パズル作家座談会 第28回

インタビュー作家座談会

クロスワードについて、再び語る

パズル作家とあれこれお話するパズル作家座談会のコーナーです。今回のゲストは、クロスワードをよく作っているひらりんさんとまいなすよんさん。クロスワードについてアツく語り合いました。ニコリからは(金)(竹)が参加しました。

(竹)クロスワードについては2月にも座談会を開催したので、第2弾になります。まいなすよんさんは前回は参加していませんでしたよね

まいなすよんはい。ひらりんさんに聞きたかったんですけど、そもそも『まいなすよんがクロスワードを作っている』というイメージはありましたか?

ひらりんありましたよ。私は『いつでもクロスワード』は毎回チェックしています。あれに載っている人には、クロスワードを作っているイメージがあります

(竹)ひらりんさんは、いつでもクロスワードの問題を全部解いていらっしゃるんですよね。先日、解いた問題のそばに感想やコメントを細かくメモしているのを見せていただきました

ひらりん『いつでもクロスワード9』のまいなすよんさんの作品については、やりたかったことはわかるんだけど、徹底されていない印象でした。惜しいというべきか、奥ゆかしいというべきか。でもこのあいだ、まいなすよんさんが参加した座談会の記事を読んだところ、作っている途中でも思いついたことをどんどん入れるというような話があって、ああこの作品もそういうことなんだと納得しました

(金)そのある種の『ゆるさ』がまいなすよんさんのパズルのいいところですよね。クロスワードに限らず、数字パズルもそうですし

ひらりん作者の味ですよね。キレイに収まりすぎるのだけが芸じゃないです。やっぱりたまにはフックがないと

まいなすよんあれ? 今日は褒められに来たつもりだったのに(笑)

(竹)いやいや、みんな褒めているんですよ。前回のお話にもありましたけど,ひらりんさんは途中からなにか足すということはないんですよね

ひらりんないです。やりたいことは盤面を組みはじめる前の『構想』で決めてしまうので。私はだいたい1カ月サイクルでクロスワードを作っているんですけど、そのうち2週間半はひたすら構想だけに使います。実際の盤面を組むのは2日くらいでできて、残り1週間でカギをつける。盤面を組む段階まで進んじゃうと、よっぽどのことがない限り新たにこれを入れよう、ということはありません

(金)構想で2週間もかけるのはひらりんさんならではでしょう

まいなすよんいつもそういうことを考えながら生活をしているんですか?

ひらりんそうですね。ふだんの生活をしながら、今回はどういう方向で行こうかなー、なんて考えています

まいなすよんボクはなにか思いついたら作って送る感じです

(金)ひらりんさんは特殊ですよ。エキスパートだから、これだけの構想が立てられて、それを実現できる力がある。ふつうのクロスワード作家にはできないことだと思います。しなくてもよいとも思います

まいなすよんボクはやりたいことがあるのに、それを実現する力が足りないんです。仕掛けを入れても中途半端になったり、伝わらなかったり

(金)そもそもの話として、仕掛けというのは作る側のこだわりですよね。解く側からすると、気がついても気がつかなくてもいいものです。解いた人が、解き終わって『ああこのクロスワード解いて楽しかったな』って思うクロスワードがいいクロスワードでしょう

まいなすよんそのあたりをじっくり聞きたいです。ボクはクロスワード作りの経験が浅いから、思いついたことをまとめることが重要で、それができたら満足してしまうんです。解いた人がどう思うかはあまり考えられていないかもしれない

ひらりん前回の構想・構成・演出の話でいうと、演出にあたる部分です。構成したものをそのまま見せても解き手に伝わらないし、解く人に対するやさしさもない。演出は大事ですよ。それと、私は『本質以外の苦労を解き手にさせない』という思いを昔から持っています。なにか仕掛けを入れることで問題そのものが解きにくくなっているとしたら、それは解き手に本質以外のツケを回していることになる。だからそうならない工夫はすべきです。私自身、特定のテーマに関する単語をたくさん詰めこむことをよくやりますが、むりやり入れたら入るときでも、ここまで無理したらちょっと解けないなあと思ったら、あきらめます。そういうところで、解き手に苦労させたくないんです

(金)パズルって、主体は解く人なんですよね。だから編集者としては、解く人がこの問題をどう思うか、というところだけを見て編集しています。これをそれぞれの作家がどうとらえるかはもちろん作家の自由ですけど

ひらりんこれも私の経験則なんですが、解く人は作者が思い入れるほどには、解くことに執着しないんですよ。だから、解きやすさに対する心配りというのは、やってやりすぎるということはない。ケータイのクロスワードに話を限ると、もっとあてはまると思います。外出先でやるときなんて言葉を調べる手段がないから、なにかで調べないとわからない言葉はなるべく入れないようにしています

まいなすよんケータイ向きならではの配慮もあるんですね

ひらりんそれと、先ほど、金さんは仕掛けは作者側のこだわりと言いましたけど、私がいう『構想』はその先を目指したいんですよ。パズルを解くプロセスを通じて、その作品の構造を次第に解明していくという楽しみを、解き手に味わってもらいたい。作家だけのこだわりに終わらせたくないんです

(竹)なるほど

(竹)ひらりんさんには『この人の作るクロスワードは好きだ』という作家はいますか?

ひらりんほんとうは自分と似たタイプの作家のクロスワードが解きたいのですが、なかなかいないんですよね

まいなすよんひらりんさんはそういう意味で孤高ですよね。自分と違うタイプで、気になる作家というのはいるんですか?

ひらりん気になるのは、真良碁さんです。ニコリ創刊に近い時期から作家活動をしていることも共通しているので、彼ががんばっているあいだは私もがんばらないといけないなあと感じます。作風もやりたいこともぜんぜん違うんですけど、私の問題をおもしろいねえと評価してくれることもありますし、クロスワードの深い話をしたときなどは、時間を忘れて熱く語りあっちゃいますね

(金)お互いにリスペクトしているんですね

(竹)そういうのっていいですね

まいなすよんボクも、ひらりんさんと真良碁さんはどちらも違った意味でエキスパートという印象があります

ひらりんもうひとり、純粋に問題を解いておもしろいと思う作家は、静山怒さん。この人の問題にはハズレの部分がないんですよ。私はクロスワードを解くときには気に入ったカギに印をつけているんですけど、この人の問題にはいつもいくつも印がつきます。それだけ、個性的なことをやっているのに、全体に無理がないのは見事です

まいなすよんボクは、あるかりさんとか、ヤンマー部隊隊長さん、野中亜紀さんのカギが好きです。ユーモアというか、カギの膨らませかたに特徴を感じます

ひらりん私もあるかりさんには自分と同じテイストを感じるときがあるなあ

まいなすよんその作家のキャラクターが見えてくるんですよ

(金)まいなすよんさんはキャラクター性の濃い人が好きなんですね。私は全体的な完成度が高い作品を求めているので、SEIKOさんのクロスワードがすばらしいと思います。問題として解きやすいんだけど、そのうえで自分の言葉でカギをつけている

(竹)この言葉に対してよくこんなこなれたカギをつけられるなあと思います

ひらりん以前、いつでもクロスワードの問題を送ったとき、編集部の(溝)さんから『ある言葉のカギを都合で変えてほしい』と相談されたことがありました。その際、カギが重ならないように、ほかの作家がすでにつけたカギの一部を作者名は伏せて見せてもらったなかに、ひとつ印象的なものがあったんですよ。うまいなあと。完成した本が届いたとき、本を開ける前に考えたんです。あのカギはクロスワードをメインにしている作家の発想に違いないと。実際に見たら、作者はSEIKOさんでした。SEIKOさんがつけるんなら納得です

(金)ひらりんさんが今までにクロスワードにかけた時間って、たぶん人生の半分くらいありますよね

ひらりんいくらなんでも、それは大げさでしょう

まいなすよんクロスワードを作るためには、そこまで人生をかけなきゃいけないんでしょうか?

(金)そんなことはまったくないですよ。ひらりんさんのようなクロスワードを作るにはそれくらい必要でしょうけど、そこまでやらなくても解いておもしろいクロスワードを作ることはできるはずです

ひらりんさっき名前が出たSEIKOさんも、人づてに聞いた話では、自宅でくつろぎながら、作っているらしいですよ。私も机に向かって集中して作業する時間は限られます。ただ、日常でパズルのネタを意識しているのは確かですね。実は、ペンシルパズル以外から創作意欲を刺激されることも多いんです。最近だと、若島正さんという方がツイッターでつぶやかれている、詰将棋に関する話にハマっています。実に奥深く、刺激的な話が多く、読んだ後にやたらと創作意欲が湧いてくるんですよ。まいなすよんさんはそういうことないですか?

まいなすよん小説を読んでいてかきたてられることはあります。クリエイターとして広く見ると、最近だと、田村ゆかりさんからいちばん影響を受けています

(竹)声優さんですね。どういうところに影響を受けているんですか?

まいなすよん歌とかステージングを見ていて、こういうやりかたでみんなを楽しませようとしているんだ。じゃあボクはどうしよう。と考えると、いろいろ新しいアイディアや意欲が出てきます

(金)なんかカッコイイですね

ひらりんたぶん、狭い世界で考えていると行き詰まっちゃうんですよ。人生生きていると、いろんな刺激を受けている。そういう中で、受けた刺激をどんな形で出せるか。私はクロスワードなんです

(金)すごいなあ。でもちょっと思いが重すぎるよなあ

ひらりんなにも高尚なことを考えているわけではなく、平たく言えば、おもしろいこと、見たことないことがやりたい! というだけのことですけどね。まあ、まいなすよんさんもそうだけど、我々は思い入れが強すぎるのかもしれません

まいなすよんでもボクは、世の中に出るまでに編集の人が手を加えて、解く人が楽しい問題にしてくれると信じているので、重いままぶつけています。作家と編集の信頼関係かなあと

(竹)なんにしても、解く人にはお好きなように解いてほしいなあと思います。さて、今日はありがとうございました。ニコリのクロスワードはこれからもいろいろなところに登場します。これからもおもしろい問題を作ってくださいね


座談会開催 : 2012年7月 2012年9月12日公開

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