パズル作家座談会 第11回

インタビュー作家座談会

パズルの新しさに迫ってみる

今回のゲストは、Hammyさん宮崎晋一さん。おふたりとも、これまでにない新しいタイプの問題をよく送ってくださるチャレンジ精神あふれる作家さんです。今日は、パズルの「新しさ」をテーマにいろいろ語っていただきました。ニコリからは(金)(竹)が参加しました。

(竹)まず質問なんですけど、新しい問題を作っているという自覚はありますか?

Hammy自覚はありますね。新しいものを作ろうと思って作っています

(金)宮崎さんは?

宮崎晋一あります。なにをもって『新しい』というのかって、難しいところですけど

(金)やっぱり、どこかで見たことがないものを作りたいという気持ちがある?

宮崎晋一新しいものというよりは、まずおもしろいものを作りたいというのが前提です。それで、目新しいものは基本的におもしろいから、結果的に新しいものをよく作っているんだと思います。ほかの作家の問題を解いていて、いいなと思ったものを自分の問題に取りいれたりもしています

(竹)人の作品から影響を受けることもあるんですね。じゃあ、厳密にいうと『新しくない』問題もけっこうある?

宮崎晋一手筋としては新しくないものはけっこうあります。ただ、見せかたとしては新しいつもりです。たとえば、前に、先に閉じた空間ができてそこが全部白マスに確定する、という手筋をふんだんに使ったぬりかべを作りました。実はあの問題のきっかけは、別の人が作ったぬりかべなんですよ。たまたまその手筋で決まる場所が1カ所あって、『これって続けざまに目立つように使ったらおもしろいんじゃないか』と思って作ってみたのがあの問題です。私が問題を作るときによくあるパターンです

(竹)Hammyさんはどうやって新しい問題を作っていますか?

Hammy2通りあります。1つめは、宮崎さんと同じで、解いてておもしろいと思った手筋を自分の問題に取りいれて作る。アスピリンさんの美術館の『アスピリンボックス』(ある種の高等手筋の通称。詳細はここでは割愛します)とか、339さんのスリザーリンクの『どちらにしてもこっちにつながるから…』という考えを使った手筋とか。もう1つは、自分で作っていて、たまたま、おもしろい答えの決まりかたができちゃったとき。『あー、この決まりかたはおもしろいな』と思ったら、その決まりかたをクローズアップできるような新しい問題を作るんです」

宮崎晋一たまたま、ってわりとありますよね。私は最初にあかす数字や黒マスを規則的に並べて作りはじめることが多いんですけど、気づいたらおもしろい手筋ができあがっていたり

(金)おふたりの問題は目立ちますよね。規則的に数字が並んでいるものとか

(竹)その数字の並びだからこその手筋、という場面もよくありますよね。解いた側からすると、すごく緻密に計算しつくされたような配置に見えるんですけど

宮崎晋一ケースバイケースですね。ほんとに最初からきっちり計算して作ることもあるんですけど、たぶん問題数でいえば私の中では少ないです。けっこう偶然に頼っています。…というとショボく聞こえちゃいますかね?(笑)

(竹)そんなことはないですよ。逆に安心します(笑)

宮崎晋一そもそも私の問題って緻密に計算されているように見えます?

(金)見えますよ

宮崎晋一そうですか。私からすると、339さんとか、アスピリンさんとか、赤い魔術師さんの問題を見るたびに『自分はまだまだ甘いなあ』なんて思ってしまいます

Hammyそうですよねえ

(金)Hammyさんはひとつの手筋にこだわって、それで最後まで押しとおす問題をよく作りますよね。あれは計算しつくさないとできないと思います

Hammy計算といえるかどうかわかりませんけど、『このままだと最後まで作りきれない』と気づいて、いっぺん全部消してきちんと収まるように作りなおすことはやっています

(竹)新しい手筋の発見までは『たまたま』だとしても、それから先の努力が重要なんですね。ネタの発掘という流れで思い出したんですが、今日はニコリスタッフのjunoからひとつ質問を預かっています。たくさん作っていると、ネタ切れというか、どうしても新しいアイディアが出ないこともありますよね。そういうときはどうしていますか?

Hammyそれはむしろ私がjunoさんに聞きたいです(笑)。nikoli.comのjunoさんの問題はどれも新しいですよね。お手本にしたいと思っているんですよ

(金)彼の問題はちょっと特殊ですけどねえ。彼の問題って、そんなに新しいことをやっていましたっけ?

Hammyましゅがスゴイですね

(金)確かにましゅはそうだけど、ぬりかべにしろ美術館にしろ、新しいことはそんなにやっていないような気がします

Hammy新しいかといわれると、新しくないかもしれないんですけど、同じ手筋を何回も繰り返すのがうまいです

(金)そうですね。彼の問題は、しつこい!(笑) でも、しつこさっていいんですよね

Hammyいいですよね。快感をよびます

(竹)解く人の印象には残りやすいですよね。アイディアとしてはそんなに新しくなくても、新しく見えちゃう

宮崎晋一それはありますね

Hammy私はそういうのも『新しい』と言っちゃっていいんじゃないかと思います。『今までだったらこのへんで終わるのに、また来たよ!』という新しさ

(金)今まで徹底されていなかったものを徹底した、という意味で新しさになるのかもしれませんね。ただ反復するだけじゃなくて、その中に変化球を入れるとさらにおもしろくなるんですよね

(竹)そういえば宮崎さんもインタビューで言っていましたよね。『なにか大きな仕掛けがあって、あとからもう一度別の角度から使うような問題が理想だ』って。それも変化球ですよね

宮崎晋一実際にはなかなかできないんですけどね

(竹)339さんがよくやっている印象があります。ずっと同じのを繰り返させて、途中で『やめたのかな?』と思わせたあと、最後でもう一回やる

Hammy私がいちどパズルから離れて復活したころ、ちょうど339さんが昔のニコリのパズルサイトで活躍していたんですよ。カルチャーショックを受けました。新しすぎちゃって。盤面もキレイだし。私もああいう問題を作りたいなと思いました。私にとって、339さんの影響は大きいです

宮崎晋一当時、最強でしたよね。質も量もハンパなかった。かつての清水美智ヨさんのような

(金)彼はパソコンサイトで開花したんですよ。本にはそこまで載っていなかったはずだから。最近は忙しいようで、あまり載っていないですね

Hammy忙しいといえば、私も最近忙しくて投稿が少なくてもうしわけないです

宮崎晋一私もです。ただ、このところ少し復調してきたんですけど。本誌(『パズル通信ニコリ』)にもまた投稿するようになりました

(金)今の本誌は投稿数がとても多いから、載るのはなかなか難しいですよ

Hammyその点、Castyさんはすごいですよね。どこにでも載ってます。私、Castyさんのぬりかべが好きなんですよ。お手本にしています

(竹)そうなんですか? オーソドックスなタイプの問題が多いと思うんですが、どのあたりに特徴があるんでしょうか

Hammyどこが、といわれると自分でもわからないんですが、琴線に触れるんですよ。作者名を伏せられて解いても、彼の問題ならわかると思います。新しさとは違うのかもしれないけど、なにかほかの人にはない特徴があるんです

(竹)へええ。Castyさんはオーソドックスな問題を作るのが得意な人だと思っていたんですが、そういう人の問題をHammyさんが気に入っているというのはおもしろいですね


Hammy今日は、宮崎さんに会えると聞いたので、ぜひ言おうと思っていたことがあったんですよ。テーマとあまり関係ないんですけど。ケータイのスリザーリンクのお試し問題5番、いいですよね。見た目が美くて、ループを制御するのがすごくうまい

宮崎晋一ありがとうございます。あの問題も、先ほど話した、表出数字を規則的に並べて作ってみたものですね。話が脱線したついでといってはなんですが、実は今日は、話のネタになるかと思って問題を作ってきたんです。あんまり新しくはないかもしれないですが、ぜひ解いてみてください

宮崎晋一さんが作家座談会のためにつくってくれた問題
10x10サイズ、難易度たいへんのスリザーリンクと美術館
問題をはじめから解く 問題を解く どんなふうに解いたか見る こたえを見る
問題をはじめから解く 問題を解く どんなふうに解いたか見る こたえを見る

(金)(解きながら)宮崎さんの個性がよく出ていますねー。いい問題だ!

宮崎晋一なんかいいですね、自分の問題が解かれている様子を見られるのって。スリザーリンクのほうは、数字のカタマリからのループのできかた、美術館のほうは、孤立した白マスに置かれる照明をメインのヒントにしてみたのがポイントです。どちらも前から使われている手法ですが、こんな感じでいろいろ作っているうちに新しい問題ができたりする、途中経過のサンプルとして見ていただければ。そうそう、褒めていただいたお礼というわけではないんですけど、Hammyさんの問題で、『パズル通信ニコリ』113号のひとりにしてくれ6番(106ページ)と、117号のひとりにしてくれ6番(66ページ)、あれはいいですよね。どちらの問題もすごくインパクトがあって。昨日思いだして慌てて解きなおしてみまして。当時も新しいと感じましたが、今でもじゅうぶんおもしろい。自分のモチベーションまで上がりました(笑)

Hammyありがとうございます! あの問題はやはりインパクトがあるのか、覚えていてくださる方がけっこういらっしゃって、ほんとうに嬉しいです

 (このあと、宮崎さんの持参問題や、これまでに掲載されたお互いの問題についての評論会に発展しましたが、割愛します)


(竹)さてさて、だいぶ脱線して深い話になってしまったので、話題を変えましょう。ボツになることは恐れていますか?

Hammy恐れています。私の問題はよくボツになっているようなので、どうしようと悩んでいます

(金)でも、チャレンジングな問題を作っている以上、あるていどボツが出てしまうのはしかたないところはありますよ

(竹)掲載されるかどうかのギリギリを狙っているわけですからね

宮崎晋一私は、あまり気にしないで送っています。そのときどきによるんですけど、たまに『どうせボツだろう』と思いながら送ることもあります

Hammy私の場合、今は忙しい中でむりやり時間を作って問題を作っていることがあるんですよね。せっかく時間をとったんだから載りたいという気持ちがあります

宮崎晋一ああ、それはわかります

(竹)じゃあ、載ることを意識して問題を作るようになりました?

Hammy昔からそういう意識で作ってきているつもりです

(金)以前って『わかってくれないんだったらいいよ』というスタンスじゃありませんでした?

Hammyいやいや。昔から毎回、載るつもりで問題を作ってはいるんですよ

宮崎晋一作者側と編集側で温度差があるんですね

Hammyたぶん、意識は変わってないんですけど、自分の中でだいぶ『わかってきた』のだと思います

宮崎晋一私は、以前、それまでと同じように作っているのに急に載らなくなってきた時期があって、そのときに『ああ、載らないときは載らないんだな』と悟ってしまったところがあります

(金)じゃあ、載るために自分のスタンスを曲げるということはしない?

宮崎晋一曲げることもなくはないんですが…うーん、難しいですね。そもそも、私の問題って、実際にはあからさまにボツになるような問題はあまりないと思うんですが、どうでしょうか?

(金)確かに、ボツは少ないほうかもしれません

宮崎晋一ですよね。無意識のうちに、載るような問題になるよう頭が働いているのかもしれません

(竹)長年の経験があるのかもしれないですね


(竹)では最後になりますが、これまでお話しいただいたこと以外で、新しい問題を作るコツがあればお聞かせください

宮崎晋一以前『オモロパズルのできるまで』(新しいペンシルパズルのルールをみんなで考える『パズル通信ニコリ』の人気コーナー)に、今は亡き『アイスバーン』というパズルが載っていたときなんですが、『すべてのアイスバーンを通らなければならない』というルールを忘れている投稿が多いという編集部からのコメントがあったんです。そこで、逆にそのルールを使わないと解けない問題を投稿して、掲載されたことがありました(『パズル通信ニコリ』109号47ページと112号50ページ)。現在nikoli.comやケータイで展開されているパズルでも、ふだんあまり注目されていないルールや手筋を意識するといいかもしれません

(金)Hammyさんはいかがでしょう

Hammyうーん、自分の場合だと、たくさん問題を解くことでしょうか。nikoli.comとケータイの問題は全部解いていて、さらに好きなパズルは同じ問題を何回も解いているので、新しさに敏感になっているような気がします

(竹)おふたりに新しいパズルを作るヒケツをうかがったところで、今日はお開きにしたいと思います。いろいろとおもしろいお話をありがとうございました。これからも目が覚めるような問題をよろしくお願いします


座談会開催 : 2010年8月 2010年9月10日公開

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