パズル作家座談会 第34回

インタビュー作家座談会

新しいパズル、新しいルール

パズル作家をおよびして語り合うパズル作家座談会のコーナーです。今回のゲストはあさおきたんさん湾狼子さん。おふたりは『パズル通信ニコリ』の人気コーナー「オモロパズルのできるまで」で、数々の新しいオリジナルパズル(オモパ)を生み出してきました。そんなおふたりと、今回は「新しいパズルのルール」をテーマにして語り合いましたよ。nikoli.comスタッフからは(金)と(竹)が参加しました。

(竹)nikoli.comでは現在15種類のパズルを出題しています。どのパズルも、ほかのパズルにはない個性的なルールをもっていますよね。そこで今回は「パズルのルール」についてお話したいと思います。ゲストとして、これまでに斬新なルールをたくさん開発されてきたおふたりをおよびしました

あさおきたんぼくはもう、すっかり昔の人になってしまいました

(竹)最近は新しいパズルのルールは開発してないんですか?

あさおきたんしていません。なにか作りたいとは思っているんですけどね。実は、美術館が載ったあと、オモパのコーナーにもいちども載っていません

(金)おさおきたんさんといえばやっぱり、美術館のあのルールを作った人ですよね

湾狼子あさおきたんさんが作ったパズルでは、個人的にはやじさんかずさんが印象に残っています

(竹)やじさんかずさんは『ニコリ』74号で登場したオモパですね。矢印と数字に従って黒マスを配置するパズルですが、「数字が入ったマスが黒マスになった場合、数字の情報が無効になる」という「無効ルール」が斬新でした

湾狼子といっても、ボクが読み始めたころには『ニコリ』ではもうやじさんかずさんの掲載は終わっていました。『オモロパズル大全集』や『パズルBOX』であとから解きました

(竹)『オモロパズル大全集』は『ニコリ』104号までに掲載されたすべてのオモパを集めた本です。残念ながら現在は絶版なのですが、湾狼子さんはしっかり入手されていたんですね

湾狼子はい。『オモロパズル大全集』で昔のオモパを見ながら、新しいルールを考えることも多いです

(金)新しいことを考えるとき、突然アイディアが降ってくるタイプの人と、しっかり考えて作り出すタイプの人がいると思います。湾狼子さんはしっかり考えるほうですか?

湾狼子そうですね。降ってくるといった感覚はあまり感じたことがありません。こういう矢印を使ったらどうなるだろうと紙にあれこれ書いてみたり、昔のパズルのルールを組み合わせてみたり、いろいろ試しながら見つけています

(竹)ふだんの生活でも考えています?

湾狼子ふだんから考えているというよりは、新刊が出たタイミングとかに集中して考えています。だから、他人が作ったものの改作も多いです

(金)改作のほうがやりやすい面はありますよね。解いていて「このルールはこう変えたほうがおもしろいのに」と思いつきやすい。オモパのコーナーの趣旨ももともと「みんなでルールを改良して盛りあがろう」というものなので、改作はいいことだと思います

(竹)あさおきたんさんはどうですか? たとえば、美術館の照明ルールや、やじさんかずさんの無効ルールは、突然降ってきたんですか?

あさおきたんどうでしょう。当時のことはもう覚えてないです。ただ、そんなに斬新なルールだとは思っていないんですよ。やじさんかずさんの無効ルールって、実はひとりにしてくれでも同じなんです。ひとりにしてくれも、消した数字はなかったことになるじゃないですか。実際にひとりにしてくれから思いついたかはわからないんですけど、たぶんそういった「アイディアの素」はあったんじゃないかなあ。美術館の場合も、なにかきっかけはあったと思います

(竹)いいルールを思いついても、そのあとうまくパズルにできなくて諦めた、といったことはありますか?

あさおきたんありますあります。むしろ、ほとんどのアイディアは実を結びません。思いついたうちの97%くらいはモノにならない

湾狼子ボクもそうです。おもしろいパズルを作れるということ以前に、問題が完成させられないことも多いです。おもしろいルールがあっても、それを活かせるほかのルールが思いつかないとモノになりません

あさおきたんやじさんかずさんは、そのへんがうまくいった例ですね。あれはとなりのトロロさんとの合作ルールで、マスに矢印と数字を入れるアイディアはトロロさんが思いついたんです。もともとは矢印がなくて、数字だけでなんとかやろうとしたんですが、うまくいきませんでした

(竹)なるほど、いいルールを思いつくだけではダメなんですね

(金)やじさんかずさんは、ヤジリンなど、のちの矢印つきの数字を使ったパズルの走りですよね

あさおきたんそうですね。数字と矢印を組み合わせたパズルではほぼ最初の成功例といっていいと思います

(竹)一方で、無効ルールはそのあとメジャーなパズルにはつながっていませんね。どちらもルールとしては斬新だと思うんですが

湾狼子無効ルールは、作る側の立場から見ると使いにくいです

あさおきたん最初の一手が難しくなるのが避けられないですからね

(金)ルールとして複雑すぎるんでしょうね。矢印つき数字は直感的にわかりやすくて、シンプルです。そういうルールのほうが生き残りやすいのかもしれません

(竹)湾狼子さんが作ったパズルにはシンプルなルールが多いですよね。のりのりとか、快刀乱麻(盤面をまっすぐ貫く線を何本か引いて陣地分けをするパズル。湾狼子さんのデビュー作です)とか

快刀乱麻

あさおきたんシンプルなルールにこだわりがあるんですか?

湾狼子あります。ただあとから出てきたこだわりです。最初に載ったのが快刀乱麻で、そのあとにのりのりが載って。それでシンプルなルールのほうが載るのかなと思って、シンプルなルールを心がけてオモパを作っているうちに、シンプルを目指すほうが楽しいと気づいたんです

あさおきたんなるほど、最初からシンプル指向だったわけじゃないんですね。ぼくも、ルールをシンプルにしたいというのがまずあります。作っていて、ややこしいルールを入れて解き味がよくなったりすると、逆に悔しくなります

(金)以前、「説明しないで直感的にわかるパズルがいいパズルだ」とおっしゃっていましたね

(竹)インタビューでは「囲碁のようなパズルがいい」と表現されていました

あさおきたんそうですね。囲碁と比べて将棋が納得いかないのは、駒の動きです。どうして駒ごとに動きが決まっているのかがわからない。たぶん、すごく合理的な理由があって決まっていると思うんですけど、それが傍目ではわからないじゃないですか

(金)囲碁はどの碁石にも違いはないですもんね

(竹)なるほど。ルールという観点から見ると、将棋は囲碁よりもずいぶん複雑なゲームなんですね

(金)じゃあ、ぬりかべのルールってシンプル?

湾狼子複雑だと思います。シンプルではない

あさおきたんぼくの中ではシンプルです。たしかに2×2のカタマリ禁止はちょっと苦しいかな、とは思いますけど

(金)でも、あのルールがパズルとしての深みを出しているんですよね

湾狼子あのルールのおかげで、数字と関係ないところで白マスが決まりますからね

(竹)シンプルではないですけど、慣れれば「これしかない」という感じはありますよね

湾狼子慣れてしまえばなんでも直感的にはなると思いますけど

(金)逆に、あさおきたんさんにとってシンプルじゃないルールってどんなものですか?

あさおきたん恣意的な感じがするルールです

湾狼子たとえば、へやわけの「白マスが3部屋にわたって続いてはいけない」ルールはどうですか?

あさおきたんはい、あれはシンプルじゃないですね

(金)あのルールは、メジャーなパズルのルールの中では、いちばん人工的な匂いがします

湾狼子オモパまで範囲を広げると、もっと人工的なものがあるかも。たとえば、お国めぐりV3はどうですか?

お国めぐりV3

(竹)すべての国を通るような輪っかを引くパズルですね。『ニコリ』65号掲載。ルール5、「線は、4マスにわたって直進してはいけません。つまり、線は2マスまっすぐ進んだら、次は必ず曲がります」。なるほど恣意的だ

あさおきたんたしかにシンプルじゃないですね。それにしてもよく例がポンポン出てきますね。当然、お国めぐりV3のころはまだ『ニコリ』を読んでいなかったわけですよね?

湾狼子はい。『オモロパズル大全集』で見て、かなりヘンなルールだから印象に残っていました

(竹)さすが、よく研究されていますね。さて、今日は「新しいルール」というテーマで話してきました。今後も新しいルールは生まれていくでしょうか? オモパのコーナーがおもな誕生の場になると思いますが

あさおきたんあのコーナーはこれからもずっと続いていきそうですよね。今の感じのまま。今回座談会をやるということで改めて最近のオモパを解いてみたんですが、やっぱりおもしろいんですよ。今でもプロトタイプ感があふれている

(金)ずっと続けたいですね。続くためには、新しい才能がどんどん入ってきてほしい

湾狼子最近また、若い人が増えてきましたよ

(竹)湾さんもまだじゅうぶん若いですけど。あさおきたんさんはもう新しいパズルは作らないんですか?

あさおきたんどうしましょう。まだ作りたい気持ちはあります。でも、作るのはタイヘンですね

(金)エネルギーがいりますよね。今は、いろんな方向ですでにやられちゃっている

あさおきたんでも、誌面を見る限り、まだまだルールのアイディアが尽きてきている感じはしませんね

湾狼子ボクはまだまだ作ります。今月もこれからなにか作ってあのコーナーに送る予定ですよ。まだ思いついていないんですけど

(竹)まだ思いついてなくても、これから思いつく気満々なんですね

あさおきたんすばらしいです。ぜひ、ボクのぶんまで思いついてください

(竹)これからも斬新なルールのパズルがどんどん生まれそうですね。その中から、nikoli.comで出題されるパズルもきっと出てくることでしょう。楽しみです


座談会開催 : 2013年6月 2013年8月2日公開

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