パズル作家座談会 第4回

インタビュー作家座談会

「とんがった作家たち」の巻

パズル作家座談会第4回のゲストは、アスピリンさん339さんももてれうさんの3名。独創性にあふれ、解いた人に強烈なインパクトを残してくれる「とんがった」問題をたくさん作る作家たちです。ももてれうさんはふだんニコリで編集の仕事をしている社員ですが、今日は作家として語ってもらいました。

(竹)まずは質問から。とんがった問題を作っているという自覚はありますか?

ももてれうすごく自覚しています。とんがった問題を作ろうと思って作っています

アスピリン私は自覚はないです

(金)フツーに作っているつもり?

アスピリンはい。自分としてはフツーに作ってて、できたものがほかの人と違うだけなんです

ももてれう今日の座談会によばれたのも心外だ、みたいな?

アスピリンいえいえ。他人と違うのはわかっています(笑)

(金)他人と違うのはわかってるけど、狙ってやってるわけじゃないということですね

(竹)339さんは?

339自覚はあります。ももてれうさんと同じで、作る前から『このパズルでどういうことができるだろう?』ということをじっくり考えてから作りはじめます。意識せずに作ることもありますけど。ただ、そういう意識していない問題でも、他人から個性的だといわれることはよくあります(笑)

(竹)そもそも、どうしてとんがった問題を作ろうと思ったんですか? なにかきっかけがあるんでしょうか?

339はい、あります。きっと聞かれると思って、考えてきたんですよ

アスピリンおー、すごい!

339といいつつ、まとまってないんですけど(笑)。パズルの早解きが得意な人って、すごく早く解けるじゃないですか。しかもどの問題も同じように解いちゃうんですよね、彼らは。それが悔しいんで、エキスパートでも悩むような問題が作りたいと思いました。それが最初です

(竹)じゃあ、個性よりも難しさを求めていたんですか?

339そうですね。でも、同じ印象づけるのなら『悩ませる』よりも『おもしろがらせる』ほうがいいと気づいて、とんがった問題を目指すようになりました

(竹)なるほど

339あと、それとは別に、やる以上はパズルのことを自分が一番よく知っていると認められたいじゃないですか。そうすると、他人が考えていないことも自分はできるんだぜ、というような自己顕示欲も出てきますよね

(竹)自己顕示欲なんですね。自分の問題を他人が解くということを意識してるんですね

アスピリンそれは意識してるんじゃないですか?

(竹)あ、やっぱりアスピリンさんも?

アスピリンもちろん。他人が解くという前提で作っていますよ

ももてれうもちろんといっておかないと、この記事を読んでいる人に『コイツらは自分勝手に作っている』と思われちゃいますしね

一同(笑)

339あ、でも、自分勝手に作ることもあります。nikoli.comのボツ箱に載るような問題は完全に自己満足です

アスピリンえっ、そうなの?

(金)やっぱり狙ってるの?

339いや、ボツ箱を狙って作っているってわけじゃないですよ。できた後に、きっとこれはボツ箱用の問題と評価されるだろうな、とは思いますけど

(金)そうなんだ。てっきりボツ箱を狙って送っているのかと思っていました

339ひとつの手筋を徹底的に突きつめたらどうなるだろう、と思って作ったものはボツ箱行きになりやすいですね

アスピリンそれはありますよね


(竹)みなさん、ほかの作家の問題もたくさん解いてらっしゃいますよね。とんがった作家さんたちだけに、『この問題は自分的には許せない』というような問題もあったりするんでしょうか?

アスピリン私は他人の問題で『許せない』というのはないです

339えっ、ホント!?

(竹)その反応からすると、339さんは…

339あります(笑)。これ、あからさまに媚びているだろう、と感じる問題がたまにあります。『こだわり』じゃなくて『媚び』に見える問題

アスピリンへえ、そんなのがあるんだー

339でも、その媚びていると思った問題が、実際には解き手からいい評価を得ていて、『ああ、この媚びはあってるんだ。媚びているというより人の心をつかんでいるんだ』と後から反省することも多いです

アスピリンどんなものが人気があって、作家が見落としがちなのか、というのは気になるなあ

339具体的な話をすると、個人的な好き嫌いの話になっちゃうんですよねー

(竹)そうですね。やめておきましょう(笑)

(金)実は、いい評価が得られると思うけど、ニコリの目指す方向と違うから使わない問題というのもあります。ただ遠いだけの先読みが必要な問題とか。載せたらマニアの人を中心に受けるとは思うんだけど、ニコリとしてはそういう方向にもっていきたくないんです

アスピリンおもしろいですね。解く人からの評価と、ニコリのしきい値との兼ねあい、というか

(竹)アスピリンさん自身はそのあたりのことは考えて作っていますか?

アスピリン考えてないです

339考えてないんですか? ボクは、アイディアを思いついても『これはニコリでは載らないだろうな』と思って作らないことがありますよ

(竹)ありますよねー

アスピリン私はないですね。自由にやっています

(金)アスピリンさんは常に自然だよね

(竹)自然に作って自然に載っている感じですよね

ももてれうアスピリンさんは問題がボツになることはないんですか?

アスピリンいや、そりゃありますよ(笑)。たくさんボツってます

(金)でもボツ率は低いほうだと思います。339さんも採用率は高いですね

(竹)339さんはいろいろと意識して作っているそうだからわかるんですが、自然に作っているアスピリンさんもボツ率が低いというのはすごいなあ。ももてれうさんはどうですか?

ももてれうボクはすごく意識してます。作家時代からニコリに載るのが目的で作ってきたので

(竹)解き手の評価といえば、nikoli.comでは毎月解き手が問題に投票していい問題を選ぶ『逸品館』というコーナーがあります。今日のお三方はこのコーナーの常連ですよね

(金)やっぱり逸品館に選ばれるとうれしい?

339これはウケるだろうと思っていた問題が選ばれたらうれしいです。逆に、それほどこだわっていない問題が選ばれてしまうと、ちょっとショックですね。もちろん、うれしいことはうれしいんですけど

ももてれうわかります

(竹)アスピリンさんはどうでしょう?

アスピリンショックというのはないですけど、自分が気に入った問題が選ばれたらうれしいというのはあります

ももてれう逆に、逸品館でなく、ボツ箱に選ばれたときはどんな気持ちですか?

アスピリン『セーフ!』です。三塁ゴロで内野安打的な(笑)

339ボツ箱じゃないと思っていた問題がボツ箱になるとけっこうショックですね。明らかに『好きに作るぞ!』と思って作った問題以外はいちおう普通に載るつもりでいるので

アスピリン私はなにかを狙って作ることはないですから、どこでも載ったらうれしいです


(竹)とんがりやすいというか、個性を出しやすいパズル、逆に個性を出しにくいパズルってあると思いますか?

(金)数独は作りにくいよね

アスピリンカックロもそうですね

ももてれう作りにくいですね

アスピリン意外とましゅが作りにくいと思ってるんですけど

(金)ましゅは見た目で個性が出せるけどね。ましゅといえばjunoさんが新たなことをすごくやってますよね

アスピリンしかもデカイ盤面でやっちゃいますよね。これ以上の余地がないくらい、ひとつの手筋を使いつくしてます

(金)『どうだ、これがこの手筋の最高傑作だぞ』という問題をいきなり出してくるからね。新たな手筋を残しといてくれよと思うよね(笑)

ももてれうボクは自分の問題から手筋をけっこうパクってほしいという気持ちがあります

(金)フィルオミノの『1』がいっぱいある手筋とか? あれはももてれうさんが元祖だよね

ももてれうそうですね。だから、とんがった問題というのは、可能性を追求するという意義もあると思うんです。後づけですけど

339オモパ(『パズル通信ニコリ』で連載されている、新しいペンシルパズルのルールをみんなで考えるコーナーで生まれたパズル)とかはけっこうそういう面がありますよね

ももてれうそうですね。ボクはほとんど作ってないんですが

(金)339さんもオモパは作ってないよね

339オモパは作ろうとは思わないですね

(金)創始者よりも、育てていくほう、開拓者になりたい?

339決められたルールのなかで、どこまでヘンなことができるか、というのに興味があるんですよ。そもそも自分からヘンなところに行きたいという気持ちはないです

アスピリンあー、わかりやすいたとえだ

ももてれうわかりやすいですね。ボクもまさにそんな感じです

(竹)今日のお三方は、オモパはほとんど作らないというところでも共通しているんですね。逆に、とんがった問題もオモパもたくさん作っている作家って誰かいましたっけ?

(金)坂本伸幸さんが思い浮かぶなあ

ももてれうあー

(金)まいなすよんさんもオモパはたくさん作っているけど、彼は創始者というよりは普及に力を入れるほうかな

アスピリンはやっていないオモパを発掘するのが得意ですよね

(金)そういえば彼は自分で『とんがった問題は他人に任せる』っていっていました

ももてれう独特なスタンスですね

(竹)今日のメンバーとは対照的ですね。っと、いつの間にか話が脱線してますね。とんがった問題を作りやすいパズル、作りにくいパズルについて話していたのでした。作りやすいほうがまだ出ていませんね

(金)へやわけは作りやすいでしょ?

339作りやすいですね。ひとりにしてくれも作りやすいです。いちばん作りやすいパズルだと思います

アスピリン作りやすいですね

(金)ひとりにしてくれは自由ですね。作る上での縛りがほとんどない

ももてれうその代わり、禁じ手というか、使用を制限されている手筋も多いですよね

(金)そう。それに作者の自由がききすぎるから、解く人が見つけにくくなっちゃうことが多いんだよね。そうするとイヤな問題になっちゃう

(竹)コントロールが難しいパズルでもありますね


ももてれうところで、ボクは同じネタを時間を空けて焼きなおして使うことが多いんですよ

(金)ももてれうさんは自分のネタの焼きなおしが好きだよね

ももてれうはい。みなさんはそういうことはやっていますか?

アスピリン一時的なマイブームみたいなものはあるけど、時間がたってから使いまわすというのはほとんどやらないです。自分が飽きちゃうから(笑)。自分のネタだけでなく、他人のネタもあまり焼きなおさないです

ももてれうボクは他人のネタもどんどん使っています

アスピリンそのほうがパズル界全体としてはいいとは思うんですけどね

(金)339さんはどう? ネタの焼きなおしはする?

339焼きなおしとはちょっと違いますけど、他人のネタをいろいろ取りいれるようにはしています。ボクのいちばんの特徴は、いろいろな手筋をうまくあわせて、いいバランスで問題にできるということだと思っているんです。あんまりしつこすぎず、かといって散漫にならず、というのを目指しています。だから、使える手筋は多いほうがいいんです

(竹)他人の問題もけっこう参考にしているんですね

339他人の問題を解いていて、『この手筋おもしろいな』と思ったんだけど、その手筋がぜんぜんフィーチャーされていないことがありますよね。そういうのを見ると、よしじゃあオレがその解き筋を使っておもしろい問題を作ってやろう、と思います

ももてれうわかるわかる

アスピリンボクは、たとえばスリザーリンクでおもしろいなと思った手筋をましゅで形を変えて使う、というふうに、あるパズルの手筋を別のパズルにもっていくというのをよくやります

339あるある。異種間の焼きなおしですね。へやわけとひとりにしてくれは親和性が高いですよね。実はnikoli.comのボツ箱に載っているボクの四角に切れ(2007年12月28日公開)も美術館の手筋から来ているんですよ

ももてれうあー、いわれてみれば確かに。気づかなかったー


(竹)さて、そろそろ締めに向かいましょうか。今日はとんがった問題を作る作家に集まっていただいたので、まとめとして、とんがった問題を作るヒケツを話していただきたいと思います。まずはももてれうさん

ももてれうタブーを作らないことだと思います。たとえば、ぬりかべで、サイコロの『5』の目のように数字を配置すると真ん中は『1』になるしかないですよね。ぬりかべに慣れている人のなかには感心しない人もいると思います。でも、それをあえて使ってみるんです

(竹)フィルオミノで最初から『4』を4つくっつけて表示しているようなことですよね

(金)確かに、ももてれうさんのフィルオミノにはそういうの多いよね

ももてれうそうです。あえて使ってみることで、『あ、こういう別の快感軸があるんだ』というふうに世界が広がっていくと思うんですよ

(竹)なるほど。快感軸という言葉は初めて聞きました。ももてれう語録ですね。では次に、アスピリンさんのヒケツをお願いします

アスピリン好きに作ること。それだけです

(金)さすがアスピリンさん。わかりやすい!

(竹)アスピリンさんらしい答えをありがとうございます(笑)。では最後に339さん

339時間をかけて、妥協せず、とことん納得いくまでやることだと思います

(金)確かに、339さんのこだわった問題はよく練りあげられていますね。これだけの完成度のものを作るにはすごく時間をかけていないとできないと思います

339妥協したらダメですよね、やっぱり

(竹)三者三様、それぞれのヒケツがあるんですね。今日はありがとうございました!


座談会開催 : 2009年10月 2009年11月17日公開

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