号でした)最初に載ったのはナンバーリンクです

(竹)どうしてパズルを作ろうと思ったんですか?

裄紘うーん、なんでだろう。謎です(笑)。ただ、ニコリを読んでいたら、読者が投稿してみんなで本を作るスタイルなんだというのはわかったので、それで作る気になったんだと思います

(竹)今、好きなパズルはなんですか?

裄紘へやわけは今も好きです。ほかには、ましゅも好きです

(竹)苦手なパズルは?

裄紘数独とひとりにしてくれ、それにナンバーリンクですね

(竹)えっ、ナンバーリンクは苦手になっちゃったんだ。デビュー作なのに

裄紘そうなんですよ。解くのはそうでもないんですけどねえ。作るのがあんまりうまくいかないんです

(竹)個人的には、スリザーリンクできれいな問題を作られている印象がありますが、どうですか?

裄紘特別にこだわりがあるわけではないです。スリザーリンクに関しては、始めにあかす数字の個数を決めてから、それを盤面に均等にちらばすように作っています。だいたいマスの数の4割にしています。そうするとバランスがよくてきれいな問題にしやすいんですよ

(竹)じゃあ、裄紘さんのスリザーリンクでは、数字の個数は必ずマスの数の4割になっているんですか?

裄紘必ずというわけではないですけど、だいたいそうなっているはずです

(竹)数字をあかす場所でなく、個数を最初に決めて作るというのは珍しいですね

裄紘初めて作ろうと思ったときに、数字の個数をどうしようって悩んだんです。ただてきとうに置くのもなんだかなあと思って、ほかの人の問題で個数を調べてみたんです。そうしたらだいたいみんな4割だったので。じゃあ4割でいこうかなと

(竹)ちゃんと調べてから作りはじめるなんて、まめですね

裄紘不安なんですよ、なにかを新しく始めるときって。そういう性格みたいです

(竹)じゃあ、たとえば女性に告白するときも、あらかじめ相手のことを下調べしたりする?

裄紘いやいや、そこまではしませんね。というか、そのあたりの話には今のところ縁がないです

(竹)草食系男子?

裄紘ってよくいわれます(笑)。自分では、内面にはいろいろと持っているつもりなんですけどね

(竹)パズルを作るときにこだわっているところはどこですか?

裄紘こだわりといえるかどうかわからないですけど、ボクは始めに『こういうことをやりたいな』って決めてから問題を作るんです。それで、できてから解きなおしたときにそれが達成できていなかったら、作りなおしたり、ボツにしたりします。具体的には『ここから解けちゃうんだー』という部分があったときですね。作るほうがどれだけがんばっても、別のところから解いちゃう人はいると思うし、それはそれでいいと思うんです。でも、素直に順々に解いていったら必然的にこうなるよね、というくらいにはしたいんです。そう解いたときにいちばん楽しめるように作っているつもりなので


(竹)パズル以外では、マジックを趣味でやってらっしゃるんですよね?

裄紘はい。大学に入ったとき、たまたま奇術部のマジックを見たんです。『スゲーなあ』と思いました。自分の知らない世界があると感じて、入部しました。それが始まりです。おもにカードマジックをやっています

(竹)先日見せていただきましたけど、ほんとにじょうずですよね。というところで、ここで一発見せていただきましょう!

裄紘えー、もう、しょうがないなあ…。(といいつつ、笑顔でポケットからトランプを出す)研究中のマジックなんですけど

(カードの山から、特定のカードを飛ばすマジックを見せていただきました)

(竹)おお、すごい! カードの飛びかたがかっこいい! こういうのって、手先が器用じゃないとできないですよね?

裄紘よくいわれるんですけど、そんなことはないですよ。たとえば、バスに乗るときに使うバスカードってあるじゃないですか。あれを読み取り機に入れるのを、よく失敗するんですよ。差しこむ角度が悪いらしくて。それくらい不器用でも、マジックはできます(笑)

(竹)パズル作りとマジックの共通点ってありますか?

裄紘うーん、どうでしょう? ボクの場合、マジックのネタはほかにすでにあって、演出の部分で自分なりのアレンジを加えるということが多いです。マジックは見せてナンボの世界だと思っているので。パズル作りは、ネタからオリジナルで作りますよね。あ、でも、パズル作りでも、今までにある手筋を組みあわせて自分を表現する、という作りかたもありますね。そのあたりは共通しているのかもしれません

(竹)裄紘さんにとっては、マジックもパズルも自己表現の場?

裄紘自己表現という意味では同じですけど、表現したいものが違います。パズルでは『ふつうの自分』というか、社会に出ている自分の表現。マジックでは、ふだん表せていない自分、ほんとうはこういう面もあるんだよと思っている自分の表現。トランプの表と裏のような関係ですね。パズルとマジックの関係については、まだ自分の中でも結論は出せていません。近いようで、遠くて、でもやっぱり近いのかな、という感じです。これから考えます

(竹)今日はおもしろいお話とマジックをありがとうございました。最後になりますが、裄紘さんのパズルを解いているみなさんへのメッセージをお願いします

裄紘いろいろ話しましたけど、結局のところボクは好きなように作っているので、好きなように解いてください。それから、みなさんの感想やコメントはとても参考にしています。どんなコメントでもうれしいので、どんどんコメントをください


インタビュー : 2010年10月 2010年11月5日公開