パズル作家座談会 第32回

インタビュー作家座談会

ブルドーザーな作家たち

パズル作家をお呼びしてあれこれお話するパズル作家座談会のコーナーです。本日のゲストはあいこさん戦く小野君さん。ニコリからはいつものように(金)(竹)が参加しました。どんな話題が飛び出すのでしょうか。

(竹)今日はあいこさんと小野さんをお呼びしています。おふたりは初対面ですか?

あいこたぶん、そうです。『パズル通信ニコリ』などでよくお名前は見かけていますけど

戦く小野君あいこさんもたくさん問題が載っていますよね。nikoli.comにも本にも

(竹)お互いにお名前は意識されていたんですね。実は、今回は過去のインタビューを参考にしてゲストをお選びしました。おふたりともインタビューで控えめな発言が多かったんです。自分の問題を「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」と評したり、自分の問題が本に掲載されても偽物の本だと思ったり。nikoli.comの作家の中では珍しいタイプだなと思いまして。自覚はありますか?

あいこええ。自分でも控えめだなあと思います

(金)小野さんは言動は控えめだけど、問題の作風は控えめじゃないですよね。突き抜けているなと感じる問題をよく見ます

戦く小野君ええっ、そうなんですか? 自分ではオーソドックスな問題を作っていたつもりなんですが

(竹)あいこさんの作る問題はオーソドックスですよね。小野さんは、自分の問題とあいこさんの問題が似ていると思います?

戦く小野君似てはいないですけど…え、自分ほんとにオーソドックスじゃないですか? 言われてびっくりです

(金)あいこさんは意図的にオーソドックスに作っているんですか?

あいこ意図的というより、自分が気持ちよくすーっと解ける問題を目指して作るとあんな感じになるんです。私自身、パズルを解くのがあまり得意じゃありません。そういう自分が気持ちいい問題を作るとああなります。ときどき難しい仕掛けを入れたりもするんですけど、その場合も自分が気持ちいいと思う仕掛けを使っています

(竹)小野さんも自分が気持ちいい問題を目指しているんですか?

戦く小野君あんまり考えたことはありません。解くときはとんがった問題が好きですけど、作るときにとんがろうと思うことはありません。とりあえず完成すればいいかな、という気持ちで作っています。おもしろいかどうかは、編集で判断してくれるからいいかなって

(金)そういう考えで問題を作ると、だいたいの人は失敗してボツになってしまうんですけどね。そうならないということは、センスがあるんでしょうね

戦く小野君そうだといいんですけど。ああでも、うまい人の「技を盗む」ことはしています。他人の問題で使われている解きかたを手元にメモしておいて、あとで問題を作るときにそのメモをチェックする、というようなことをします

(竹)へええ。わざわざメモまで取っているんですか

(金)真面目な性格なんですね

戦く小野君そうなのかなあ。作るとき、なにか手がかりがないと手が進まないんですよ。理詰めじゃなくフィーリングでなにかやる、ということが苦手なんでしょう。特に、サイズの大きな問題を作るときは、事前にいろいろリサーチしています。最近出題されている問題を解いて、最近はやりの仕掛けはなにかとか、この問題の数字の配置はおもしろいとか

あいこ私もそれは気にしています。nikoli.comの解いた人のコメントはいいですよね。あれを読むと、解く人がどういうところを見ておもしろいと思っているのかわかるから。コメントで褒められている仕掛けは自分の問題でも使ってみたくなります

(竹)ふたりとも研究熱心なんですね

(竹)座談会の「とんがった作家たち」の回で、問題の個性について話しました。おふたりは、自分の作品の個性について考えたことはありますか?

戦く小野君自分はまったく考えません

あいこ私の問題には、個性はないと思っています。ありますかね? スラスラ解けたらいいなあと思って作っているから、それが個性といえば個性かなあ。数独なんかも、1から順に入れていって、ひととおり進めたら解き終わるような問題をよく作ります

(金)おもしろいですよね

あいこ嫌っている人も多そうですけど。でも、私みたいに解くのが苦手な人が解いたら、気持ちいいんです

(竹)「あいこさんの問題」と聞くと、気持ちいいとか、サラサラ解ける、といったことが思い浮かびます。そういう意味でれっきとした個性といえるんじゃないかなあ。小野さんの問題にも、個性はあると思いますよ

(金)小野さんの問題には、見た目がなんとなくヘンなものが多いですよね

戦く小野君たしかに、見た目を点対称になるように作らなくていいパズルだったら、点対称じゃないように作ってはいます。でもヘンなのかなあ?

(金)ほかの作家の問題と違いますよね。どことなく

戦く小野君そうですか。自分ではあくまでフツーの問題だと思っているんですけど。どうなんですかねえ?

(竹)結果としては、個性的になっていると思いますよ。おふたりとも自分では自覚がないところがおもしろいですね。おふたりから見て、注目している作家はいますか?

戦く小野君冒険している作家、たとえば339さんアスピリンさんには注目しています

あいこそうですね。同じです。ほかに、Gutenさん、湾狼子さんも新しいことをしていますよね

(竹)湾狼子さんはnikoli.com作家としては最近加わられた方です。nikoli.comではまだ出題数が少ないですが、本に載っている問題を見ると冒険作が多いですね

あいこ美術館なんて、私なんかはもうあらかた出尽くしているんじゃないかと思ってしまうんです。でもみなさん、なんでこんなこと思いつくんだろうということを出してくる

戦く小野君新しい仕掛けを発見している人はすごいですよ。自分はそこから使えそうなものを問題に取り入れればいいかなと思っています

(竹)「自分もそうなりたい」というわけではないんですね

戦く小野君はい。なりたいとはあんまり思っていないです

あいこ新しいことを思いつけばかっこいいなあとは思いますけど、なかなか難しいですよね。私も、自分では新しいものを生み出せていないです。たとえば美術館を一から研究して、こういう解きかたを見つけたぞ! というようなことがなかなかできません

(金)ふつうはあまりできませんよ。オモパ(『パズル通信ニコリ』で連載されている、新しいペンシルパズルのルールをみんなで考えるコーナーで生まれたパズル)の投稿をしたことはありますか?

あいこ1、2回投稿したことはあるんですが、ボツでした。たぶんうまくなかったんでしょう

戦く小野君自分は新しいものはまったく投稿したことがありません

(金)新しいものを生み出すより、今あるパズルをブラッシュアップしていくほうが好きなのかな?

戦く小野君そうですね

あいこさっき名前が挙がったみなさんの問題で新しい仕掛けや解きかたを知って、それが自分にとって気持ちよければ使わせてもらう、という感じです

(金)パズルの世界にも、新しい土地を切り開くパイオニアと、そのあとの地ならしをする人がいる、ということでしょうね。開かれたあとをブルドーザーで地ならしをしていく作家さんがいるんでしょう

戦く小野君そうかもしれません

(竹)なるほど、おふたりは「ブルドーザーな作家」というわけですね

(金)ほかに、Castyさんもそうかもしれません。新しいことを積極的にやるタイプの作家ではないから

あいこわりと自分と近いほうの作家かなと思っています。あちらのほうがたくさん問題を作っていますけどね

戦く小野君たしかに、あいこさんとCastyさんは似た感じがします。どちらもオーソドックスな問題だし、たくさん問題を作っているし。そういえば、ぜひあいこさんに聞きたいことがあったんだった。あいこさんはたくさん問題を作り続けていますが、マンネリを感じたことはないですか?

あいこありますよ。感じるけど作ります。マンネリでもいいじゃないかって作っちゃいます

(竹)打破しようとするわけでもなく?

あいこはい。自分の中で義務に近い気持ちを課して作ることもあります

戦く小野君自分はマンネリを感じちゃうと進まなくなっちゃうんです。作っている途中で、自分の問題に対して、またこの配置かあ、とか、またこの数字並びかあ、とか、感じてしまう。そうすると、これはやったし、あれもやったし、となって、どうしていいかわからなくなる

(金)そういうときは、あれとこれを組み合わせてみよう、とやってみると新しいものができるかもしれません

あいこそもそも、本にしろnikoli.comにしろ、自分の問題だけがずらっと並ぶわけじゃないですよね。何人もの作家の問題が並ぶんだから、自分の問題が少しくらい似ていてもいいんじゃないかと思っています

(金)作者本人が飽きちゃうほどには、まわりはその傾向に飽きていないでしょうね

戦く小野君なるほど

(竹)でも、マンネリを感じたから問題を作れなくなるというのは、根が真面目な証拠かもしれませんね。ボクにはない感覚だなあ

あいこ私も少しは気にして、たとえばとんがったりしたほうがいいんですかね?

(金)無理はしなくていいですよ。自然体で作ってもらうのがいちばんだと思います

戦く小野君そうですね。新しいことはパイオニアに任せましょう。彼らにはどんどん問題を作ってほしいです

(金)パイオニアが土地を作ってくれないと、ブルドーザーは活躍できませんからね

戦く小野君すごく他人任せになっちゃってすみません(笑)

(竹)そんなことないですよ。パイオニアもブルドーザーもいるからこそ、おもしろい世界ができているんだと思います。おふたりとも、ブルドーザー作家としてこれからも長く活躍し続けてくださいね


座談会開催 : 2013年2月 2013年3月11日公開

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