パズル作家座談会 第26回

インタビュー作家座談会

二大創始者とオモパを語る

ケータイパズル数独やnikoli.comの作家と語り合う作家座談会のコーナーです。nikoli.comでは、2012年6月から新しいパズル、シャカシャカの出題を開始しました。このパズルのルールを考えたのは、問題作者としてもおなじみのGutenさん。一方、同じくnikoli.comで人気のパズル、へやわけのルールを考えた福嶋啓之さんも、ケータイやnikoli.comに問題を作ってくださっています。シャカシャカもへやわけも、もとは『パズル通信ニコリ』の人気コーナー「オモロパズルのできるまで」から生まれた「オモパ」でした。そこで今日は、この2人をおよびして、オモパについて語ります。ニコリからは(金)(竹)が参加しました。

(竹)今日は、オモパ出身の人気パズルの創始者ということで、おふたりをおよびしました

Gutenへやわけとシャカシャカ、あまり共通点がないですよね。どちらも黒くぬる、くらいですか

(金)オモパのコーナーで、最初からいきなり完成形として掲載されたという共通点もありますよ

(竹)あのコーナーは、みんなでアイディアを出して新しいパズルのルールを作ったり改良したりしていくコーナーです。ルールが完成するまでに何人かのアイディアが入ることもよくあるんですよね。へやわけはどうやって思いついたんですか?

福嶋啓之まず、部屋の中に数字のぶんだけ黒マスを入れるパズルを作ろう、というのがありました。黒マスの隣接分断禁止ルールは、自然につけました。あのころは高校生で、まだパズルのことをあまり知らなかったこともありました

Guten高校生で新しいパズルを作ったんですね。私がシャカシャカを作ったのは、たぶん40歳です。歳が倍以上離れていますね

(竹)シャカシャカはどこから思いついたんですか?

Gutenうーん、どこまでさかのぼって話せばいいんでしょう。究極にはそもそもふだんオモパをどう作るか、というところまでさかのぼりますが

福嶋啓之いいですね。ぜひ聞きたいです

Guten新しいパズルを作るときは、パズルの目的、メインとなるパーツ、補助的な制約条件、の3つの要素を意識します。それぞれの要素をいつもストックしています。作りはじめるときにまず、目的から入るか、メインのパーツから入るかを決めます。だいたいパーツから行くことが多いですね。シャカシャカの場合も『黒三角を置く』というパーツから入りました。『白い部分で四角を作る』という目的も早い段階で決まりました。最初は線で輪っかにする、という目的の案もあったんですけど、すぐにダメだとわかりました

(金)四角を作る、という目的を思いついて、一気に完成に近づいた?

Gutenいえ、完成するまでだいぶ寝かしました。最初は、白い部分でできる四角として、ナナメの四角だけしか考えてなかったんですよ。ナナメ四角だけであれこれやっているうちはうまくいかなかった。あるときふと、立っている四角も許せばいいんだ、と気づいたんです

福嶋啓之すばらしい

Gutenあとは補助的制約として美術館式の数字を使えばいいか、となって、今のルールができました

(竹)なるほど。そういえば、へやわけも『部屋に黒マスを入れる』というパーツが最初だったんですよね。考えかたが似ているように感じました

福嶋啓之そうですね

Gutenへやわけの白マスの3部屋連続禁止ルールは、私がさっき言ったところの補助的制約ですよね。あれが絶妙に効いていると思います。補助的制約も重要なんですよ

(金)あのルールをよく思いつきましたね

福嶋啓之今思うと、自分でもよく思いつけたなあと思います

Gutenルール文で『3』という数字を使うのはすごく難しいです。2はよく使いますけど

(竹)なんとなく不自然ですからね

福嶋啓之3がどうというより、単純に線を2つまたいでいくのはかっこ悪いよね、という感覚です。思いつきです。2部屋連続禁止だと自然なんでしょうけど、それだと問題ができません。黒マスの隣接分断禁止のほうは、当時から別のパズルでボクの頭に染みついていたルールだったので自然な発想でした

Guten全部の要素を新しいもので作っちゃうと、なかなか受け入れられないですよね。目的も、パーツも、補助的制約も全部今までにないものを使うと、とっつきにくいものができてしまう

(金)でも、シャカシャカは新しい要素ばかりですよね。せいぜい、美術館式の数字ルールくらいですか

Gutenそうですね。実は最初はあの数字ルールもどうかなと思っていたんですよ。問題の見た目が美術館に似すぎちゃうからやめたほうがいいかと迷いました。でも、むしろそこくらいはなじみがあるルールにしないと逆につらいかなあと思い直しました

(竹)結果的にはそれがよかったんでしょうね。シャカシャカはnikoli.comで出題されるくらいまで人気になりましたが、創始者としてはどう思われていますか?

Guten理詰めで作ったり解いたりするパズルですけど、解くときは意外と直感でもいけますよね。うちの子どもが、シャカシャカのペンシルパズル本の大きい問題をサクサク解くんですよ。私より早い。本人もシャカシャカは得意だと言っています。解いているのを見ると、ここはこうぬれる、というのを感覚で覚えているようです。図形的なセンスのある人にとっては、直感に近い感覚で解けるのかもしれない

(金)理詰めで考えたらけっこう難しいんだけど、感覚で考えたらこうだろう、とぬれちゃう場面はたしかにあります。そのあたりは、四角に切れに似ているかもしれません

福嶋啓之0みたいな『三角を置かない』マスが多い問題だと、そのへんの感覚が和らぎます。シャカシャカの問題を作るときは、数字を多く置いたほうがおもしろい問題ができやすいと思います

(竹)なるほど。そうかもしれませんね

Gutenへやわけは直感では解けないですよね

福嶋啓之でも、ボクは最近へやわけを直感で解くようになってきているかもしれない(笑)

Gutenえ?

福嶋啓之このパターンだとこうなってこうなってこうなる、と瞬時にできちゃうことがあります。直感というよりは経験則かな?

(金)そうですね。直感は似て非なるものでしょう

Guten直感とはいわないんだけど、途中の理屈を省略してやっちゃうことはありますよね

福嶋啓之オモパといえば、ましゅはすごいですよ

Guten完璧なルールですね。へやわけもそうですが、特異点を持ち出して成功しているオモパはすごいです

(金)白真珠の『線が貫通するんだけど、どっちかのとなりでは曲がる』というルールですね。あれは秀逸です

(竹)どちらかが、というのがおもしろいです

福嶋啓之あれを最初に見たときは、やられたと思いましたよ

Guten慣れると『それしかない』という感じなんですけど、最初にルールを見たときは気持ち悪くて(笑)。へやわけの白マス3部屋連続禁止ルールにも通じますけど

福嶋啓之ボクは白真珠ルールには気持ち悪さは感じませんでした。それよりも、掲載当時のルールの見切りがすごかったです。ましゅは、最初は白真珠だけしかないルールのパズルだったところに、黒真珠が追加されたものが投稿されて、今のルールに落ちつきました。でも、ほんとならもうちょっと別の投稿を待つこともできたと思うんです。白真珠のルールも黒真珠のルールもいじろうと思えばいろいろいじれたはずです。ほかの真珠を入れることもできたはず。その検討なしでいきなりパーンと決定しちゃって

Gutenたしかに、ちょっとルールを変えたらもっとおもしろくなったかも、という検討は誌面ではされていないですね

福嶋啓之でも、実際にあれこれ検討してみると、なかなかあのましゅを超えられないんですよ。そう考えると、当時このルールで行こうと決めた英断はすごいなあと思います

(竹)あの白真珠のルールはどうやって思いついたんでしょうね

Guten私は、白真珠が先にあって、それを見せるために輪っかのパズルにしたんだと思います。メインのパーツから入ったオモパだと思います

(竹)なるほど、その可能性もありますね。オモパをよく作る人は、パーツから作るパターンが多いんでしょうか?

Gutenどうでしょうね。誰かが作ったオモパの改作から入る人もいるでしょうし

福嶋啓之ボクは、最近はほかのオモパの改作から入っています。このオモパはたぶん人気は出ないだろう、でも、このルールをこのまま廃れさせるのはもったいない、俺だったらこうするのに、というときに改作を作って送っています

Gutenオモパのコーナーの成り立ちからすれば、きっとそのスタンスのほうが精神にかなっていますよね

(金)なにもないところから新しいものを作るのは大変なんですよ。でも、すでにあるものから1カ所見つけて、ここを変えるとこんなによくなるじゃん、とやるのはわりとハードルが低いと思います。オモパのコーナーは、まさにハードルを下げるために始めたコーナーだったんです

(竹)今日はせっかくおふたりに集まっていただいたので、お互いのことについても少しお話しましょう。福嶋さんは、インタビューのときに好きな作家としてGutenさんを挙げていましたよね

福嶋啓之ええ。ほんとにすごい人だと思っていますよ。Gutenさんを見ていると、ボクも40歳になっても50歳になってもオモパの新作を送っていいんだ、と安心します

(竹)逆に、Gutenさんから見て、福嶋さんはどう思われますか?

Gutenオモパへの愛がハンパないですよね。どのパズルに対しても、これはいい、これはダメ、と意見を持っているじゃないですか

福嶋啓之オモパ大好きですから(笑)

Guten私は正直言って、他人のいいパズルを見ると悔しいです。これは自分で思いつきたかった、と思っちゃうんです。しょっちゅう悔しがってますよ

福嶋啓之なるほど。ボクはそうとういいパズルでない限り、悔しいと思うことはないです。今までに悔しいと思った回数は1桁しかないです。あ、シャカシャカは悔しかったですよ(笑)。でもいちばん悔しかったのは、ましゅの白真珠ルールです

(竹)なるほど。最後になりますが、オモパのコーナーについて思うことなどをお願いします

Guten私は、過去のしがらみにとらわれず、好きに作ってくれる人が増えると楽しいって思っています

福嶋啓之ボクもそう思います。こういうパズルを作らなければいけない、という枠にはとらわれないパズルが解きたい

Guten私個人としては、あのコーナーでは、将来のびていくパズルが生まれることよりも、コーナーそのものが楽しいほうが好きなんです。だから、にぎやかしや一発ネタのようなオモパをもっとたくさん見られたらおもしろいなあと思っています

(竹)なるほど。もちろんニコリもそのあたりは心がけています。将来につながりつつ、今も今で楽しい、そんなコーナーがいいですよね。今日はありがとうございました


座談会開催 : 2012年6月 2012年7月12日公開

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