パズル作家座談会 第29回

インタビュー作家座談会

ケータイパズル数独を振り返って

ニコリのケータイ専用サイト「ニコリのケータイパズル数独」は、2012年10月末をもって運営を終了します。ここまで続けてこられたのは、会員のみなさんや作家のみなさんのおかげです。ありがとうございました。今回は、ケータイ向けに問題を作ってくださったぽっつさんと中井亮平さんをおよびして、ケータイパズル数独の歩みを振り返ります。おふたりとも作家であると同時に、連日ランキングを楽しんでいる熱心な会員なんですよ。

(竹)今日はケータイパズル数独について話します

中井亮平ケータイパズル数独って、何年前からやってるんですか?

(竹)2007年です。5年以上前ですね。おふたりが会員になったのはいつごろですか?

ぽっつ2008年くらいだったと思います

(竹)おお、古いですね

ぽっつ当時ニコリ事務所に遊びにいったら、たまたまnikoli.comでナンバーリンクをやることが決まったころでした。それで、(金)さんに『ぽっつさんも問題を作ってみない?』と誘われました。ケータイでもそのうちナンバーリンクをやるという話だったので、さっそくケータイの会員になりました。それからはずっと遊んでいます

(金)ナンバーリンクを始めるなら、ぽっつさんは外せないですからね

(竹)中井さんは?

中井亮平ボクは会員としては新しいです。去年の4月か5月くらい。問題を作りはじめたのが先でした

(竹)おふたりともケータイパズル数独でがっつり遊んでいますよね。出版物、nikoli.com、ケータイと分けた場合に、パズルを解いている時間の比率はどのくらいでしょう?

中井亮平ケータイとnikoli.comはほぼ全部の問題を解いています。出版物は最近はあまり解けていないです

ぽっつボクは出版物:nikoli.com:ケータイで1:2:3といったところです。ケータイはほぼ全部解いていますよ

(竹)そんなに遊んでくれていたんですね。今回、運営終了と聞いてどうでした?

ぽっつ死にました。電車の中の楽しみが減って、どうすればいいんだろうと

中井亮平ボクもショックでした

(竹)作家の中では、おふたりがいちばんショック受けていますよね

ぽっつほかにHammyさんもショックを受けていると思います

(竹)Hammyさんもいました。作家の中で、本気で毎日のランキングに挑戦していたのはこの3人ですよね

中井亮平ボクが『きいち』という名義で参加しているということは、どのくらい知られているんでしょうか

(竹)ほとんどの人が知らないと思います。どこにも書いたことはないから

ぽっつボクもかなり長いこと知りませんでした。この早い人誰だろう、Hammyさんを抑えて1位なんてすげえ、って思っていました(笑)

(竹)ケータイパズル数独がらみのできごとをざっと振り返ってみましょう。まず、ケータイパズル数独がスタートしたのは、2007年4月のことでした。当時のデイリーパズルのラインナップは、数独、カックロ、スリザーリンク、ぬりかべ、美術館の5種類。どうしてこの5種類だったんですか?

(金)最初ということで無難なものを選びました。パズルの人気から考えて、数独、カックロ、スリザーリンクは外せません。ぬりかべも当時としては順当な選択だったと思います。美術館だけ、ちょっと冒険だったかな。当時はまだ若いパズルでした

ぽっつ結果論になりますけど、美術館は入れてよかったと思います。紙の上だけでやっていたらあの化け具合はなかったはず

中井亮平へやわけは厳しかったんですか?

(金)人気的には、選択肢としてはアリでした

(竹)会員アンケートでも、へやわけをやってほしいという声は多かったです

(金)当時の狭い画面に、太い線と細い線を区別できるように表示して、そのうえで数字とか印とかを詰めこむと、ごちゃごちゃしてしまうんですよ。それでしかたなくラインナップから外しました。でも今、次に新しいパズルを追加するとしたら、へやわけを選んだかもしれません

中井亮平スリザーリンクのあの操作性はどうだったんでしょう。操作していて『線を引いている』という感覚はあまりないですよね

(金)アプリの開発当初もすったもんだしました。5年前のケータイって、画面が今よりずっと小さかったんですよ。そこでスリザーリンクの画面を表現して、なおかつ十字キーと数字キーだけで遊べるようにする、ということで試行錯誤して、最終的にこの形になりました。今でも正解だったかはわかりません。でも、慣れると早く操作できるでしょ?

中井亮平そうですね。ボクには合っているのか、ケータイだとスリザーリンクと美術館は特に早く解けます

(竹)スタートから半年後に、四角に切れが追加されました

ぽっつどうしてこのチョイスだったんですか?

(金)たまたま別のお仕事で四角に切れを扱ってたんですよ。それでこのパズルならケータイパズル数独でもいけそうだと判断しました

ぽっつ初心者向けとしては正解でしたよね。ルールがわかりやすいので

(金)おかげさまでiPhoneアプリでもはやりました

(竹)翌年、2008年10月に、過去の問題を集めたどっさりパックの第1弾をリリースしました

ぽっつどっさりパックも昔より今のほうがずいぶん進化しましたよね。初期のアプリは、作者の名前すらサイトに見にいかないとわからなかった

中井亮平昔のバージョンの美術館はやりづらかったです。いちばん右端のマスで右ボタンを押しても、左端にカーソルが行かない

(金)あれは、当時はわざとそうしていたんです。カーソルが勝手にワープしてぐるぐる回っちゃうのがイヤだ、という人もいるので

ぽっつ昔の方式には、とにかく押し続ければ端まで移動して止まる、という安心感はありますね

(金)今採用している、押しっぱなしだと端でいったん止まる、そのあともういちど同じ方向のキーを押すとループして向こうの端に飛ぶ、という操作がベストでしょうね。そういう意味ではスタート当時は未熟でした

(竹)2009年3月に、ちょこっと問題のコーナーで波及効果をスタートしました。アプリでなくて、サイト上で遊べるFlashというしくみを使ったんですが、どうでした? ケータイの左ボタンを押すと前の画面に戻ってしまう、外から電話がかかってくると最初から解き直しになっちゃう、といったFlashの仕様上どうしようもない難点も多かったのですが

中井亮平せめて数字キーで数字を直接入れられたらよかったんですけどねえ

(金)アプリにすれば、間違いなく操作性をもっとよくできたでしょう。でも、オトナの事情があって、アプリをひとつ作るのは難しいんですよ。それでも新しいパズルは出したかった。苦渋の選択です

ぽっつ個人的には、ケータイのFlashでここまでできるのには感動しました

(竹)2009年7月、クロスワードの出題スタート。こちらはアプリで出すことができました

ぽっつケータイならではの操作感ですよね。メールを打っているような感覚で入力できて、操作がナチュラルでした。問題の質も高かったと思います。あの作家のメンツはすごい

(金)そうですね。特にひらりんさんとSEIKOさん

ぽっつどこかで『ひらりんさんの9×9クロスワードが解けるのはケータイパズル数独だけ!』と触れ込んでもよかったかも(笑)

(竹)2010年8月に第1回なぞなぞ探しを開催しました。ケータイパズル数独のサイトのあちこちに隠されたなぞなぞを探しだして答えるという、宝探しゲームとなぞなぞを組み合わせたイベントです。不定期で第5回まで続く人気イベントになりました

中井亮平ボクはいちど全問正解して、記念品をもらいました

(竹)そういえばそうでしたね

(金)運営側が気楽に開催できるイベントとしては、いちばん評価が高かったです

ぽっつケータイニコリランドでも、なぞなぞ探し関連のお便りは多かったですよね

(金)今度、nikoli.comでもやってみようか?

(竹)おもしろそうですね。ちょこっと問題でナンバーリンクを始めたのもこのころです。これがケータイパズル数独で最後に追加されたペンシルパズルになりました

(金)これも波及効果と同じくFlashなんだよね

ぽっつ操作性はともかく、問題の質は高かったですよ。自分の人生の中でトップテンに入る問題もいくつかありました

中井亮平ボク自身は、ケータイのおかげでナンバーリンク力が成長しました。以前よりも答えの線が『見える』ようになりました

ぽっつこの問題たちが今後どこにも日の目を見せなくなるのはもったいないなあ

(金)それはナンバーリンクだけじゃありませんよ。どのパズルもこのままなくしてしまうのはもったいない

(竹)なにかの形で外に公開したいところですね

ぽっつ今日は、ケータイパズル数独でいちばん印象に残った問題を選んできました(2009年4月30日出題、あかしょうさん作の四角に切れ)

中井亮平もしかしてあかしょうさんの問題ですか?

(竹)そのとおりです。見ただけでよくわかりますね

中井亮平見た目からして、あかしょうさんらしい問題ですよね

ぽっつボクがケータイでランキングに積極的に参加するようになったターニングポイントの問題です。問題を見た瞬間に、0.5秒くらいで頭の中で全部切れたんですよ。それでランキングで優勝できた

中井亮平いやパッと見では切れないですよこれは

(金)無理ですよね。こっちの可能性もあるし、こっちの可能性もある。ちゃんと理詰めで考えたら、ちゃんと難しいです

(竹)中井さんは、思い出に残った問題はありますか?

中井亮平自分で作ったスリザーリンクの難しい問題(2011年9月28日出題)です。ボクが本気で難しくしようと思って作った、たぶんスリザーリンクでは唯一の問題です。がんばったぶん思い出深いです

(竹)なるほど、たしかにこれは難しい

中井亮平自分の問題以外だと、美術館どっさりパック07のにょろっぴぃさんの問題がすごかったです。ほかにも、ケータイパズルにはいろいろ個性的な問題があっておもしろかったです

(金)美術館は特に個性的な問題が多いですね

ぽっつケータイの10×10だからこそのよさがありますよね。短編小説をいくつも読めるというような

(金)ショート・ショートっぽいよね

ぽっつこんなに波乱に満ちたショート・ショート感は、ほかではあまり出せないと思います。『パズル通信ニコリ』でもなかなか出せない。nikoli.comの長編小説感も、それはそれで味があるんですけど。これが味わえなくなるというのはやっぱりショックだなあ

(金)ただ、小サイズの問題でしかも難しい問題というのは、解けない人には一生解けない問題になりがちなんですよ。大きい問題だと、どこかで手が止まっても、別のカンタンなところから少しずつ進むから気持ち的にラクになります。だから、nikoli.comの小サイズにはサクサク解けるものしか出題していません。出版物のペンシルパズル本も同じ

(竹)ケータイだと、画面の制約でサイズは変えられないから、どうしても難易度で差をつけるしかなかったんですよね。その制約のおかげで、こういう方向性でも楽しんでくれる人がけっこういるんだとわかりました

(金)作家も『ここでしかできないこと』を突き詰めてやっていたと思います

ぽっつパズルは、どんな環境でもそれ相応の進化をする、ということかも?

(竹)作家として、ケータイ向けのパズルということで、ほかのメディア向けに作るときとなにか違いはありましたか?

ぽっつケータイ向けに作るのは楽しかったです。このサイズの中でやれることは最大限やった気がしています

(金)作家には、ケータイはこのサイズしかないので難易度を含めて好きに作ってください、とお願いしていました。そうしたら、みなさんほんとに好きに作って送ってくる(笑)。その中からおもしろいものだけ載せています。こんなサイトはほかにないですよ

ぽっつなくなるのがほんとに寂しい

中井亮平ボクは、ケータイだからと特別に意識しては作っていなかったです。いつもどおり作っていました。ケータイがなくなっても、そのままいつもどおり作り続けるだけです。もちろん会員としては寂しいですけど

(竹)中井さんらしいなあ

ぽっつなんにしても、いい経験をさせてもらいました

(竹)ニコリとしても、実際にやってみて初めてわかったことが多くて、すごく有意義でした

ぽっつせっかくのノウハウなので、なにかの機会に活かしてほしいです

(金)実はすでに活かしていますよ。ニコリのパズルを使ったゲームソフトがいくつか出ていますが、開発時に開発会社の人に『ここはこういう操作のほうがいいですよ』というような話を自信をもってできます

ぽっつそういう形で活きているのはうれしいです

(竹)ケータイサイトとしてのケータイパズル数独は終わってしまいますが、そこで生まれた独特の世界はきっとどこかに引き継がれることと思います。そのときはまたよろしくお願いします。ありがとうございました


座談会開催 : 2012年9月 2012年10月11日公開

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