パズル作家座談会 第6回

インタビュー作家座談会

ぬりかべの「これまで」と「これから」

今回は、人気のペンシルパズル「ぬりかべ」について語りあいます。ゲストは、傑作ぬりかべをたくさん世に送りだしているあぶら虫さんおがわみのりさんももてれうさんの3名。ニコリからはスタッフの(金)と(竹)が参加しました。ももてれうさんもニコリの社員ですが、この座談会では立場を忘れてもらい、個人的な思いを語ってもらいました。

(竹)はじめに、みなさんのぬりかべに対する思い入れをお聞きしたいと思います。世の中にはいろいろなペンシルパズルがありますが、そのなかでぬりかべは何番めに好きなパズルですか?

あぶら虫作るのも解くのも、どちらも1番めに好きです

おがわみのりボクは2番めです。1番はナンスケなので

(金)そうだよなあ。おがわみのりさんといえばナンスケの大家ですからね

ももてれうボクも2番めです。フィルオミノが1番。でも、むかし1番多く作っていたのはぬりかべです

(金)パズル通信ニコリ』の50~60号あたりのぬりかべ・ザ・ジャイアント(31マス×45マス)はほぼ毎号ももてれうさんの問題だったよね

あぶら虫ボクも『なんだコイツは!?』と思いながら解いてましたよ

ももてれう最初にニコリに問題を投稿したのが52号(1995年1・2月号。当時は隔月刊でした)で、そのとき送ったパズルがぬりかべのジャイアントでした

あぶら虫初投稿がいきなりジャイアントサイズというのが、すでにおかしいよね

ももてれうおがわみのりさんは『パズル通信ニコリ』でいうと何号くらいからパズルの投稿を始めたんですか?

おがわみのり42号からです

あぶら虫あ、ボクと同じころだ。初掲載はたしか43号なので

ももてれうそのころにはすでにぬりかべは世の中にありました?

(金)あったはず。30台の号で生まれたからね(注:調べたところ、初登場は33号でした)

おがわみのりぬりかべは当時から投稿してました。でも、ボクの初投稿のぬりかべは総ボツでした(笑)

(竹)おがわみのりさんといえば、数字を2つナナメにとなりあわせたペアをあちこちに配置したぬりかべをよく作られていますが、当時からそのスタイルだったんですか?

おがわみのりいえ。最初はやってなかったです。当時は対称形(数字が置かれている場所が点対称になるように配置された盤面の形)の問題が多かったです

(金)はやってましたねえ、対称形ぬりかべ

(竹)今はあまり見ないですね

あぶら虫よほどキレイに数字を置かないと気づかれないですからね

おがわみのり対称形だとどうもうまく作れないので、いろいろ作っているうちに、自然に今の形になりました。ナナメのペアはすぐに黒マスがぬれるのがいいです

あぶら虫むかしの問題でいえば、ももてれうさんの問題には掲載誌の号数が入っていましたよね。たとえば、52号のぬりかべなら盤面のどこかに『52』という数字が入っているというような

ももてれうやってました。ほかに、同じ数字ばかり使った問題なんかも作っていました

あぶら虫ああいうことができるのはぬりかべならではだと思います。50いくつなんて大きな数字を入れられるペンシルパズルは少ないですよね。四角に切れくらいですか。カックロや数独では絶対に無理

(金)四角に切れも素数になるとほとんど無理ですね。『59』とか

(竹)確かに厳しいですね。1×59か59×1しかない(笑)

あぶら虫ボクは、数字から離れたところで発生した白マスを、数字のほうにのばしていく手筋が好きなんです。あちこちから白マスをのばしていって、最後に大きな数字でまとめてどうにかする。そういうことができるのがぬりかべのいいところだと思います。大きいサイズの問題限定ですけど

(金)分断禁止のルールで黒マスをのばしていく展開もあるよね。それよりも、白マスをのばしていく展開のほうが好きなんですか?

あぶら虫ええ。実はボクは、作るときも解くときも『黒マスをのばすためには、こうする』という考えは、あまりしないんですよ。白マスのつながりを見て『白マスがつながっていって盤面を分断しないようにするには、ここを黒マスにする』という考えかたをしています

ももてれうボクは逆に、わりと黒マス中心に見ていますね

おがわみのりボクは白マスも黒マスも交互に見ます。どちらもいっしょにのびていくのがおもしろいので

(竹)『ぬりかべ』というパズルの名前からすると、黒マスの『壁』を見ていくパズルですよね

あぶら虫でも、実はルールの文には『壁』という言葉は出てこないんですよ。白マスのカタマリについては『シマとよぶ』という説明があるけれど、黒マスのカタマリには『壁とよぶ』というような記述はないんですよ。だからなんだ、って感じですけど、ちょっと不思議ですよね

(竹)あ、ほんとだ

あぶら虫難しい問題で、あるエリアの黒マスがまだ決まらないけれど、白マスのつながりはだいたい決まっている場面がたまにあります。こういうときは白マスのつながりを見て、『白マスが全体を分断しちゃうのを防ぐには、ここを黒マスにするしかない』というような考えかたをしたほうが解きやすいんですよ

(金)上級手筋としては、その考えかたはアリですね。『黒マスがひとつながりになる』というのは『白マスで盤面が分断されない』といいかえられるんだよね。もともと、ぬりかべは白マスと黒マスを両方じわじわのばすパズルだから、黒マスだけでなく白マスも見ていく必要があるパズルなんです

(竹)でも、白マスのつながりを見るという考えかたは、見落としやすいかもしれませんね。ルールの文からすぐにはわかりませんから

あぶら虫実際、見落としている人もけっこういると思います。あの小見枝さんも最近まで白マスのつながりのことをあまり意識したことがなかったそうですよ

(竹)難しい問題が解けなくて行きづまっている人は、白マスをたどってみると解けるかもしれませんね

あぶら虫きっと解けるようになると思います

(竹)みなさん、ほかの人が作ったぬりかべは解かれていますか?

おがわみのりすみません、実はあまり解いてないです

あぶら虫ボクはけっこう解いています。nikoli.comのパズルではいちばん解いてるかも

ももてれうボクも解いてます

(竹)注目しているぬりかべ作家はいますか?

おがわみのりボクはあんまり誰の問題だというのは気にしないです。そもそもそんなに解いていないというのもありますけど

あぶら虫nikoli.comの問題でいうと、ゆーたんさんが無茶をしているイメージがあります。以前はそんな印象はなかったので、最近無茶してるなあ、プライベートでなにかイヤなことでもあったのかな、なんて思ってしまいます(笑)

(金)イヤなことじゃなくてイイことがあったのかもしれないよ?

(竹)ももてれうさんはどうですか?

ももてれうGutenさんですね

(金)どのあたりがいいの?

ももてれう自分の好きな展開に強引に持っていこうとしているのが好きです

あぶら虫あと、大きいサイズの話になっちゃいますけど、junoさんがいろいろやっていますよね。ひとつの手筋にこだわって、それをしっかり見せている。それでいて、小さいサイズでやりづらいことをやっている

(金)たまにこだわりすぎてボツになっちゃうんですけどね

ももてれう手筋といえば、ぬりかべって新しい手筋があまり出てこないですよね

(金)禁止手筋もけっこう多いからね。白マスも黒マスもない空間を見て、このあたりのどれかは白マスになるけれど、その白マスを引きとることができるのはこの数字しかない、という手筋とか。それを絡ませたチャレンジングな問題がたまに送られてくるんだけど、残念ながらすべてボツにしています

あぶら虫それを許しはじめると際限がなくなりますからね

(金)そうですね。ニコリとしてはやりたくない

あぶら虫ぬりかべって手筋が少ないパズルなのに、よく長いあいだ生き残っていますよね

(金)でも、むかしよりは人気が落ちてきているかもしれない。ぬりかべのペンパ本も最近出てないし。ケータイパズル数独やnikoli.comでは人気ですけどね

おがわみのりパソコンやケータイだと、黒マスをぬるときに手が汚れないのがいいですよね

(竹)そう考えると、ぬりかべはパソコンのおかげで息を吹き返したのかもしれませんね。ぬりかべの将来についてはどうでしょうか。これからも続いていく?

おがわみのりぬりかべに代わるほどいいパズルがないので、続いていくでしょう

あぶら虫テレビの水戸黄門みたいに続いていくんじゃないかと思います。放送100万回を目指す感じ(笑)

(金)黄門様を演じる人は2代目,3代目とうつっていくけど、水戸黄門そのものは続くもんね

あぶら虫問題を作る人は変わっていって、目先や演出も変わるんだけど、根本は変わらない。白と黒ののびがあって、白マスが数字を探して

ももてれうでも、ボクは、新しいことをやっていかなければいけないとも思っています。それをやっているのがあぶら虫さんというのがボクのイメージだったんですが

あぶら虫自分としては新しいことをやっているという自覚はないですよ。水戸黄門派なので(笑)

(金)ぬりかべには、もう、新たな手筋というのはないじゃない?

ももてれう手筋は変わらないけれど、新しい見せかたを工夫している、という感じでしょうか

(竹)ぬりかべでやってみたいこと、野望はありますか?

ももてれうあります。去年、ぬりかべの世界大会がスペインで行われたんですよ。今のところ、ぬりかべの世界大会が開かれたのは地球上でスペインだけです

あぶら虫ももてれうさんもスペインに行ったんですよね

(金)なんてよばれていたの? MOMO?

ももてれうはい、MOMOでした。って、ボクのよばれかたはどうでもいいです。大会には初めてぬりかべを解く人もいたんですよ。そこで解き方を説明していて、ぬりかべのルールは難しいんだということを改めて認識しました。ナナメにとなりあった数字と、あいだに1マス空けて並んだ数字と、数字の『1』といった入り口はすぐにわかってもらえるんですが、次に進めないんです。そのへんの難しさをなんとか解決して、もっともっと世界にぬりかべを広めていきたいです

(竹)おがわみのりさんはどうでしょう?

おがわみのり安定して続けていくこと。なにか変えたいというのはないです。そういうのはできる人に任せます

(金)みのりさんの場合、変える必要もないしね。あぶら虫さんはどう?

あぶら虫いいたいことをおがわみのりさんに取られちゃいました(笑)。あと30年は作りたいですねー、と言おうと思っていたんですけど。そうですね、技術的な話になりますけど、今ボクは2択(白マスが発生したときに、その白マスを引きとる数字の候補が2通りあってなかなか決まらないという展開)にハマっているので、これを3択や4択、はては8択と広げていきたいです

(竹)えらくマニアックな野望ですね。さて、そろそろまとめのお時間になります。全世界のぬりかべファンやこれからぬりかべをやってみようと思っているみなさんへ向けて、なにかひとことずつお願いします

あぶら虫大きいサイズでは、決まりきった手筋のなかにも物語性があって、解いて達成感があるような問題を目指しています。小さいサイズでは、逆に『こんな趣向で問題が作れるんだ』と驚いてもらえるような問題を目指しています。そういうところを味わってもらえたらうれしいです

おがわみのりぬりかべは、ちまちま進むところと、白マスと黒マスが一気に走るように決まっていくところのバランスが魅力だと思います。ぜひぬりかべを楽しんでください

(竹)最後にももてれうさん。トリにふさわしい、スケールの大きいコメントをお願いします

ももてれううーん…。ぬりかべを世界に広げよう! 日本とスペインから世界へ、ぬりかべの鎖国を解こう!(ガッツポーズ)

(竹)みなさん、今日はありがとうございました


座談会開催 : 2010年1月 2010年2月16日公開

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