パズル作家座談会 第20回

インタビュー作家座談会

波及効果について語りあう

パズル作家と、いろんなことを話し合うパズル座談会のコーナーです。今日のテーマは波及効果。新しめのパズルということもあり、こういった形で話された機会はあまりなかったパズルです。はたしてどんな話題が飛び出すのでしょうか。ゲストは第二駐輪場さん鴈野敏生さん。ニコリからは(金)(竹)が参加しました。

(竹)今日は波及効果だけに話題を絞って話したいと思います

第二駐輪場よろしくお願いします

鴈野敏生波及効果を作るのが得意な第二駐輪場さんと、不得手な私のふたりがゲスト、ということで(笑)

(竹)そんなことないですよ。いい問題をたくさん作ってくださっているからおよびしたんです。第二駐輪場さんには、先日のインタビューで波及効果へのなみなみならぬ思い入れを語っていただきました。鴈野さんはいかがでしょう。いろいろ作られているパズルの中のひとつ?

鴈野敏生そうです。いろいろ作っている中のひとつ。それも、作っている中では得意じゃないほうです

(竹)そうなんですか? でも、ほかの人よりたくさん載っていますが

鴈野敏生たぶんね、ほかの人はあまり作らないか、私よりもっと苦手なんでしょう

(金)それはあるかもしれないですね

鴈野敏生私自身、第二駐輪場さんに作り方を教えていただきたいくらいですよ(笑)

(竹)やっぱり、作家にとって問題を作りにくいパズルなんでしょうね

第二駐輪場ハタンしやすいですからね。ぼくは、作り始めたころにハタンし続けたので、早々にコンピュータでハタンしていないかどうかチェックしながら作るようにしました

(竹)自分でプログラムを組まれたんですか?

第二駐輪場そうです。パソコン上で作ることにして、数字が置けないところにはそもそも数字が入力できないようにしています

(金)鴈野さんも自作プログラムを書いてチェックされているんでしたよね

鴈野敏生ええ

第二駐輪場手だけで作るのは諦めたほうがいいかもしれないです(笑)

鴈野敏生数字の間隔のルール違反に気づかずにどんどん進んでいってしまうと悲惨なことになる

(金)ハタンしたことに気づいて、あとから直すのも大変ですよね。部屋を小さく切り分けたり、部屋の形を組み替えたりもカンタンにはできない

鴈野敏生部屋の切り分けはときどきやりますよ。最初に作るとき、ハタンしないように作っていくと、使う数字がどんどん大きくなっていっちゃって。しょうがないからあとからなるべくコンパクトになるように部屋を切って修正します

(竹)第二駐輪場さんもあとから部屋を切り分けることはありますか?

第二駐輪場ありますよ。でも、だいたいは最初に、この問題ではこれまでの数字しか使わないと決めておいて、それを超えそうになったら少し戻って作りかえる、という作り方をしています

鴈野敏生私も基本的にはそう。5ないし6までで収めようとしているんだけど、なかなかうまくいかないねえ

(金)波及効果が『パズル通信ニコリ』に出始めた直後のころはカンタンな問題の投稿がほとんどなかったんです。当時は私が編集長だったから、1番向けの問題を手作りしたんだけど、すごく苦労した記憶があります。カンタンな問題を作るのが非常に難しい。作ってみて、なぜ1番向けの問題が送られてこないのかよくわかりました(笑)

(竹)大きい数字を使うとそれだけで難しくなりますからね

鴈野敏生実は、ナナメに同じ数字を並べていけばハタンはしないんですよ。それを利用して、まず先に盤面を数字で埋めてしまって、あとから解けるように部屋を区切るように作ることもできる

第二駐輪場そうですね。ぼくもたまにそういう作り方をします。ただ、あんまり数字が規則的に並んでいると、ちょっとやりすぎかなあという気がしてしまいます

鴈野敏生全部それで作っていたらおもしろくないね

(竹)というわけで、作り手にとっては作りにくいパズルなんですけど、解き手の人気は上々なんですよ。nikoli.comでは、似たことをやる数独よりも解いている人数が多いようです

第二駐輪場どうして人気なんでしょうね?

(金)数独と比べて難しい考え方が必要な問題がないから、コツコツがんばれば解ける、というのがいいのかもしれない

鴈野敏生そうですか? 数独と波及効果は、解き手から見ると考え方はほとんど同じですよね。『数独通信』に載っている考え方の一覧ページ(Vol.21だと4~5ページ)でひとつひとつ調べてみたら、数独で使う考え方はほとんど波及効果でも使える。『レッツミー』(タテまたはヨコの列に注目する数独の考え方)だけはないけど

(竹)でも、数独となにかが違うはずなんですよね

鴈野敏生たぶん、数独よりも使う数字の種類が少ないのが関係しているんじゃないかな。波及効果で8とか9まで使う問題はあまりないから、あまり遠くまで見渡さなくてもいい。そのぶん、数独よりおもしろいんじゃないかなと思います

(竹)たしかに、1なんてすぐ隣のマスだけチェックすればいいだけですもんね。数独だと、1でも列の端まで見渡さないといけない。近くだけ見てコツコツ解けるというのがいいんでしょうか

鴈野敏生数独との比較でいうと、私は解くときも数独の解き方と同じように解いています。特に『予約』をよく使います

(金)鴈野さんは問題を作るときにも予約の考え方をよく使っていますよね。2と3がこことここで使われるから、ここには1か4しか入らない、というような場面がよく出てきます

鴈野敏生でしょ? 数独でよく使っている考え方がそのまま出てしまうんです

(金)ただ、波及効果で予約のような難しい考え方が出てくるととたんに難しくなってしまいます

(竹)第二駐輪場さんは、難しい考え方を使った問題は少ないですよね。自分の中でセーブしているんですか?

第二駐輪場しています。基本的に、ふつうに部屋をひとつだけ見て決まる、という考え方しか使わないようにしています。ある1マスだけを見てそこに入る数字はなにか、という考え方も使わないで解けるようにしているつもりです

(竹)数独通信でいう『マスミ』の考え方ですね

第二駐輪場使うとしても、終盤、最後の数部屋だけ残ったときくらいにとどめています

鴈野敏生あの考え方はイージーだと思うけどなあ

第二駐輪場ぼくは使いたくないです。そんなにカンタンな考え方だとは思えないので。数独で出てくる場合より気づきやすいとは思いますけれど

(竹)このあたり、おふたりのお考えが違っていておもしろいですね

第二駐輪場逆に、『井桁理論』(2つのタテ列に注目してある2種類の数字が入る2マスを見つけ、その2マスと同じヨコ列にある別のマスに注目する、といった考え方。『数独通信』Vol.21の5ページ参照)のような数独の難しい考え方を見えやすい形で提示できるところは、波及効果のいいところだと思います。部屋をうまく組み合わせれば、小さい部屋どうしでコンパクトに同じ考え方を見せたりできますから

(金)部屋の形を見えやすいように組んで『いかにもここになにか仕掛けているぞ』と示すことができるんですね。ただ、波及効果でそれを狙って仕掛けられるというのはすごいですよ

(竹)うまくやらないと、ほかのところでハタンしたり、ほかから別の考え方で解けてしまったりしますからね

鴈野敏生私にはまだできないなあ

第二駐輪場部屋の形を工夫して、注目させたい場所をコントロールできるというのは波及効果のいいところだと思います。数独だとどの列、どのブロックも等質なので、ひとつひとつ見ていかないといけない

(金)1マスの部屋には、誰でもとりあえず『1』を入れられますからね

第二駐輪場それはほんとに重要ですよね

(竹)最初からあかす数字については、なにかこだわりはありますか? できれば個数を減らしたい?

鴈野敏生どちらかというと、減らしたいです。ただ、やさしい問題を作るときには減らさないようにしています

(金)第二駐輪場さんは? 対称配置(数字の位置が点対称になるような配置)にはこだわっていますよね

第二駐輪場そうですね。波及効果にはすぐ伝わるアピールポイントがあまりないので、見た目にはこだわりたいなあと思っています

鴈野敏生対称配置にするだけならカンタンですよね。作ったあと、対称配置になるように数字を増やせばいいので

第二駐輪場そうなんですが、最近は、明らかに不要な数字はあかさずに、対称配置にするようにしています。それが無理そうな場合は諦めて、不要な数字も入れてしまいますが。できれば、1マスの部屋の『1』はあかすのでなく、解き手に入れてもらいたいです

(金)そんなところにもこだわっているんですね

第二駐輪場個数でいうと、減らす方向へのこだわりはないです。数字を削ってしまったせいで、思いがけず難しくなってしまうことがあるので。どちらかというと、解き直してつっかかるところに数字を増やすことのほうが多いです

(金)坂本伸幸さんが、やたらいっぱい数字をあかす問題をよく作っていますよね。あのタイプの問題についてはどう思いますか? かっこ悪い?

鴈野敏生かっこ悪いとは思わないなあ。いっぱい数字が出ているけど、よく考えてやさしくておもしろい問題になっているなと感心します。特に私はやさしい問題を作るのが苦手なので

第二駐輪場たくさん問題を作って慣れてくると、あかす数字を減らしたくなるのが自然だと思うんですよ。でも、下手に減らしてもイヤに難しくなってしまうだけなので、作る人は数字の個数にはプライドは持たないほうがいいんじゃないかな、というのが最近のぼくの考えです

(竹)ここで、波及効果のこれからの話を。ズバリ、波及効果に未来はありますか?

第二駐輪場ありますよ。すごくあります

(竹)どういう方向でしょう。難しい考え方を追究する方向へ進むと、どんどん一部のマニア向けのパズルになってしまいそうですが

第二駐輪場難しい考え方を、わかりやすく見せるという方向だと思います

(竹)たしかに、見せ方を工夫する余地はまだあるのかもしれないですね

鴈野敏生さっきも言いましたけど、解くときの基本的な考え方は数独と同じだと思うんですよ。ただ、部屋の形とうまく組み合わせて、目新しい解かせ方ができる気はしています

(金)大きな部屋を使う方向はどうでしょう。今の波及効果は、小さな部屋で小さい数字から順にチマチマと埋めていく感じの問題が主流だから、もしそれをひっくり返すとなると、大きい部屋をうまく使うのがいいかもしれない。大きい数字が飛び道具のように離れた部屋に影響していく展開はダイナミックだと思います

鴈野敏生大きな部屋を使うとどうしてもあかす数字が多くなっちゃうんですよね。そこをうまく解決できればよさそうです

第二駐輪場解き手に飛び道具を飛び道具と見てもらえるように制御するのも難しそうですね。でも、ストーリーとしてはいいですね。楽しそうです

(竹)なるほど。波及効果にはまだまだ伸びしろはありそうですね。最後に、おふたりから解き手のみなさんへなにかひとことずつお願いします

鴈野敏生まずはやさしい問題から、数独と違ったおもしろさを汲み取ってほしいなあと思います

第二駐輪場発展途上のパズルだと思うので、今からたくさん解いていると波及効果の発展のようすを体感できると思います

(竹)本日はありがとうございました。みなさんいっしょに波及効果を楽しみましょう


座談会開催 : 2011年10月 2011年11月10日公開

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