作家インタビュー第42回 おく山みつゆきさん

インタビュー作家座談会

nikoli.comで活躍しているパズル作家をお招きして、あれこれお話を聞くコーナーです。今回のゲストはおく山みつゆきさん。30歳前半、男。事務系のお仕事をされているそうです。とても神経を使う職種だそうですよ。

(竹)子どものころはどんなことをしていましたか?

おく山みつゆき幼稚園のころから工作が好きで、いろんなゲームを作っていました。紙で魚を作って、針を引っかけて釣り上げるゲームとか。方眼紙についたてを立てて迷路にして、パチンコ玉を転がして遊ぶゲームとか

(竹)けっこう本格的な工作ですね。まわりの人と遊んでいたんですか?

おく山みつゆきみんなででも、ひとりでも遊んでいました。兄はいますが、興味が正反対だったからあまり乗ってきませんでした。ただ、オリジナルのボードゲームを作ったときはいっしょに遊んでくれました。相手に隠してお互いに10マス×10マスの迷宮を作って、構造を推理しながら相手の迷宮を探検していくゲームです。探索していって途中で壁にぶつかったら、相手の番になります。アイツならここに壁を置くだろう、なんて心理戦の要素もあるんですよ。オトナがやっても楽しめると思います

(竹)それはおもしろそう。勉強はどうでした?

おく山みつゆき算数が好きでした。計算ドリルが配られたら、勝手に先へ先へ進めてしまうタイプでした。見たことがない演算記号が出てくるとテンションが上がるんです。のちに高校数学で「!」が出てきたときはなんだかわくわくしました。大学数学で「!!」を見たときはさすがに笑いました

(竹)パズルとの出会いは?

おく山みつゆき小学2年生のとき、数独に出会いました。書店で数独のペンシルパズル本を見つけたんです。おもしろそうだと思って、親に買ってもらって、ずっと解いていました

(竹)まわりが解いていたのではなくて、自分自身で見つけられたんですね。なにに惹かれたんでしょう?

おく山みつゆきワクと数字だけがひたすら数十ページも続いているという見た目が、シャープというかスマートというか、とにかくカッコよかったです。当時は類書はほとんどなかったので、たたずまいが異彩を放っていました

(竹)問題は解けました?

おく山みつゆきけっこう解けました。60問めあたりまで解いたと思います。ただ、そこからはよくわからなかったです。やみくもに小さい数字をメモしていって、でもぜんぜん解けなくて、結局途中で投げ出しちゃいました。せめて最後の問題だけでも、と思って挑戦したんですが、数字を1つも入れられませんでした

(竹)難しい問題はほんとに難しいですからね。そのあとは?

おく山みつゆき3年生のころ、書店で今度は『パズル通信ニコリ』を見つけました。また買ってもらいましたが、当時のボクには解きかたがぜんぜんわかりませんでした。ごりごりの仮定を使ってむりやり解いてしまっていたので、楽しくなかったです。結局、1冊で買うのをやめてしまいました。中学生のころは、ほかのパズル雑誌を読んだり、パズル好きの友人とパズルを作りあったりしました。でも、それも中学生のうちに飽きちゃいました

(竹)じゃあ、パズルの趣味はいったん途絶えてしまったんですね。ニコリに戻ってきたのは?

おく山みつゆき大学に入ってからです。受験を終えたころ、書店で『パズル・ザ・ジャイアント』を見つけました。小さいころにやったのを思い出して、なつかしくなって買いました。解いてみたら、昔はわからなかった考えかたも見えてきて、作者の意図も伝わってくる気がしました。なんだかうれしくなって、それ以来ニコリにハマりました。投稿もすぐに始めましたよ。小学生のころでも、何冊か買い続けていればおもしろさがわかったんじゃないかと悔やまれます

(竹)初めてニコリに投稿したパズルはなんでしたか?

おく山みつゆき同時に何種類も送りました。クロスワードやブロックパズルなど、われながら渋めのチョイスだったと記憶しています。結果、初投稿の98号でいきなり5個載りました。すっかり舞い上がってしまいました

(竹)いきなり5問とはすごい。それからはずっと、コンスタントに送っているんでしょうか?

おく山みつゆき残念ながら、そうでもないです。思い立ったときに作って送っています。ただ、nikoli.comに関してはコンスタントに送るようにしています。せっかくいただいた機会ですので

(竹)おく山さんといえば、カタカナ抜け文(隠されたカタカナを明かして文章を完成させるパズル)の大家ですよね。『パズル・ザ・ジャイアント』最新刊の27号でも、スーパージャイアントが載っています。おく山さんにとって、カタカナ抜け文は特別なパズルなんですか?

おく山みつゆき特別ですね。カタカナ抜け文は、ボクの空想した物語を見てもらえる唯一のパズルだと思っています。解いて読んでもらって、下らないとあきれたり、クスッと笑ったりしてくれれば、なによりの喜びです。あと、投稿が少ないので、載りやすいのも魅力ですね(笑)

(竹)おく山さんはオールマイティーですよね。数字系のパズルも作るし、言葉系のパズルも作る。なんでも作れるという印象です。絵が出てくるパズルも作っていますよね

おく山みつゆきはい。実は、ステンドグラスはボクの発案なんですよ

(竹)そういえばそうでした。あのパズルは、絵が出るパズルの中では作るときの自由度が高いですよね

おく山みつゆきそうですね。マス目を使わずに絵が出るパズルを作りたかったんです。天体ショーが盛りあがりはじめたころだったから、絵が出る新しいパズルを送るチャンスだと思って、流れに乗って投稿してみました。ボクが投稿した新しいパズルはあれだけです。だから、ボクのオモパ(『ニコリ』の名物コーナー「オモロパズルのできるまで」で誕生したパズル)の新作ヒット率は10割。もう送らないでおいて高打率キープを狙います(笑)

(竹)たしかに10割です。いちばん好きなパズルはなんですか?

おく山みつゆきどれも好きですが、nikoli.comのパズルだと、数独が特に好きです。作るほうの立場では、まだまだできることがあるパズルです。キレイな配置でどこまで仕掛けを詰め込めるか、逆にどこまでカンタンにできるか、というのに挑戦するのがおもしろいです。激辛な数独は、1年を通じて常にじっくり作り続けている状況です。もうライフワークのようになっています

(竹)時間をかけて作っているんですね。じゃあ、作るときの解き直しも念入りにしているんでしょうか?

おく山みつゆきそうですね。数独に限らずどのパズルもそうですが、いったん完成させてから、何回も解き直しています。パパッと1回作っただけだとすごく不安になります。「今オレ夜中のテンションで作ったけど、昼間解いてもおもしろい問題になっているか?」と考えてしまうんです。それで改めて解き直したら、案の定、もう少しうまくできる部分が見つかる。手直ししたら、また時間がかかります。こんな感じですので、短時間でたくさん作れる作家さんはすごいと思います

(竹)サイズの好みはありますか?

おく山みつゆき作るのは、小さい問題のほうが好きです。基本的に、1種類の仕掛けや解きかたでひたすら突き通すような、一貫性のある問題が好きなんです。でも、大きいサイズだと、1つの解きかたでは飽きるので、別の解きかたも入れざるをえない。それがいやなので、結局は小さいサイズで作りがちになっちゃうんですよ。ほかの作家さんの大きいサイズを解くと、その点がバランスよくできているので、感心しきりです

(竹)難易度についてはどうですか? 激辛な数独を作っているくらいだから、難しい問題が好きなんでしょうか?

おく山みつゆきいえ、数独を除けば、カンタンな問題のほうが好きです。今はとても神経を使う仕事をしているので、せめてパズルくらいはカンタンにやらせてくれよ、という気持ちが強いです(笑)。学生のころは逆で、気楽な毎日だったので、難しいパズルで悩む余力があったんです

(竹)パズル以外の趣味はありますか?

おく山みつゆき演劇やお笑いを見ることです。自分自身、高校時代には演劇をやっていました。目立ちたがりだったので、人前でなにかをやることに楽しさを感じました。なにかを作り上げて、人に見てもらうのが好きなんだと思います。パズルにもそういう要素がありますよね

(竹)高校時代といえば、ちょうどパズルから離れていた時代でしたよね。今パズルをやっているのは、演劇の代わりのようなものかもしれませんね

おく山みつゆきいわれてみれば、そうかもしれません。パズルでも演劇でも「自分らしさを表現した上で、さらに他人も楽しませる」というのが理想です

(竹)「目立ちたがり」と自称しつつ、他人を楽しませることも含めて考えているところがエンターティナーですね

おく山みつゆき楽しんでもらえていればなによりです。nikoli.comだと、自分の問題をこれだけの人が解いたんだ、ということが目に見えるのがうれしいです。数独の難しい問題だと、1時間以上かけて解いている方がいますよね。その人の人生の貴重な1時間を、ボクの作った問題に割いていただいているわけです。だから、解いた人の履歴を見るだけでうれしくなります。解いてくれる人がいてこそのパズルだと思います

(竹)パズルは今後もずっと作り続けますか?

おく山みつゆき作り続けていきたいです。パズルはボクにとっていい息抜きになっています。暮らしのメリハリの「メリ」のほうです。緊張と緩和でいうと、緩和。なんにも考えないで楽しめるのがパズルです

(竹)日々の生活の中で、パズルがいい位置にあるんですね。よかったです。最後に、解き手へのメッセージをお願いします

おく山みつゆき雑誌と違って、nikoli.comはクリックして開かないと問題が見えません。だから、あまり解く気がなくても、まずは「ちょっと見てみるか」という感じで、気軽に開いて見ていただけるとうれしいです。見たら解きたくなるような問題を目指しています。単に問題を開いた人の人数が増えるだけでも、作者としては喜びです

(竹)なるほど。みなさん、おく山さんの名前を見つけたらぜひ問題を開いてみてください。おく山さん、今日はありがとうございました


インタビュー : 2014年2月 2014年4月10日公開