パズル作家座談会 第12回

インタビュー作家座談会

ペンシルパズルと、その見た目

今回のゲストは、「見た目びっくり」の問題にこだわりがある小見枝まやさんと、パズルにアートを求めるぽっつさん。パズルの見た目にこだわった問題をたくさん作ってきたおふたりといっしょに、パズルの見た目について語りあいました。ニコリからは毎度おなじみ(金)(竹)が参加しました。

(竹)今回はいきなり核心から入ってみます。ニコリの編集部では、いい問題かどうかの基準を『解いておもしろいかどうか』というところに置いています。見た目がいいかどうかは、まったく見ずに評価しています。それはおふたりともご存じですよね?

小見枝まやはい

ぽっつそのあたりはさすがに理解しています。長年作ってきているので

(竹)ですよね。わかっていて、そのうえで見た目にこだわる理由ってなんなのでしょうか?

ぽっつ作りはじめた初期は、インパクトがあると思ったのが大きな理由です。編集部ウケ、読者ウケを狙ってインパクトのある問題を模索しているうちに、ナチュラルに見た目にこだわるようになりました

(竹)インパクト優先だったんですね。編集部としてはそこは見ていなかったわけですが…。今はどうですか?

ぽっつ今は、一見インパクト勝負の問題と思わせながら、そのあとの解き味で勝負しているつもりです。この見た目だからこそ演出できる解き味、というのを目指しています

小見枝まやナンバーリンクで数字を点対称に配置した問題とか?

ぽっつそう。2カ所で同じような線の引きかたをすると見せかけておいて、実はぜんぜん違う通りかたをする、というような。『この見た目なのにこんな解き味なのー!?』というギャップを演出したいんですよ

(金)小見枝さんはどうですか?

小見枝まや私は、まず自分でなにかテーマを決めないと問題を作れなかったんです。対称形にしなくてもいいましゅで、真珠を点対称に配置したり

(竹)最初は、単に問題を作るための動機のひとつでしかなかったんですね

小見枝まやでも、そのうち『見た目びっくり』にすると楽しいことがわかってきました。いちばん覚えているのは、ペンシルパズル本『スリザーリンク6』60番。初めて製作依頼が来たときの作品なんですけど、ネタがなかったこともあって(笑)、数字で文字を書いてみたんですよ。FIGHTって。そうしたら、パズル作家のじるしさんに『Fの下のあたりの空間がどうなるのか気になって解いてみた』っていう感想をもらったんです。それを聞いて、見た目には『解いてみよう』と思わせる力があるんだって気づきました。たとえばパズルの本を開いていくつか問題が並んでいるときに、もし『この中でひとつだけ解こう』と思ったら、やっぱり見た目に引かれるんじゃないかなって思います。みんなに聞いてまわったわけじゃないから、ほんとうのところはわからないんですけどね

ぽっつ見た目優先で作ったときって、解いた人の反応が気になりますよね

小見枝まや気になる気になる。その点、nikoli.comでは解いた人のコメントが読めるからうれしいです。見た目びっくりの問題って、好意的なコメントが多いんですよ。配置の妙、とか。『見た目だけの問題』なんて評価も覚悟しているんですけど、あまりない

ぽっつニコリ編集部のチェックが通っているからには、中身は水準以上なはずですからね。批判は少ないと思います

(竹)そうですね。見た目がどんなによくても中身がおもしろくなければニコリではボツになりますから

小見枝まやでも、見た目にこだわることには弊害もあるんですよ。たとえば、数字を対称配置にしたせいで、問題を解くのには使わない数字が入っちゃうとか

ぽっつ弊害はありますね。でも、それを乗り越えたときの完成度はふつうに作ったときとぜんぜん違う気がする

小見枝まやそうそう。がんばって乗り越えるところが、ウデの見せどころ

(竹)見た目のためにパズルのほかの部分を犠牲にするようなことはないんですか? この部分の解き味が気に入らないけど、見た目がいいから送っちゃうかあ、というような

ぽっつそれはないですね

小見枝まやないない。そんな妥協をして投稿するくらいなら、ゴミ箱に捨てちゃいます(笑)

(金)ところで、一口に見た目にこだわるといっても、2通りあると思います。見た目の美しさか、見た目のインパクトか。おふたりはどちら?

小見枝まやほんとうは美しさを求めたいんだけど、自分には図形のセンスがないと気づいたので今はやってないです。むかし、パズル作家の松風さんが作っていたスリザーリンクの数字配置を見て、数字で『曲線』を描くのがうまいなあと思ったことがあったんです

ぽっつわかるわかる。じるしさんとかもうまかったですよね

小見枝まやそれで私もやろうと思っていろいろ数字を置いてみたんだけど、どうしても曲線がうまく作れない

(金)ギザギザになっちゃう?

小見枝まやそう。それで、私はそういうのは無理なんだと悟ってしまいました

(竹)だからインパクトというか、『見た目びっくり』の方向でこだわっているんですね

(金)ぽっつさんは美しい問題をよく作っていますよね

ぽっつボクの場合は、美しさでもインパクトでもなくアートですね。アートを求めています

(竹)アート?

ぽっつこないだのインタビューでも似たような話をしましたが、トータル・プロデュースなんですよ。パズルの本質は解き味だから、当然よいのを目指す。そのうえのスパイスとして、インパクトにこだわるし、美しさにもこだわる。なににこだわるとかじゃなくて、単純に『いい』って言ってもらえるような問題を作りたいんです

(金)誰に言ってもらいたいんですか?

ぽっつ解き手です。解く前にも、解いてる最中にも、解いたあとにもそれぞれ『いい』って言ってくれる作品。そうなってきたときに、解く前の『いい』を作るために見た目を気にしているというわけです

(竹)逆に、解いたあとの見た目についてはどうですか? 小見枝さんはよく解きあがりの見た目に趣向を凝らしていますよね

(金)スリザーリンクで、解いたあとの輪っかが絵になっているとか

小見枝まやそうですね

ぽっつほかの人の問題だと、数独で、解きおわったらいちばん上や真ん中のヨコ列に123456789と並んでいたり、中央のブロックが魔方陣になっていたり。偶然かもしれないですけど

(金)魔方陣は気づかれないでしょう(笑)。でも、あかしょうさんはそういう趣向が好きですね

(竹)ぽっつさんはなにか解いたあとの見た目に趣向を入れたりしているんですか?

ぽっつたまにやりますよ。四角に切れで、幅1マスの四角だけぬりつぶすと『ニコリ』という文字になったりとか

小見枝まやそれは気づかない(笑)

ぽっつほかに、ナンバーリンクで、特定の数字の線のマスだけぬりつぶしたら『ニコリ』が出てくるとか(笑)。たぶん気づかれないんだけど、こういう遊びもあるんだよ、というのを入れたかったんです。人間って、根本的に隠しキャラが好きなんですよ

(金)人間全体がそうだって、断言しちゃっていいんですか?

ぽっつ心理学的には一般にそういわれています。テーマパークの隠しマスコットとか、コンピュータゲームの隠しコマンドとか。そういうプラスアルファ要素って人間は大好きなんですよ

(竹)でも、気づかれないと意味がないですよね。気づかれないまま終わるというリスクもあると思うんですが

小見枝まや気づかれなくても、どこかで、いつか言えばいいかなあと思っています

ぽっつ最近はブログで話すというテもありますし。言ったもん勝ちかもしれませんね

(金)やっぱりそういうことは言いたいですか? 気づいた人にだけ気づいてもらえればいい?

ぽっつ問題によっては、気づいた人だけ、ということもあります

小見枝まや私はそんなに控えめじゃないなあ。わりといつでも言いたい(笑)

ぽっつでも、配慮はしていますよね。出題されてから数日は書かないようにしてる

小見枝まやそうですね。それは最低限守っているつもりです

(竹)できれば、解いている人たちが自発的に気づいて盛りあがってほしいですもんね

ぽっつそれが理想です


(竹)nikoli.comやケータイで出題されているパズルで、見た目にこだわりやすいパズルはどれでしょう?

ぽっつ一般的にはましゅでしょう

小見枝まや数字を並べやすいという意味では、スリザーリンクかな

(金)スリザーリンクの数字で字や絵を描くのはラクですね

ぽっつ逆に、ぬりかべは数字を配置するときの制約が多いから難しいですね。やっぱり制約が少ないパズルがやりやすいと思います

(竹)美術館はどうでしょう? 黒マス配置の制約が少ないと思うんですけど

小見枝まや私は見た目にこだわった美術館はあまり作れないなあ

ぽっつ僕もほとんど解き味優先の問題しか作っていないです。思いついても、すでにやられてる気がするんですよね。美術館は今さら新しい見た目の問題はできないかも

小見枝まやこだわりやすい、とは違うかもしれないけど、へやわけで、部屋でなく、数字を対称に配置した問題はどうですか?

(金)小見枝さんがよく作っているタイプですね。インパクトがありますよね

小見枝まや私が最初にやったのは『パズル通信ニコリ』96号と101号なんだけど、どうして今までほとんどやられてないんだろうと思いながら作りました

(竹)作るのが難しいからでしょうか

ぽっつ作りやすくはないですよね

小見枝まや作りやすくはないけど、そこまで難しくもないですよ。先に右端と下のほうの部屋を決めちゃうのがコツです

ぽっつ作りなれたら楽になるのかな? 僕は部屋をキレイに区切るのが好きなのでやったことがないです

小見枝まやほかに見た目が個性的な問題というと、天歩さんの問題が思いうかびます

(金)たしかに天歩さんの問題は目立ちますね。ヤジリンなんて、無駄な矢印がいっぱいある

ぽっつナニコレー、と思いますよね

小見枝まや思う思う

(金)あれは、編集の立場から見ると、スペースがもったいなあと思います。問題としておもしろいから使ってますけど

(竹)ヤジリンで、ほかの方法で見た目のインパクトがある問題はできるんでしょうか?

小見枝まや数字や矢印をキレイに配置するのはヤジリンだと難しいよね

(金)実はすごく制約が多いパズルですからね。どうしたってこうならざるをえない、という場面が多いんです

ぽっつ特に、壁際に数字を置くときのパターンが決まっちゃっているのが痛いですね

小見枝まやあーでも、そういう話をしていると、逆にキレイな問題を作ってみたくなっちゃったかも(笑)

ぽっつ僕も僕も

(竹)チャレンジングではありますよね。誰もまだやっていないから

(金)やりつくされていないパズルではあります

ぽっつこれからに期待!


(竹)さて、今回は『見た目』をテーマに話してきました。パズル以外に、日常生活でもなにか見た目にこだわっていることはありますか?

ぽっつ見た目といえるかどうかわからないんですけど、こだわりということなら、使う道具にはこだわっています。パズルを作るときに使っている筆記用具も、ルイ・ヴィトンなんですよ。美しいものを作るときには、美しい道具で作りたいなあと。…これなんですけど(カバンからシャーペンを出す)

小見枝まやうわー、かっこいいー。ぽっつさんはそういうところこだわるよね

ぽっつ作る中身だけじゃなく環境にもこだわりたいんです

(竹)小見枝さんはなにかこだわりありますか?

小見枝まや見た目かー…自分自身の見た目にはあんまりこだわってないですね。会社にすっぴんで行っちゃうくらいだから(笑)。でも、駅前におでかけするときみたいに、人前に出るときはちゃんとお化粧していますよ

ぽっつやっぱり人前に出るときはね

(金)小見枝さんの中で、会社は『人前』じゃないんだ?(笑)

小見枝まや会社の人はある意味身内だから。そう考えると、パズルはおでかけ。他人にお見せするものだから、しっかり化粧しています

(金)じゃあ、他人に見せない『すっぴんのパズル』というのもある?

小見枝まやうーん…今ここで即興で問題を作って、って言われて作ったらすっぴんのパズルになるのかも

(金)なるほど。そりゃそうだよね。作品として仕上げるあいだに、シャドー入れたりアイライン入れたり、絶対しますよね

ぽっつ化粧してます。すっぴんのパズルじゃ、ボツになっちゃうだろうし

小見枝まやでも、若いコってすっぴんで外歩いてもイケるよね。朝起きて、顔洗っただけで子どもは外に出ていくじゃない。そうすると、若いコが作ったすっぴんパズル、というのはアリなのかもしれない

(金)ああ、ありますね。ありのままなのに、おもしろいパズル。むかしのももてれうさんの問題がそうでしたね

小見枝まやそれに、あんまり化粧しすぎると、自分らしさがなくなっちゃうんですよね。その人らしさが出ている問題が、ナチュラルメイクな問題

(竹)化粧というのはおもしろいたとえですね。ほかになにかおもしろいたとえってないかなあ?

ぽっつ実はひとつたとえを考えてきました。パズルの見た目にこだわるのは、学校の遠足でいうおやつ選び。遠足って、旅の行程とか班行動の大切さを学ぶものですけど、でもおやつ選びをがんばっちゃうじゃないですか。そこは遠足の本質じゃないのに

小見枝まやがんばるよね

(金)おいしいかどうかが、お菓子の本質ですよね。見た目にこだわるというのは、ちょっと変わったお菓子を買うのにあたるのかな。わざわざ、ふだん行かないお店に買いに行ったり

ぽっつゴディバのチョコレートを買いに行ったりして

小見枝まやでも暑いから溶けちゃって食べられなかったり

ぽっつそれがパズルでいうボツなんですね(笑)

(金)そういう意味でいえば、私はむかしから中身重視です。おやつもパズルも

ぽっつ僕も中身の妥協はしていないですよ。おやつもパズルも

(竹)パズルと遠足の意外な関係がわかったところで、今日はお開きにしたいと思います。ありがとうございました


座談会開催 : 2010年9月 2010年10月12日公開

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