パズル作家座談会 第22回

インタビュー作家座談会

なめらかな作家たち

ケータイやnikoli.comにパズルを作ってくださっているパズル作家とお話をするコーナーです。今回のゲストは、Castyさんまいなすよんさん。このコーナーでは以前、第4回で、独創性にあふれ、解いた人に強烈なインパクトを残してくれる「とんがった問題」について話しました。今日はその逆、とんがっていない問題について話したいと思います。ニコリからは(金)(竹)が参加しました。

(竹)今日はとんがった問題とは逆の『とんがっていない問題』について話そうと思います

Castyカンタンな問題、というのとはまた違うんですよね

まいなすよん難易度はあまり関係ないと思います。やさしくしようという作者の気持ちが前に出ていれば、やさしい問題でもとんがったパズルになるのでは?

(金)言いかえると、とんがった問題とは、自己主張の強い問題?

まいなすよんそんな感じでしょう

(金)以前のインタビューで、Castyさんは『少し慣れた人がサラサラ解ける問題』を目指している、ということをおっしゃってました。まいなすよんさんは『空気のようなパズル』を目指しているとおっしゃっていました

まいなすよんたしかにそう言った記憶があります

(竹)今回話したいのは、そういうパズルについてです。とんがっていない、という表現は後ろ向きですね。なにかいい表現はないでしょうか

(金)まろやかなパズル。いや、なめらかなパズル?

(竹)なめらか、がよさそうですね。とんがったの反対の概念なので。どうでしょう、まいなすよんさんは、自分の作っている問題はなめらかだと思いますか?

まいなすよんたしかに、とんがってはいないです。ボクは問題を作るときに最初からなにか狙って作るということはあまりなくて、その場その場で自分のやりたいことをガシガシ入れちゃいます。それで、焦点がボケてなめらかな問題ができているんだと思います

(竹)結果的になめらかになっている、ということですか?

まいなすよんええ。とんがったパズルというのは、これを見せたいぜ、だからこう作っていくぜ、とちゃんと戦略を練って作られたものだと思います。ボクは途中であれもやりたい、これもやりたいとなりゆきで詰めこんでいっちゃうので、とんがった問題はできないんです

(竹)Castyさんはどうでしょう? なめらかな問題を目指して作っています?

Castyはい。最初からサラサラ解けることを目指して作ることが多いです。作りはじめからこういう問題で行こうと決めて、そうなるように作っています

(竹)思いを貫かれているんですね。ただ、同じ『思い』でも、とんがったパズルに見られる『自己主張』とはまた違う気がします

まいなすよんそうですね

(金)自己主張でなくて、エンターテインメントなんですよね。解く人を楽しませようとしているように感じます

まいなすよんオレがオレが、じゃなくて、こういうのいいですよね、どうでしょう、という感じ

Castyもちろん、いろんな人に楽しんでもらいたいと思ってはいます

(金)Castyさんの問題は、難しい問題でもなめらかなんです。上級テクニックをきっちり使わせる問題なんだけど、自己主張は強くない

まいなすよんなめらかにも2種類あると思います。Castyさんのは誰が解いてもおもしろいと思うんですけど、ボクのはなめらかといいつつ、ある人はおもしろいけど別の人が解くととおもしろくない、というのがありそうです

(金)たしかに、それは少しあるかもしれません

(竹)まいなすよんさんは、みんなに楽しんでもらいたいという気持ちはないんですか?

まいなすよんありますよ。でも、サラサラ解けるというような流れは気にしていないんです。楽しんでもらえると思うものを、見つけたら見つけただけどんどん詰めこんでいる感じです。その中のどれかひとつでも解く人に引っかかってもらえたらいいなあという感じです

(金)たしかに、まいなすよんさんには前半と後半でまるで流れが違う問題もありますよね。Castyさんにはそれがない

(竹)Castyさんは、途中でおもしろそうなものを見つけたときに入れたりはしないんですか?

Castyしません。最初に決めたとおりに作っています

まいなすよんどのパズルでもそうなんですか?

Castyそうですね。あ、数独はそうでもないかも。数独の難しい問題をなめらかに作るのは難しいです

(金)でも、数独でもCastyさんの問題はなめらかですよ。難しいものはちゃんとなめらかに難しい

まいなすよんCastyさんは、得意なパズルというのはありますか? このパズルだけはオレを見てくれ、というような

Casty作るときにはないです。解くときでいうと、美術館とかましゅとかが好きなんですけど

(竹)好きなパズルだからといって、このパズルをとんがらせよう、という気持ちもないんですね

Castyはい。好きだからどうこうというのはないです

まいなすよんボクはあります。たとえばカックロ。45をたくさん入れて、とんがらせようとしています。でもなかなかそういう印象はないようで

(金)たしかにとんがっている印象はないですね

まいなすよんとんがりたいという意識はあるんです。実際はあれやこれや詰めこんでしまってなめらかになっちゃうんですけど、実はとんがりたい。とんがった問題というのは、やりたいことや見せたいものが整理されているんだと思います

(竹)なめらかな問題をたくさん作っているおふたりですが、なめらかな問題ができる理由がぜんぜん違っているのがおもしろいですね

まいなすよんボクは、問題を解くときと作るときの気持ちがよく似ているんですよ。だから、作っていてこっちがおもしろそうと思うと、解くときもおもしろそうと考えてそちらに流れてしまう

Casty私は分かれています。解くのと作るのは別です

まいなすよんこのあたりの違いは、ニコリを読みはじめてから作りはじめるまでの時間が関係しているのかもしれません。ボクはニコリを始めてから1年くらいは解くほうしかやってなかったんです

Casty私は逆ですね。初めて買ったニコリは103号で、奥のページにある投稿の手引きを見てすぐに投稿しました

まいなすよんですよね。解くだけの時間が長かったので、解くほうに引っぱられているんだと思います。作品として作り上げるにはこっちに行っちゃいけない、とわかっていながら、解くときの気持ちでそっちに行っちゃうんです

(竹)なるほど。Castyさんは最初から今のような傾向の問題を作っていたんですか?

Castyはい。最初からサラサラ解ける問題が好きでした

(金)解くときもそうなんですか?

Castyそうですね。サラサラ解けるほうが解いていても楽しいです。といいつつ、ごりごりの難しいのも好きですけど

まいなすよん作るときの話になったのでついでに質問していいですか? Castyさんは、問題を作って解き直したあとに修正しています? ボクはいちどできた問題を解き直して、ひどいときに直すことがあるんですが

Casty直さないです。解き直したとき、ちょっと詰まるかなと思うことはありますけど、それはそれでいいかなとそのままにします

まいなすよん最初からみなさんの目に触れる形になっているんですね

(竹)作るときに最初の意思を貫いているからでしょう

Casty直しはじめたら、いろいろなところに手をつけてしまいそうです。だったらやらないほうがいいかなあと

(竹)そのあたり徹底しているんですね

まいなすよん自分の思いどおりの問題ができていますか?

Castyはい。もう何年もこのやりかたでやってきていますから。最初は作るだけでせいいっぱいでした

(竹)熟練の技なんですね

(金)ほかの人はなかなかマネできませんね

まいなすよん多作のヒケツもそのあたりにあるんでしょうか。とんがったパズルはなかなか量産できないですよね

(金)できないでしょう。どうしてもネタに詰まりますから

Castyでも、Gutenさんは多作ですけど、とんがったパズルも作られていますよね

(金)たしかに。あんなに作っているのにとんがった問題もあるから、すごいですね

(竹)作家にとって、なめらかなパズルを作ることのメリットはなにかありますか?

(金)量産ができるところ?

Castyそれはあります

まいなすよん疲れたときとかに、自分の力だけでなんとかできる、というのもあります。ボクはたまに、なにか作らなければ、という思いにかられて問題を作ることがあるんです。そういえばこのパズルを最近作っていないなあと思ったりして。そういうとき、なめらかな問題だと自分の中でコントロールできるから、気楽な気持ちで取り組めるんです

(金)スランプがない、というのもあるかな?

(竹)ネタや仕掛けが思いつかないから問題が作れない、ということはないですからね。なめらかな問題ではネタ切れになったりはしないんでしょうか?

Castyネタが切れることもあるにはありますけど…まあ、だいたいなんとかなります(笑)

(金)おふたりともたくさんパズルを作っていますが、作るときは1個のパズルを作りおえて次に移っていますか? 同時並行で何個も作っている?

Casty1個ずつです。作りおえてから、次に行きます

まいなすよんボクも同時並行はしないです。1問ずつ

(金)たとえばジャイアントのような大きい盤面で、途中で飽きちゃって気分転換に別の問題を作ろう、というのもない?

まいなすよんああ、それは例外的にあります

Casty私はないです。作りはじめたら最後まで作ります

(金)途中で止めて、日を置いてから続きを作るというのもない?

Castyたまにはあるんですけど、できればその日のうちに作ってしまいたいです

(竹)そういう作りかただから、なめらかになるんでしょうね。一気に作ることが、なめらかなパズルを作るコツなのかな

まいなすよんジャイアントくらい大きくなると、ボクはすごく浮気します。電車の中で作ることが多いのも関係しているかもしれません。電車だと、駅に着いたら降りなきゃいけないので、どうしても中断が入ってしまいます

Casty私は電車の中では作れないです。自宅とか喫茶店とか、落ちついたところで作っています

まいなすよんなるほど、作る環境も整えているんですね

(竹)メリットの話に戻ります。解く側から見たときのメリットはなんでしょう?

(金)野球の投球でいうと、なめらかな問題はストレートで、とんがった問題は変化球ですよね。ストレートがないと、変化球は生きないでしょう

まいなすよんそう思います。そういえば、nikoli.comでなめらかな問題に対して『カンタンすぎる』といったコメントをいただくことがありますね

(竹)なめらかに解ける問題は、難しい問題でも、解き慣れた解き手にカンタンと感じられてしまうことが多いですからね

Casty私は、カンタンに作った問題で、カンタンすぎだって言われたら素直にうれしいです。こちらの思ったとおりに受け取ってくれてありがとう、と思います

まいなすよんあと、なめらかな問題ばかり作っていると、ほかの作家たちと話しているときに名前を挙げてもらいにくいように思います

(金)でも、これまでのインタビュー座談会で、気になる作家としてCastyさんの名前を挙げられているかたは多いですよ

(竹)そうですね。特にとんがった作家さんほど気に止められているようです。ああいうスタンスは自分にはできないなあという声をよく聞きます

Castyそうなんですか。あんまり自覚はないです

(竹)Castyさんらしいなあ

まいなすよん逆に、Castyさんが意識されている作家さんはいらっしゃるんですか?

Casty特に意識している作家というのはいないです。ただ、339さんとかGutenさんのとんがった問題を見て、たまにはとんがった問題を作ったほうがいいのかなと思うことはあります

(竹)へえ、Castyさんでもそう思うことがあるんですね。なめらかなパズルについての今後はどうなるでしょう?

まいなすよんなめらか専門の作家が少ないですよね。Castyさんの独占市場のようになっている気がします

(金)だいじょうぶですよ。ほかの作家のみなさんもちゃんとなめらかな問題を作ってくれている。それはそれとして、なめらかな問題をたくさん作ってくださるCastyさんやまいなすよんさんの存在は貴重です

(竹)将来は安泰ですね。今日はありがとうございました


座談会開催 : 2011年12月 2012年1月10日公開

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