パズル作家座談会 第33回

インタビュー作家座談会

ナンバーリンクに込められたもの

nikoli.comの問題を作っているパズル作家と、特定のテーマについてお話する座談会のコーナーです。今回のテーマはナンバーリンク。ナンバーリンクの問題をたくさん作っているにょろっぴぃさんぽっつさんをゲストにおよびしました。nikoli.comスタッフからは(金)と(竹)が参加しましたよ。

(竹)今日はナンバーリンクに対して熱い思いをお持ちであろうおふたりをおよびしました。実際、どのくらいナンバーリンクが好きですか?

ぽっつお風呂のタイルを眺めていたら自然に線が引けているくらい好きです。好きというより、生活の一部です。ほかのパズルに対してはそういう感覚はありません

にょろっぴぃぼくはそこまでではないなあ。ただ、いろいろなパズルの中で、ひとつだけほかとぜんぜん違うことができるパズル、という意味で特別な存在です。作るとき、理詰めで解くことを必ずしも意識しなくていいというところがおもしろいです

(竹)にょろっぴぃさんは、パズルをやり始めてすぐにナンバーリンクを好きになったんですか?

にょろっぴぃわりと初期でした。ニコリの買い始めのころって、難しい問題はほとんど解けないじゃないですか。スリザーリンクなんて、最初にやったときは2問めでもう行きづまりました。でも、ナンバーリンクだと難しい問題でもカンがよければ解けてしまう。これならできるかも、という気持ちになりました

(竹)まったくの初心者でも、試しに引いたり消したりしていくうちに解けたりしますからね

にょろっぴぃできるから作るようになって、作っているうちにだんだんおもしろくなってきて、今に至ります。改めて見ると、昔は酷い問題を投稿していましたよ。掲載サイズと違うサイズで作ったり、パッと見でわかるような関西解(線がショートカットしてつながってしまう答え)があったり。関西解を防ぐ方法がわかってなかったんですね

(金)最初はわかりませんよね。作り慣れてくると、関西解が出るパターンがたくさんわかってくるんですが

(竹)ぽっつさんも最初は関西解を出していました?

ぽっつさいわい、ほぼなかったです。けっこうちゃんと地道にチェックしていましたし。『パズル・ザ・ジャイアント』向けの問題を作るときなんて、昔は2日くらいで問題を作ったあと、1カ月くらいひたすらチェックしていました

(竹)当時はコンピュータの力も借りられなかったから、今より大変だったでしょうね

(金)ぽっつさんから問題の原稿を渡されるときに「このへんのつなぎかたが怪しいような気がしなくもないけど、たぶんひととおりの答えになっているはず。もし関西解があったらごめんねえ」と渡されたことがあったなあ

ぽっつあったあった。まあ、ナンバーリンク作りには関西解がつきものなんですよ。だから、作家としては関西解とうまくつきあっていくのがポイント。関西解を何度も出していくうちに、作り手として成長することもあります

(竹)言うまでもありませんが、関西解のあるナンバーリンクは実際には出題されません。関西解に気を配らなければいけないのは、ナンバーリンクならではの苦労ですよね。逆に、ナンバーリンクならではのいいところ、醍醐味ってなんでしょう?

ぽっつ解く立場からすると、いつ解いてもいいや、という気楽さがあると思います。ほかのパズル、たとえばカックロだと、解き進める「流れ」がありますよね。だから、カックロだと途中でやめてあとからその続きを解く、ということがやりにくいです

(金)気楽といえば、ナンバーリンクって、解けなくてもあまり頭に来ませんよね。カックロだとなかなか解けないと「自分に解けないはずがない!」なんて焦ってしまうんだけど、ナンバーリンクだと今日はたまたま調子悪いんだ、くらいで納得してしまいます

にょろっぴぃ目で見てわかるタイプのパズルで、理屈じゃないところがありますからね

ぽっつ一方で、正しい線の引きかたに気づいたときの快感は、ほかのパズルと比較にならないと思います。「ああ、線をこう通すのか!」という驚きです

(金)そういう人もいるだろうね

(竹)比較にならないというより、快感の性質が違うのかな。解く立場でなく、作る立場での醍醐味はどこでしょう?

ぽっつチェックして、正解がひとつしかない、とわかった瞬間の感動です。この感動は、ほかのパズルでは味わえません

(竹)最近は、正解がひとつかどうか調べるときに、コンピュータの力も借りられるようになってきましたね

ぽっつなりましたけど、作家はあまり頼ったらダメですよ。まず自分の手で何回もチェックしてから、自信をもってコンピュータに通さないと

(竹)ぽっつさんは手だけでチェックしているんですか?

ぽっつ基本的にはそうです。手でしっかりチェックしたあと、いちおうコンピュータにも調べさせていますけど、関西解が出ることは9割方ありません

にょろっぴぃそれはすばらしい。でも、コンピュータでチェックしやすくなったおかげで、自分でチェックしてもなかなか関西解に気づけないような数字配置の問題を気軽に作れるようになった面はあると思います。たとえば数字の個数が少ない問題とか、数字どうしが密集していない問題とか

ぽっつ数字の個数が少ないナンバーリンクは、ボクは昔から作っていますよ

(竹)そういえば、逸品館のぽっつさんのナンバーリンクに、数字が4までしかない問題がありますね(2010年10月投票締め切り分)

ぽっつただ、数字が少ない問題がいい問題というわけでもないんですよ。むしろ、数字を減らしすぎるとパズル的におもしろくなくなることのほうが多いです

にょろっぴぃわかります。線が通るパターンが限定されてしまいますよね

(金)見た目のインパクトはあるんですけどね

ぽっつ数字が少ないと、線のパターンが限られていたり、結果的に小さいサイズの問題を引きのばしただけのような作品ができてしまったり、ということが少なくありません。引きのばしただけだと、大きいサイズの問題なのに、小さいサイズの問題と数学的に同じものになってしまいます

(竹)それはもったいないですね。先ほど「パズル的なおもしろさ」という言葉が出ました。具体的には、どんなところがナンパーリンクのおもしろさだと考えていますか?

ぽっつ解く人の考えをいい意味で「裏切る」ところ、かな。たとえば1が近くに2つあって、こうつなぐか、それとも遠回りしてこうつなぐか、と悩んだ末に引いたら、実はこんなふうにつながった、というような問題はおもしろいです

にょろっぴぃ裏切り、いいですよね

ぽっつにょろっぴぃさんは解く人を裏切る問題が好きですよね。ほかの作家だと、あかしょうびんさんの問題からも感じます

にょろっぴぃあかしょうびんさんとは問題の波長が合いますね。実はぼくの逸品館作品の中に、あかしょうびんさんの逸品館作品に感動して作ったものがあるんです。裏切りかたがあまりにキレイだったから、自分でも「裏切りの美学」みたいのを作ってみたいなと思いまして

(金)裏切りというテーマだと、あかしょうびんさんがいちばん古いかもしれません。ナンバーリンクに限らず、彼の問題にはよく予想を裏切られますよ

にょろっぴぃそれにしても、ぽっつさんが裏切りを大事にしているというのは意外です。nikoli.comの問題では、ぽっつさんは裏切りをあまりやっていないイメージがあります。それよりも、アートとして美しい配置などを第一に考えていると思っていました

ぽっつナンバーリンクの本質としては、裏切りがいちばんだと思います。厳密にいえば、どれがいちばんとかじゃなくて、全部のハイブリッドですけど。裏切りも、美しさも、おもしろさも、アートな部分も、全部ひっくるめて大事。でもたしかに、nikoli.comの自作問題には、裏切りを押し出したものは少ないかもしれません。『パズル・ザ・ジャイアント』に載っている自作問題は裏切りっぷりが酷いですよ。自分で言うのもなんですけど。あっちは1年に1作だけ作ればいいから、時間を気にせずじっくり仕込んでいます。それに、裏切りばっかりやっていると、ボク自身の人格が疑われるじゃないですか

にょろっぴぃそれを言われると、解く人を裏切り続けているぼくの人格はどうなるんですか(笑)。かつて、解いた人のコメントで「にょろっぴぃの問題だから反射的に遠回りした」といった感じのコメントまであったことがあるんですよ

(金)「にょろっぴぃさんがこんなに素直に線を引かせるわけがない!」ということですね。気持ちはわかります

にょろっぴぃだから最近では、裏切ると見せかけて実は裏切らない、その代わりに別の場所で裏切る、というところまで考えて作っています

(竹)まるで化かし合いのようですね

にょろっぴぃこういうことを意識するようになったのはnikoli.comになってからです。昔はもっと単純に、大きいサイズならひたすら難しい問題、小さいサイズならひたすらやさしい問題、という感じで作っていました。nikoli.comだと解いた人からコメントがもらえるのが大きいです

(金)ほかのパズルでは、人を引っかけよう、引っかけるためにこうしよう、なんてことをこんなに考えませんよね

にょろっぴぃそうですね。ナンバーリンクだったら、どんなに意地悪なことをしても、解く人もわかってくれるんじゃないかな、という気持ちはあります

(竹)今後、ナンバーリンクでやってみたいことはありますか?

ぽっつあえて、極端に難しいだけのナンバーリンクを作ってみたいです

にょろっぴぃあ、それは見てみたい。ぽっつさんが考える「世界一難しいナンバーリンク」ですね

(竹)どんな問題になるのか気になるなあ

ぽっつ今度考えてみます。パズルの中身を離れたところでは、もっとナンバーリンクファンを増やしたいです。リアルでそういう運動をやってみたい

(金)お寺を建てるとか?

ぽっついいかも。ナンリン寺を建てて、ナンリン教を始める? まあそれは冗談としても、食わず嫌いが多いパズルだとは思うので、なんとかできたらなあとは思います

にょろっぴぃ裾野を広げたいというのはぼくも同じです。ぼくとしては、いかにも駆け引きがあるということをあからさまに見せつつ、でも難しくはない、という問題を作りたいです。今までの紆余曲折から、食わず嫌いの人に興味を持ってもらえるのはそういう問題だろうという考えをもっています

(金)言いたいことはわかります。作るのはなかなか難しそうですね

(竹)ナンバーリンクを解く人に対して、なにか言いたいことはありますか?

ぽっつナンバーリンクの最大のポイントは「自由」なところだと思っています。だから、ナンバーリンクを解くときは、やりたいときに、やりたいようにやってほしいです。たとえば、上級者たちの間で、「答えの線は全部のマスを通るはずだ」という暗黙の了解のようなものを利用して問題を解くのはアリかナシか、ということが議論になっているのをたまに見かけます。ボクとしては、そうやって解くのも、それはそれでアリだと思います

にょろっぴぃぼくもアリだと思います。というより、その解きかたを使われる前提で、使われてもかまわない問題を作っています。それでもおもしろさは損なわれないようにしているつもりです

ぽっつそもそもナンバーリンクって、解きかたひとつくらいでおもしろさが損なわれるパズルじゃありませんしね

(竹)にょろっぴぃさんからは、問題を解く人へなにかありますか?

(金)「ナンバーリンクにはぼくの人生が詰まっています!」とか?

ぽっつそれはむしろボクのセリフです

にょろっぴぃぼくは、人生までは詰まっていません。でも、ぼくの意地の悪さは詰まっているかもしれない(笑)。ナンバーリンクは、パズルの中でいちばん作者のメッセージを素直に込めやすいパズルだと思っています。ぼくの意地の悪いところを味わってもらえたらうれしいです

(竹)なるほど。ナンバーリンクには、ぽっつさんの人生と、にょろっぴぃさんの意地の悪いところが詰まっているということですね。これからもおふたりのナンバーリンクを楽しみにしています


座談会開催 : 2013年5月 2013年6月14日公開

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