パズル作家座談会 第27回

インタビュー作家座談会

パズルについてあれこれ語る ~あさおきたん、坂本伸幸の巻~

パズル作家をお招きしておしゃべりするパズル作家座談会のコーナーです。今回のゲストはあさおきたんさん坂本伸幸さん。個性的な問題を作るおふたりと、パズルについてあれこれ語りました。ニコリからは(金)(竹)が参加しましたよ。

(竹)おふたりとも、実生活では言葉に関する仕事や研究をされているんですよね?

あさおきたんはい。アメリカの大学で言語学の研究をしています

坂本伸幸ボクはタイ語などの外国語も扱う仕事をやっています。でも、言葉系のパズルは苦手です(笑)

あさおきたん坂本さんは、言葉系のパズルも作っているんでしたっけ?

坂本伸幸ええ、たまに作ります

(竹)パズル通信ニコリ』に載っている『書き取りスケルトン』を発明したのも坂本さんですね

(金)あさおきたんさんは?

あさおきたん作ったことはありますよ。クロスワードくらいですけど。こないだケータイにも載りました

坂本伸幸ボクもクロスワードはたまに作ります。でも、同じ言葉系だと、どちらかというと、推理クロスのようなロジカル寄りなほうが好きです

(竹)なるほど。解くほうはどうですか? クロスワードなどは解いていますか?

坂本伸幸たまに解いています

あさおきたんぼくもたまに、です。ただ、最近はnikoli.comしかチェックしていないので、言葉系のパズルはほとんど解けていないです。海外に住んでいると、日本の本を手に入れるのはタイヘンなんですよ

坂本伸幸nikoli.comは海外の会員もいるから、言語に依存したパズルを出すのは難しいでしょうね

あさおきたん海外といえば、ニコリのじゃないけどアメリカで見かける英語のクロスワードは難しいですよね。日本のと比べて、ヒントが異様に短い

(金)短いですね。特にアメリカのは、そう感じます

坂本伸幸言葉の絡みで解かせることを重視しているのかな?

(金)それもあるんでしょうけど、ヒントがいつも定形なんですよね。たとえば、UDOのヒントはほぼ毎回『Japanese vegetable(日本の野菜)』。お約束なんです

坂本伸幸それだと、あんまりおもしろみがないような

あさおきたんUDOは母音が多くて短い言葉だから、クロスワードに入れやすそうですね

(竹)だからよけいに目立つんでしょうね。作る人による傾向の違いもないんでしょうか

(金)ないと思います。逆に、イギリスは知識重視のヒントが多いです。シェークスピアの作品を知らないと解けない、なんてヒントもあります

坂本伸幸お国柄ですかね。ボクは仕事柄、中国やタイのクロスワードを見たことがあります。でも、今のところどんな特徴があるかまではわかってないなあ。どうやって解くかもわかってないです

(金)タイ語は文字そのものが特殊ですよね

坂本伸幸そうなんですよ。文字の順番が特殊で、そのうえに文字の上下左右に母音の記号がつくもんだから、クロスワードでどうするか問題を見てもよくわかりません

あさおきたん母音によって、左側に書くとか右側に書くとか決まっているんですよね。どうやるんでしょうね。ぼくはアラビア語のクロスワードを見たことがありますよ

(金)やっぱり右から左に書くんでしょうね

坂本伸幸タテはさすがに上から下の方向かな?

あさおきたんそうですね

(竹)でも、アラビア語ってタテ書きにできるのかな?

(金)できるでしょう。そもそも英語だってふだんはタテ書きにしないのに、クロスワードだとするから

(竹)逆に、タテ書きでしか書かない言語ってあるんでしょうかね

あさおきたんありますよ。モンゴルで昔使われていた文字は、タテ書きにしか書けないです。ヨコにしようとすると、文字をつなげたままでまとめて90度回転するしかない

坂本伸幸へええ

(竹)それだとクロスワードを作るのは難しそうですね

あさおきたんただ、1文字ずつ孤立しているとき用の字形はあるはずなので、それを使えばできるかもしれないですね

(竹)前回はオモパの大家による座談会でしたが、今日のおふたりもおもしろいオモパをたくさん作っていらっしゃいますよね。あさおきたんさんは美術館、坂本さんは書き取りスケルトンと、それぞれ『ニコリ』本誌のレギュラーパズルになったパズルを生み出しています

坂本伸幸たくさんといっても、ボクのは書き取りスケルトン以外は勢いだけの産物です。ホタルビームが増刊号などでたまに載るくらいですね。ほかは作った本人もだいぶ忘れています。先日、誰かに『坂本さんが考えたわなげってオモパはおもしろいですよね』っていわれたんですが、自分でもどんなパズルか覚えていなかったんです。今も思い出せないです(笑)

(竹)名前は聞き覚えがあるなあ

(金)あさおきたんさんはどのくらい?

あさおきたんぼくは、数はそんなに作っていないです。たぶん7~8種類くらいかな

坂本伸幸その中に美術館というビッグネームがあるからすごいですよ。今世にあるパズルでいちばんいいパズルだと思っています。単純にパズルとしておもしろいし、作者が自由にいろんなことができるのもいいです。この仕掛けを入れたい、と思ったとき、そんなに苦労しないで入れられる。ボクのオモパって、仕掛けを入れて作ろうとしても、だいたい作っているあいだにつぶさざるを得なくなることが多いんです。それでも作りあげるのが作者の腕の見せどころともいえるんでしょうけど

(金)最近nikoli.comで出題が始まったシャカシャカも、仕掛けがつぶれる代表選手ですね

坂本伸幸そうですね。シャカシャカは仕掛けを入れても解く人に見えにくいという弱点もありますね。こだわって作ろうとする作者にとっては難しいパズルかもしれません

(金)シャカシャカには難しい解きかたがいろいろあるんですけど、難しすぎると判断して、編集側で外に出さないようにしているものがけっこうあります

(竹)美術館も最初のころはそうでしたよね。とても難しい考えかたが必要な問題はあまり載っていなかった

(金)あさおきたんさんは、美術館が誌面に初登場したころ、すでに主だった難しい手筋を研究し尽くしていましたよね。投稿する前に研究したんですか?

あさおきたんいえ、最初の原稿はあまり深くは考えずに送りました。投稿したあとにいろいろ考えましたけど

(金)いざ考えてみたら、意外に奥が深かったからびっくりした?

あさおきたんびっくりしました

(竹)ほんとうに手筋が多いですよね

坂本伸幸私は基本的にはなんでも思いついたら送ってしまうタイプですね。とはいえ、オモパの場合はいちおう少しは解きかたを考えるかなあ。やさしいのも難しいのもいっしょに投稿しないと、採用されないかもしれないと不安になります。パズルとして、作れる問題の難易度の幅が広いところを見せておきたいです

(竹)将来たくさん問題が作られるようになる可能性を考えると、奥の浅いパズルでなく、深いパズルのほうがいいですもんね

(竹)そういえば、これまでおふたりの接点はどのくらいあったんでしょうか?

坂本伸幸今回が初対面じゃないかな

あさおきたんたぶんそうですね

(竹)お互いペンネームは知っていたんですよね

あさおきたんはい。実は昔、インターネットの掲示板でお話したことはあるんですよ

坂本伸幸記憶がないなあ

あさおきたん美術館と同時に『ニコリ』に載っていた、坂本さんが作ったオモパについて話したんですよ。名前は、しめなわ2…しめなわ3…4…どれだったかな((竹)注:調べたところ、しめなわ4でした。複数の輪っかを作るパズルです)

(竹)これまで、お互いどんな印象を持っていました?

坂本伸幸美術館のすごい人だという印象でした

あさおきたんおもしろいオモパを作る人だと思っていました。それと、坂本さんの問題は解いたらわかりますね。特にカンタンな問題。これは坂本さんの問題だろう、とすぐにわかります

(竹)坂本さんは自覚されていますか?

坂本伸幸美術館は、多少あります。スリザーリンクもあります。ただ、ひとりにしてくれなんかは個性がないんじゃないかなと思っています

(竹)たしかに『坂本さんのひとりにしてくれ』といわれてもパッとは想像できませんね

(金)あさおきたんさんも、なるべく問題に個性を出したいほうですよね

あさおきたんうーん、どうでしょう

(金)ふつうに作った問題だと、自分で納得しないのでは?

あさおきたんたしかに、美術館のように問題として成立させるだけならあまり深く考えなくてもできてしまうパズルについては、ただ作って出すだけなのはおもしろくないなあとは思います

坂本伸幸なにか自分らしいものを入れたいですよね

(竹)そのあたりの考えは、おふたりは似ていますよね。おふたりとも投稿歴が長いですが、パズルに関して自分の中で変わってきたことなどはありますか?

坂本伸幸オモパについて『いいオモパ』の感覚が世間とズレてきつつあるのが怖いです

(金)いいと思ったパズルが載らなくなった?

坂本伸幸それもそうですし、『これは一回限りの掲載で終わってしまうかな』と思っていたオモパが、定番パズルに昇格することもよくあります。シャカシャカもそうです。目新しいパズルだけど、これは受け入れられないだろうなあと思っていました(笑)

(金)そういう感覚のズレは誰にでもあると思いますよ。自分の感性が大事だと思います

坂本伸幸もちろん自分の感性を通したいです。でも、あまり通しすぎると受け入れられなくて、載らないんですよ。だから、適度に世間の感性を入れつつ、自分のほんとうに通したいことはちゃんと通したいと思っています

あさおきたんぼくはここしばらく『ニコリ』を読めていないので、変わってきたかどうかの前に、今はまず時間をとって何年か前の号からじっくり『ニコリ』を読みたいです。ここ数年のオモパをぜんぜん追えていないんですよ。シャカシャカもいまさら勉強中です

(竹)そのときはぜひまた新しいオモパを生み出してください。おふたりとも、今日はありがとうございました。これからも、いっしょにパズルの世界を盛りあげていきましょう


座談会開催 : 2012年6月 2012年8月10日公開

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