パズル作家座談会 第30回

インタビュー作家座談会

へやわけについて思うこと

nikoli.comの問題を作っている作家さんをおよびして、あれこれおしゃべりするパズル作家座談会のコーナーです。今回の話題は、へやわけについて。へやわけの創始者・福嶋啓之さんと、一時期のへやわけ界を支えたといっても過言ではないおらけさんに集まっていただきました。ニコリスタッフからは、いつものように(金)と(竹)が参加しています。

(竹)今日はへやわけについて話しましょう

おらけボクと(竹)は『へやわけマン』で対談したこともありましたね

(竹)そうですね。2005年に発行された本なので、もう7年前のことです。当時はボクは一読者で『にゃんこばずうか』というペンネームを使っていました

(金)もう絶版になっている本ですね。nikoli.com会員の中にも、読んでない方が多いでしょう

(竹)一方、福嶋さんは2010年発行の『へやわけ丸』にインタビュー記事が載りましたよね

福嶋啓之ええ

(竹)当時からニコリにはへやわけのほかにもいろいろなパズルがありました。それに、その後も新しいパズルがどんどん生まれ続けています。そんな中で、おふたりのパズル全体に対するへやわけの位置づけはどんな感じですか?

おらけいちばん好きなパズルでしたし、今もそうです

(金)最初から今までずっといちばん?

おらけへやわけを好きになってからは、そうです。16年連続1位、くらいですかね(笑)

福嶋啓之僕は、そこまでではないかなあ。でも、nikoli.comだとまずへやわけの問題を全部片づけてからほかのパズルを解くから、なんだかんだいって好きなんでしょう。へやわけがいちばん楽に解けるんですよ

(竹)へやわけの、ほかのパズルにない魅力ってなんでしょうね。ボクは昔からルールが人工的なところがいいと思っているんですが

(金)(竹)はずっとそう言っているよね

福嶋啓之創始者としては、あのルールは人工的でなく自然な発想なんですよ。白マスの3部屋連続禁止のルールも、黒マスを隅っこから中のほうに呼び込みたいと考えると自然に出てくるルールです。このルールを使わないで問題を作ってみたらわかると思います

(竹)黒マスを効果的に生み出すためには自然な発想、ということですね

おらけボクにとっては、新しい手筋を開発する喜びがあるところが魅力でした

(金)へやわけって、誕生した当時の段階だと解きかたのバリエーションが少なかったよね。難しい問題だと、黒マスだと仮定したらルール違反になってしまうからここは白マスだ、という仮定を使わせる問題が多かった

おらけ数字を使わずに、盤面の分断禁止ルールと白マスの3部屋連続禁止のルールだけで解かせる問題ばかりでした

(竹)それはそれで楽しいんですけどね。慣れるとサクサク解きすすめられるから

福嶋啓之僕は今でもよく使いたくなります

おらけ数字は解き始めの入り口で使われているだけ、という感じでしたよね。難しい方向で数字をフィーチャーしようという動きがなかった

(金)そこで数字の多いへやわけを始めたのがおらけさん

おらけただ、最初に世の中に出た、もともと福嶋さんが作ったへやわけには、すべての部屋に数字が入っていたんですよ。数字のない部屋が許されるようになったのは、あとになってから。不思議ですよね

福嶋啓之あれは単に、当時の僕に『数字を減らす』という発想がなかっただけ。数字がない部屋がある問題を初めて見たときはショックでした

おらけ数字のない部屋が出てきたことで、数字が少ないほうが難しくなっていい、という風潮になってしまったんです。けど、自分でいろいろやるうちに、数字をうまく利用したほうが新しいことができることがわかった

(竹)そういう問題が載りはじめたのが、本誌(ニコリの季刊誌『パズル通信ニコリ』のこと)でいうと66号あたり。『おらけの時代』の始まりですね

おらけそのあと、(竹)がジャイアントサイズでうまく見せる方向を出してきた『にゃんこばずうかの時代』が来た。『へやわけマン』のころ。それからあとのへやわけは、どういう流れなのかな

(竹)そのあとというと、ちょうどnikoli.comが始まったころですね。へやわけマンが2005年で、nikoli.comが始まったのが2006年なので

おらけnikoli.comはそれまでの流れを変えちゃったよね

福嶋啓之nikoli.comのへやわけと本誌のへやわけだと、なんか違いますよね

(金)なにが違うんでしょうね?

おらけnikoli.comのほうが、よくも悪くも冒険している問題が多い気がします

福嶋啓之とんがった問題もよく載りますからね

(竹)といっても、nikoli.comでも本誌で載せられないような解きかたを使う問題は出題されないんですけどね

おらけ今は流れや流行といったものを意識しないで作っている作家が多いし、それでいいと思っています。今のへやわけには、一発ネタというか、あとから似た趣向の問題を作りにくいネタが多いですよね。だから、誰々の時代といういいかたはできない。しいていうなら今のへやわけは『戦国時代』かな

福嶋啓之へやわけ乱世の時代ですか。でも、きちんとはやらせようとする人がいれば、今でも流行は作れると思いますよ。解きかたにネーミングをつけたりして

(金)へやわけ以外だと、アスピリンさんの美術館のような例もありますからね

おらけでも、へやわけでひとつの方向で勝負するのは難しいでしょう。たとえば、339さんの問題は単発で見たら全部おもしろい。どれも今までにない考えかたです。すごくおもしろい。でも、だからといって今『339の時代』かというと、そうじゃない

福嶋啓之誰も彼についていけないから?

おらけというより、個々の問題でネタとしてのインパクトが強すぎて、あとから別の人が似たことをやろうとすると、ほとんど同じ問題になってしまう。だから作れないんです

福嶋啓之たしかに彼の問題はインパクトがあると思うけど、それでもうまくバラして、ほかの問題に応用する余地はあると思います

おらけ流れにはなってないですけど、最近、広い部屋に数字のぶんだけ黒マスを発生させて、残りのマスを全部白マスにしてそこから広げていく、という展開を多用する人たちがいますよね

(竹)たとえば裄紘さんですね。紙の出版物だと半袖愛好会の男さんもよく使っています

おらけ個人的には、あの仕掛けを3マス×3マス以上の大きなサイズの部屋で使うのはあんまり好きじゃないんです

(金)ちょっともったいない感じはしますね

おらけでも、やっている人がそれなりにいるということは、おもしろいと思う人もそれなりにいるんでしょう。nikoli.comでへやわけの懐が広くなって、いろんなことにチャレンジできるようになったんだと思います。ボク自身もnikoli.comを始めて作る幅が広がりました。以前は、3マス×3マスに『5』が入った部屋を小さいサイズの問題で使うのはイヤでした。あの仕掛けひとつで、周囲を含めて合計21マスもの黒白が確定してしまう。10マス×10マスの問題だと2割解き終わってしまうんですよ

福嶋啓之昔、どこかでそういう意見を見かけたことがあります。僕はそれを見てむしろ、逆にいっぱい使うような問題を作りましたけど(笑)

おらけ紙の上で解く場合、マスをぬるのに力を使うからもったいなく感じてしまうんです。でも、nikoli.comだとマウスのドラッグで一気にぬれるから、そこまで感じない

(竹)なるほど。インタフェースの違いで解きかたの印象まで変わるんですね

(竹)nikoli.comの逸品館で選ばれたへやわけ作品を調べてみたんですが、おふたりの問題はあわせて7問も選ばれているんですよ。今日は資料ということで印刷してきました

福嶋啓之ああ、この問題(2008年6月の問題)は覚えています。数字が入っているのが1マス×3マスの部屋だけで、しかも全部『2』。おらけさんに『これは古いタイプの問題だ』って言われました(笑)

(金)たしかに、オールドスタイルといえるかも

福嶋啓之僕はこういうのが好きなんですよ

(竹)実際、好きな人がたくさんいたから逸品館に選ばれたんでしょう

おらけ15年くらい前の問題…いや15年じゃ足りないかな。小鳥遊慧悟さんたちが活躍していた時代の雰囲気ですよね。これが選ばれたのを見て、『歴史は繰り返す』というのはホントなんだなあと思いました

(金)2007年12月のおらけさんの問題は、やっぱり数字が多いですね

おらけいわれてみれば多いですね。自分では意識して数字を多くしているわけじゃないんですけど

(金)数字を使って解く人を誘導しようという気が満々なんでしょうね。でも、おらけさんには珍しい見た目にこだわった問題も選ばれていますね

(竹)2009年12月の問題ですね

おらけ逸品館に選ばれておきながらなんなんですが、これはおらけらしくない(笑)

(金)パッと見はぽっつさんが作りそうな問題ですよね

福嶋啓之僕の好きなタイプの問題です

おらけボクらしくはないけど、アピールはできたとは思います。こういう方向の制約でも、おらけが作るとこういう問題になるんだ、という。逸品館全体でいうと、一発ネタの問題が選ばれやすいですよね。そんな中で、2011年6月の問題みたいなものが選ばれるというのは単純にうれしいです

(竹)今注目している作家は誰ですか?

おらけCastyさんです。彼のへやわけは、ふつうに解いていておもしろい。へやわけに限らず、どのパズルも平均して90点以上の問題を作る優等生だと思います

福嶋啓之彼の問題はサクサク解けますよね

おらけ流されるままに解けばそれで気持ちいいから、肩の力を抜いて解けます。癒し系。問題を開いて、作者名にCastyとあったらとりあえず安心します

福嶋啓之僕も彼の問題は評価しています。でも、たとえば『作家MVP』を決める投票があるとしたら、僕はCastyさんよりもGutenさんに投票するかも

おらけMVPだとそうかもしれないけど、たとえばプロ野球の『ベストナイン』的な賞だったらCastyさんが9人選ばれるかも。彼については、彼自身があまり人前に出てこないことが残念です。実際に会って、面と向かって褒めちぎりたいんですけど(笑)

(金)なるほど。じゃあ、いつかCastyさんとおらけさんによる座談会を開くとおもしろそうですね

福嶋啓之いいなあ。僕も参加してみたい

おらけCastyさんと対照的なのは、さっきも名前を出した339さん。彼のへやわけはすごいと思うけど、彼にはライバル意識があるから褒めたくはない。どちらかというと張り合いたい気持ちのほうが大きいです。あっちもこっちを意識していると思います

(金)そういう関係はいいですよね。ただ、彼もおらけさんも寡作で、あまりnikoli.com上に名前が出てこないのがちょっと残念

(竹)おふたりのへやわけ、もっと解きたいです。さて、最後にへやわけについてなにか一言ずつお願いします

おらけへやわけはほんとにおもしろいパズルです。さっきも言ったとおり、ずっといちばん好きなパズルなので、これからも楽しくつきあっていきます

福嶋啓之最近ニコリ関係の集まりによく参加するようになったんですけど、そのときにぜんぜん知らない人から『へやわけ好きです』って声をかけられることがあるんですよ

おらけ福嶋さんがいなかったら、へやわけは生まれていなかったですからね

福嶋啓之褒めてくださる方、ほんとうにありがとうございます。へやわけは自分の子どものような存在です。実際の子どもはまだいないんですけど(笑)

(竹)今日はありがとうございました


座談会開催 : 2012年10月 2012年11月12日公開

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