パズル作家座談会 第1回

インタビュー作家座談会

パズル作家座談会の記念すべき第1回。2009年7月のゲスト作家は、小見枝まやさん坂本伸幸さん。ニコリスタッフは(金)、(竹)でお送りします。

(竹)今日は『やさしいスリザーリンク』というテーマで話したいと思います。ケータイパズル数独やnikoli.comに掲載する記事ですが、そのあたりは気にせず、やさしいスリザーリンクについて広く語りましょう

一同はい

(竹)とっかかりになるかと思って、むかしのペンシルパズル本(以下ペンパ本)のスリザーリンクをもってきました。おふたりがデビューしたころの問題も載っていますよ。10年以上前ですね

小見枝まや私どんなの作ってたんだろう

坂本伸幸ボクもむかしの問題は覚えてないです

(竹)おふたりとも、デビュー当時はまだやさしい問題に特化していた感じはないようです

坂本伸幸フツーですねえ。ボクの問題でいえば、数字の配置は今よりもキレイです(笑)

小見枝まや今と違って、スタンダードな配置で作ってたんだね。私もデビューしたてのころはまだ『こだわり』はなかったなあ

(竹)小見枝さんはペンパ本のスリザーリンクで3巻連続で問題番号1番だったことがありましたよね

小見枝まやあったあった。このころに『1番に載る快感』にハマったのよ

(竹)やっぱり1番をとれるとうれしいですか?

小見枝まやうれしいです。1番は、初めての人が解いてくれるから。そのパズルを知らない人がとりあえず1問解いてみよう、と思ったとき、まず1番をやってみるよね

(金)知らない人にスリザーリンクの面白さを伝えたいという気持ちが強いのかな?

小見枝まやうん。だから私、ペンパ本の1番は解かずにとっておくようにしているんですよ。誰かに『これはどんなパズル?』って聞かれたときのために

坂本伸幸ボクは1番にはこだわってないですね。『スリザーリンクをちょっと知っている人が解いて気持ちいい問題』をよく作っています

(竹)さっき、むかしの問題のほうが数字配置がキレイだという話をしてましたが、坂本さんは問題の見た目は気にしないんでしょうか?

坂本伸幸いや、ボクにも『キレイなことはいいことだ』という思いはありますよ。ただ、キレイなこと『だけ』がいいことじゃないんじゃないか、とも思うんですよ。食べ物だって、見た目がいいものはもちろんいいけど、見た目がぜんぜんダメなものでも、おいしいものは別にありますよね

(金)でも、同じ味なら見た目がいいほうがおいしそうじゃない?

坂本伸幸いやあそれがですね、最近エスニック料理にハマってて。そうすると、見た目がヘンなほうが手作り感があっていいかな、と思うことが多いんですよ。スーパーマーケットでも泥がついた野菜に目がいきますし。『手作りバンザイ!』という思想に毒されているのかも(笑)

(金)ところで、やさしい問題って『2』の個数が減るよね

坂本伸幸そうですね。『2』がいちばん少なくて、次が『1』かな

(金)『2』が絡むやさしい定理(スリザーリンクで、数字どうしの絡みですぐに線が引けるパターンのこと)が少ないんだよね。『辺の02』(盤面の端に『0』と『2』を並べて配置したもの)くらいかな

(竹)『020』(『0』『2』『0』の順にタテかヨコに数字を並べたもの)もありますよ

(金)ああ、それもやさしいね

坂本伸幸『ナナメ33に2』(『3』『3』『2』の順にナナメに数字を並べたもの)はどうでしょう?

(金)それほどやさしくないかな。まず『ナナメ33』がそんなにやさしくない

小見枝まや個別の定理でいえば、やっぱり『03』(『0』『3』の順にタテかヨコに数字を並べたもの)が最強だと思います。何も考えずに決まるから

(金)私が好きなのは『辺の02』。もっと突きつめて、『角の01』(盤面の角に『1』を、その隣に『0』を置いたもの)も好き

坂本伸幸ボクは小見枝さんと同じで『03』です。辺に頼らなくていいので

(金)あと、『3313』という並びが好きだ

小見枝まやあー、わかるわかる

坂本伸幸そのときに、『3313』の右端の『3』は、初心者にいきなり気づかせるのは難しいんじゃないでしょうか

(金)そうだね。初心者に、この『13』は『03』と同じなんだ、と気づいてもらうためのものかな。やさしいスリザーリンクの問題は、教育的であったほうがいいかなと思っています。初めて解く人が、一問解き終わったことによって『レベルアップしたぞー』と実感できるような。どうだろう?

坂本伸幸ボクもむかしはそう思っていたんですけど、最近は悩ましいなと思っています。定理を最小限だけ与えて解いてもらうのが、ほんとうに初心者にとってやさしいのか? それよりも、無駄でもいいからもっと数字が多いほうがいいのかもしれない、と

(竹)数字が多いと、定理が見つかりにくくなりませんか?

坂本伸幸そうなんだけど、そもそも、初心者に『定理を使って解いてもらおう』というのが違うのかもしれないと思っています。初心者には、仮定でも何でもいいから、とにかく一問自力で解きあげてもらったほうがいいんじゃないかな。そうすれば達成感も味わえるし、自信もつきますよね。『定理を使えばうまく解ける』というのに気づいてもらうのは、その次の段階でいいんじゃないかなあ

(金)なるほど、そういう考えもあるかもしれない。そういえば、表出数字がめちゃくちゃ多い問題って、坂本さんが最初にやった気がするね。なんか数字のカタマリをごちゃっと置いたことなかった?

(竹)ありましたね。『2』がいっぱい密集している問題(『パズル通信ニコリ』83号の3番でした)

(金)スリザーリンクって、初期のころからずっと、数字をいかに減らすか、ということに力が注がれてきたんだよ。数字が少ないほどエレガントだという考えかたがあった。そこにアンチテーゼっぽく、坂本さんがごちゃっとしたのを送ってきたんだよね

坂本伸幸覚えてないけど、やったかもしれないですね。時流には逆らいたいがる性格なので(笑)

小見枝まや教育的な問題の話に戻ると、nikoli.comで『新しい技を覚えました』というコメントを見たときうれしくなるよね

(金)自分で解きかたを発見してもらう、というのが大きいよね

坂本伸幸スリザーリンクは定理が多いから、発見する機会も多いですよね

(竹)nikoli.comのコメントといえば、やさしい問題について、ごくたまに上級者らしき解き手から『これはカンタンすぎる。手の運動だ』といった内容のコメントが投稿されることがありますよね

坂本伸幸ありますね。ボクは褒めコトバだと解釈していますよ。自分の問題に対して手の運動っていわれたら、素直にうれしいです。自分の性格から考えて、狙ってそういう問題を作ったはずなので

(金)それはいさぎよいね

小見枝まやnikoli.comの履歴を見ていると、ほんとうにやさしい問題って、同じ人が何回もチャレンジしてますよね。たぶん、早く解くための練習に使っているのかなと思うんだけど。そういう意味でも必要だと思います

坂本伸幸逆に『上級者にとってのやさしい問題』というのもあるのかな?

(竹)うーん。例えば、初心者には難しく見えるけれど、コツがわかっている人にはスラスラと一気に解ける、という方向でしょうか?

(金)ありうるのかな? ニコリの『やさしい問題』の定義は『初めてルールを読んだ初心者が、ルールから類推できるだけで解ける問題』なんだよね。解き筋の難易度だけが問題ではない。『やさしい』というコトバに『易しい』という漢字を当ててないのもそういう理由です

坂本伸幸その定義だと『上級者にとってのやさしい問題』というのはないですね。でも、上級者が早く解けるものもあっていいかなとは思います

小見枝まや早く解けるというのと、やさしいというのは違うよね。ただ『易しい』だけでなく、フレンドリーなもの、にんべんの『優しい』ものじゃないといけないと思ってる

坂本伸幸基本的にはその通りなんですけど、あえて『易しい』のほうだけを追求していく方向もあるのかなあ、という気持ちはあります。ボクは追求してないですけど

(金)『易しい』だけを追求していくと、たぶんニコリでいう『やさしい』問題にはならないと思うよ

坂本伸幸そういえば、『やさしい』というコトバには、『易しい』『優しい』のほかに『恥しい』という表記もあるみたいですよ。辞書に載ってました

一同へええ

小見枝まや『恥しい』スリザーリンクって、どんなスリザーリンクだろう?

坂本伸幸恥ずかしげもなく、思いきってカンタンな方向を目指す、という解釈はどうでしょう? いつか『恥しいスリザーリンク』作りに挑戦してみようかな(笑)

(金)坂本さんらしい発想でいいね

(竹)『やさしい』とは何か、改めて考えると奥が深いですねえ。これからも『やさしいスリザーリンク』を盛りたてていきましょう!


座談会開催 : 2009年7月 2009年8月19日公開

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