パズル作家座談会 第31回

インタビュー作家座談会

ましゅの魅力に迫ってみる

nikoli.comの問題を作っている作家と語り合うパズル作家座談会のコーナーです。今回のテーマは、ましゅについて。ゲストはGutenさんとぺんしるろけっとさん。ニコリスタッフからは、いつものように(金)と(竹)が参加しています。

(竹)今日のお題はましゅです。nikoli.comのましゅの問題で名前をよくお見かけするふたりをおよびしました

Gutenそもそも『パズル通信ニコリ』向けに問題を作って載ったのは、オモパ(新しいペンシルパズルのルールをみんなで考える「オモロパズルのできるまで」というコーナーで生まれたパズル)以外だとましゅが初めてなんですよ。ましゅがきっかけで、オモパ以外の投稿を始めたといってもいいかもしれません

ぺんしるろけっといっしょですね。僕もましゅから入りました。僕が作りはじめたころはまだ白真珠黒真珠という名前でしたけど

Gutenオモパ作家を目指していて挫折して、ましゅなら作れそうだと思って投稿したら、2回連続で載りました。それで調子に乗りました。でも、それ以来『ニコリ』には自分のましゅは載っていないです(笑)

(金)もともと、掲載の競争率が高いパズルですからね

Guten初心者でもそこそこの完成度のものが作りやすいパズルだと思います。ほかのパズルだと、ベテランのほうが完成度が高いものを作りやすいものがけっこうありますよね

(金)たとえばカックロはそうでしょう。ましゅに限らず、最近のオモパ出身のパズルは、ベテランじゃなくても完成度の高い問題をじょうずに作れるのが多そうです。ヤジリンもそうですね

(竹)最初に作るパズルとしてましゅを選んだのも、作りやすそうだったのが理由ですか?

Gutenええ。このパズルなら作れそうだと思いました。見た感じが、カンタンに作れそうじゃないですか

ぺんしるろけっと記号が2種類しかないですからね

(竹)とりあえず置いてみる、ということが気軽にできますよね

ぺんしるろけっとでも、僕は当時カンタンそうだという感覚はなかったです。作ろうと思い立ったときたまたま『ニコリ』でましゅの特集が予定されていて、特集ならいっぱい問題が載るだろうから載りやすそうだと思って作りました。まだパズルをそんなにやっていなかったころで、作りやすそう、作りにくそう、という感覚もありませんでした

(竹)なんだか運命的な出会いですね。今現在の思い入れとしてはどうですか?

Guten今でもいちばん気楽に作れるパズルです。解くのも得意です

ぺんしるろけっと僕もそうです。ましゅは作っていて楽しいです

(竹)どういうところがいいんですか?

Gutenルールがすんなり頭に入ってくるところです。黒丸と白丸のルールが、ちょうど反対の関係。「必ず両方まっすぐ」の反対が「少なくともどっちかが曲がる」で、「丸のところで曲がる」の反対が「丸のところでまっすぐ」です

(金)すんなり入るかなあ

ぺんしるろけっと直角に曲がるのと直進するのとが反対だというのはわかりますけど、ほかの部分って人工的な感じがしませんか?

Guten人工的なんだけど、理には適っていると思います。ましゅを、単純に「丸いところに線を引く」パズルからちょっとルールを広げたパズル、だと考えたときに、白丸も黒丸も同じように解きかたの幅を広げているイメージがあります。これがたとえば、白黒以外に丸があって3種類になると複雑になるだろうし、たとえば丸から3マス以上離れたマスまで影響するルールだとすると考えにくくなる。ちょうどバランスがいいルールだと思います

(金)でも「少なくとも片方が~」というルールは、ましゅをまったく知らない人にルールを教えるときにはネックになるんですよ。このルールのおかげでおもしろい問題が作れるというのはそのとおりなんだけど、問題を作る側に有利なルールという気がしてしまいます

ぺんしるろけっと実際作ってみて、作りやすいなという印象はありました。「解くように作る」ということがやりやすいです。確かに作者側に有利かもしれません

(竹)なるほど

ぺんしるろけっとnikoli.comの「この問題を解いた人」のコメントを見て、ずっと気になっていたことがあるんです。答えの線が盤面のすべてのマスを通過しているどうか、を気にされている人がいますよね

Gutenよく見かけますね

ぺんしるろけっとあれって、作者として意識していますか? 実は僕は、狙って全マスを通そうとしたことはないんです。ただ僕の場合は、線で細い道のような隙間を作って最後にそこを通す、という展開が好きなので、結果として線が通るマスが多くなりがちなんですけど

Guten私も最初から狙ったことは1回もないです。ただ、作っている途中で全マス通れそうだと思ったら通すことはあります。そうすると「全マス通る問題だ」というコメントをいただけるんですよ

(金)作るほうはあまり気にしていないのに、解くほうでは意識している方がいるということですね。編集で問題を選定する際には、まったく気にしていません

(竹)おもしろく解けるかどうかとは関係ありませんからね

Guten見た目がらみでいえば、ましゅの大きい盤面では、丸の配置できれいな模様を入れたくなることも多いです。自由に作れるパズルなのでやりやすいです

ぺんしるろけっと見た目を気にすることは僕もよくあります。ましゅの場合、黒丸に対して、白丸って無視できるレベルで見た目が薄いですよね。だから、見た目を工夫する場合は、黒丸の配置に気をつけて、白丸で解く楽しさを調整するようにしています。黒丸の目立つところだけキレイなら、ほかのところの見た目はなんとかなります。解き味をあまり損なわずに見た目重視にできるパズルだと思います。先日、大学祭のパズル同好会の出し物として、黒丸で大きく文字を書いたデカビロサイズのましゅを3人がかりで作りました

Gutenすごいなあ。確かに、そういうことができるのはましゅだけかもしれません

(金)ただ、編集としてはあくまで解いたときのおもしろさだけを見ています。どんなに見た目がよくても、そのためにおもしろさが犠牲になっていたら使われないはずです

(竹)そうですね。みなさんそのあたりを理解したうえでいろいろチャレンジされているんでしょうけど

Gutenぺんしるろけっとさんは、ましゅで好きな解きかたのパターンというのはありますか?

ぺんしるろけっとあります。白丸の両隣に線が伸びてきて、それらの線と違う向きに白丸の線が引かれるパターン

ましゅで好きな解きかたのパターン

(竹)どうして好きなんですか?

ぺんしるろけっとなぜだかよくわからないけど、とにかくこれが出てきたら気持ちいいです

Gutenわかります。2回手間がかかるのがいいのかなあ

(竹)逆に、Gutenさんが好きなのは?

Gutenうーん、私もぺんしるろけっとさんの挙げたものがいちばんかもしれません。ほかだと、線でできたコの字のようなくぼみと、そこから2マス離れた黒丸があって、くぼみに線が入らないように逆方向に線を伸ばすパターンが好きです

ましゅで好きな解きかたのパターン2

 なんで好きかって聞かれると、やっぱり気持ちいいからとしかいえないんですけど。嫌いなパターンはありますか?

ぺんしるろけっと黒丸を2×2の形に4つ並べたパターンです

(金)影響範囲が大きいから?

ぺんしるろけっとそれもあるんですけど、全方向に同じ形の線ができるじゃないですか。作っていて、使いにくいんです。解きかたがイヤなわけじゃなくて、決まったあとの形がおもしろくないんです

Guten私が嫌いなのは、黒丸がもしこっちに伸びたら、白丸につながって白丸の両隣が直進してしまうからこっちだ、という手筋です

ましゅで嫌いな解きかたのパターン

 線が通らないところに印をつけていっても解けないから、気づきにくいじゃないですか

ぺんしるろけっと僕は嫌いじゃないです。よく使いますよ。さっきの「くぼみに線が伸びないからこっち」というのとあんまり変わらない気がするなあ

(竹)そうですね

Guten私も、自分ではなるべく使わないようにしているくらいで、他人が使っているのは気にならないです。改めて考えてみたら、ましゅではほかのパズルほどパターンを意識して作っていないですね。その場その場で、おもしろい流れになるように作っていることが多いです

ぺんしるろけっと僕もそうです。全体の流れをいちばん気にして作っています

(金)ましゅって、スリザーリンクの「定理」のような考えかたが確立しにくいんですよ。スリザーリンクだと、たとえば0と3だけ取り出して、そこのまわりの線の通りかたを「定理」として説明できるんですけど、ましゅはそういう個別の例をパターンとして抜き出しにくい

ぺんしるろけっと黒丸と白丸の配置だけでなく、まわりの線とのからみで決まることが多いですからね

Guten「定理」のバリエーションはどうしても少なく見えますね

(金)実際少ないですよ。記号が2種類しかないから

Gutenそれで、たくさん解いても同じような問題を解いているような気分にはならないからおもしろい

(金)「定理」のバリエーションは少ないけれど、展開のバリエーションがたくさんあるということでしょう

Guten作家が、個々の部分の解きかたより流れの気持ちよさを優先して作るのも、あながち間違っていないんですね

(金)ましゅに限らず、作家はどのパズルも自分の基準で気持ちよさを目指して作っているんだと思います。ただ、ましゅは特に、作者の「気持ちよくなるように作ろう」という感覚がストレートに解く人に伝わりやすいパズルなのかもしれません

(竹)これからのましゅも同じでしょうか?

Guten変わらない気がします。はやりすたりも聞かないですよね。個別にいえば、アスピリンさんが「どっちにしても線がつながるから~」という解きかたを使った問題を作ったりしていますけど、あくまで個人の芸風だと思います

ぺんしるろけっと新しい解きかたはこれからもあまり出てきそうにないですよね。展開として新しいものはこれからも出てくるでしょうけど、それはその問題だけの個性で。ほかの人がやろうとすると、もとの問題と同じような問題にしかならないと思います

(金)「気持ちいい」という基準って、作家ごとに違うでしょうし、同じひとりの作家でも作るときによって違ってくることもあると思います。作る人の「気持ちいい」という感覚がストレートに出るパズルだとすると、それだけいろいろな「気持ちいいましゅ」があるということでしょう

Gutenましゅといえばこの作家、というのがパッと思いつかないのも、そういう理由なのかもしれませんね

(竹)そこがましゅというパズルの魅力でしょうか。ぜひこれからもいろいろな「気持ちいいましゅ」を楽しんでいきましょう


座談会開催 : 2012年11月 2013年1月24日公開

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