パズル作家座談会 第35回

インタビュー作家座談会

パズルについてあれこれ語る ~おがわみのり、まいなすよんの巻~

パズル作家と語り合うパズル作家座談会のコーナーです。今回のゲストはおがわみのりさんまいなすよんさん。おふたりを交えて、ペンシルパズルについてあれこれ語りました。ニコリからは(金)(竹)が参加しました。

(竹)今日のゲストはおがわみのりさんとまいなすよんさんです。おふたりは何度も顔を合わせていると思いますが、お互いの印象はいかがですか?

おがわみのりまいなすよんさんは、なんでも作る人だなというイメージです。やたら掲載問題数が多いですよね

まいなすよんそうですね。でも実は、美術館やヤジリンは少なめなんですよ。ほかと比べて数が少ないから、ボクの苦手なパズルがこの2つだってばれてしまいそう。おがわみのりさんも掲載が多いですよね。ときどき、とんでもなく難しい問題が出てくるのが印象的です。先日出題された四角に切れもとても難しかったです

おがわみのり自分では難しいものを作っている自覚はあまりないんですよ。ただ、四角に切れとヤジリンについては、自分ではそんなに難しくしたつもりはないのに「たいへん」以上の難易度として出題されることが多いです

(金)おがわみのりさんの四角に切れは難しいですよ

(竹)大きな面積の四角の仮押さえ(「少なくともこのマスまではこの数字の四角に含まれる」という考えかた)でちょっとずつマスが埋まっていって、最後に全体がかちっと決まる、という問題をよく見ます

まいなすよんボクは以前、おがわみのりさんは自分と感覚的に近いところがあるかなと思っていました。ある機会に、そのことをある作家に話したことがあるんですよ。そうしたら「違う」と断言されてしまいました。ボクの問題はいつもふつうだけど、おがわみのりさんはたまに「これはすごい」と思う問題があるそうです

(金)たぶん、おがわみのりさんの問題の中にその人の好みに合う問題があるんでしょう

まいなすよん昔から活躍していることもあってか、おがわみのりさんの問題からは昔っぽいというか「古き良きパズル」といった雰囲気を感じます。四角に切れにせよ、ほかのパズルにせよ

おがわみのりでも、パズル作りにパソコンを利用するようになる前と後では傾向が変わっていると思いますよ。以前より数を作るようになりました。昔は喫茶店で全部手作業で作っていたから効率も悪かったし、答えのチェックもタイヘンでした

(金)昔よりも気楽に作っているということですか? たしかに、最近のおがわみのりさんの問題は、いい意味で肩の力が抜けていると感じます

まいなすよんおがわみのりさんは、解くほうはどのくらいやっているんですか?

おがわみのり他人の問題はほとんど解かないです。だから、新しい傾向がぜんぜんわからないんですよ

まいなすよん解いてみないと、新しい傾向の問題かどうかはわかりませんからね

(竹)なるほど。そのあたりの事情も、おがわみのりさんの問題から漂う「古き良き時代」感に関係しているかもしれませんね。まいなすよんさんはどういう四角に切れを作っていますか?

まいなすよん複数の10前後の数字を駆使して、気持ちよく決まっていく問題がいちばん好きです。ほかの人の問題で、56のような大きな数字をうまく使っているのを見てすごいと思います。すごいけど、それはボクの担当じゃないなとも思います。9や12の四角を気持ちよく決めていくように作っています

おがわみのりぼくは11とか13とかを入れたがります。仮押さえで最初あるていどまで決めて、残りは最後に決めます

(金)四角に切れに限らず、おがわみのりさんは「いきなりバシッと決める」ということをあまりしませんよね。搦め手から攻めていく。「決まりそうで決まらない」というのが好きでしょう?

おがわみのりそれはあります。ここ数年の傾向ですけど

(竹)焦らすのが好きなんですね

まいなすよんボクは焦らすよりもさっさと決めたいです。カックロで9マスの45を多く入れているのも、実はそれに関係するんです。焦らさずに難しいカックロを作るには、と考えて、ああいう問題を作るようになりました

(金)そういえばまいなすよんさんは、カックロの難しい問題でよく見る「このマスとこのマスにはこの数字とこの数字が入るから、どちらにしてもこのマスにはこれが入る」という解きかたをあまり使っていませんね

まいなすよんそうです。ただそれには、焦らすのが嫌いという理由のほかに、9マスの45とその考えかたとを組み合わせるとおもしろい問題に仕立てあげるのが難しくなる、という理由もあります

おがわみのりカックロの9マスって、ぼくはあんまり使わないなあ

(金)意識しないと使いにくいですよ。作るときには不自由ですよね。ハタンもしやすいですし

まいなすよんそうですね。ただ、不自由だから「ここはこうするしかない」という場面も出てきて、自動的に数字が決まってくれる、という便利な面もありますよ

(竹)先ほどまいなすよんさんは、おがわみのりさんが昔から活躍していた、と発言されましたが、まいなすよんさんもパズル歴は長いですよね

まいなすよんそうでもないですよ。『パズル通信ニコリ』を読み始めたのも、月刊になるちょっと前くらいですし

(金)でも、号数でいえば2ケタでしょう。もうベテランですよ

おがわみのり「目にとまった日が発売日」の不定期刊時代からの作家から見れば、ぼくもまだまだですし

(金)それはまさにケタが違いますよ。不定期刊時代だと昭和デビューでしょう

まいなすよんそちらサイドのベテランである(金)さんから見て、おがわみのりさんのイメージは変わってきているんですか?

(金)私の中でのおがわみのりさんのイメージは、今でもジャイアントのナンスケです。最初から最後まで計算し尽くした問題。当時、ナンスケでここまでできるんだって思わせてくれた。そこまで凝ったナンスケはありませんでしたよ

まいなすよんおがわみのりさんのナンスケは最近のものしか知りません。でも、昔から同じだったんですね

おがわみのり昔から変わってないはずです。というより、同じことしかやっていないというほうが正しい(笑)。年に1回、『パズル・ザ・ジャイアント』のときにしか作っていないのでよけいにそうなります。nikoli.comにナンスケがあればいいんですけど

(竹)nikoli.comでナンスケ、ですか

まいなすよんインタフェースはどうなりますかね。ナンバー(数字の列)をマウスでつかんで入れる?

おがわみのりいやいや、それじゃダメです。1マスに1文字ずつ入力しなければいけないから。これは必須でしょう

(金)それに、ナンバーのリストのほうにも印をつけたりメモを入れたりしたいですよね。難しそうだけど

まいなすよん1マスずつ数字を入れて、メモも自由にできるとすると、紙で解くのと大差なくなっちゃいますね

おがわみのりそもそも誰が問題を作るんだ、というのもありますね。ぼくは作りますけど

(竹)うーん、nikoli.comでナンスケをやるのはちょっと難しそうですね。残念。nikoli.comのパズルといえば、最近追加されたさとがえりはどうですか?

おがわみのりいいパズルですよ。わかりやすいです。○の動きが見た目にはっきり出るから。紙で解くのはツライと思います。nikoli.comに合っている。でも、自分で問題を作るとなると難しいです。特に大きなサイズの問題

(竹)サイズが大きい問題を作ろうとすると、なにをやっていいかわからないところがありますよね。これから徐々に形ができていくんでしょうけど

まいなすよん大きいのだと、先日のさぶろうさんの問題がおもしろかったです

(金)大きいさとがえりは湾狼子さんがうまいですよ。まいなすよんさんの問題もおもしろいです。「この○はどっちに動いてもこの国を占有する」という考えかたをおもしろい形で使っていますよね

まいなすよんありがとうございます。ちょっとがんばって作っています。ペンシルパズル全体で見ても、『ニコリ』本誌で消えていったパズルがああいった形で拾ってもらえるというのは楽しいことだと思います

(竹)今後が楽しみなパズルですね。ところで、実は今日おふたりをおよびしたのは、おふたりの問題に似た印象があったからなんですよ。おふたりとも、気の向くままに作っている印象を受けていました

まいなすよんここに来る前に、どうして今日の参加者はボクとおがわみのりさんなんだろうと考えてみたんですよ。ひとつ思いあたることがありました。「ボツ箱に問題を拾われない作家」という共通点があります

(竹)いわれてみれば、おふたりともボツ箱にはまだ掲載されていませんね

おがわみのり要はふつうの問題しか作らないということなんでしょう。ボツ箱はふつうから外れていくようなものを載せるところなので、ぼくの問題はボツ箱には回されない

まいなすよんパズルとしてスタンダードなところを攻めている、というところは共通しているとは思います。ただ、おがわみのりさんは一本芯が通っている感じがします。ボクは、誰かがなにか楽しそうなことをやっているのを見て「よーし、ボクもやるぜ」という乗っかっちゃうことがあるんですけど、おがわみのりさんにはそういったことはなさそうです

おがわみのりたしかに、他人を参考にするといったことはしませんね。しませんし、できません。さっきも言ったとおり、あまり他人の問題を解かないんです

まいなすよんボクはほかの作家の動向はとても気になるし、ほかの作家の問題も解いています。だから、おがわみのりさんのように、完全に我が道を行くタイプとは違うなあと思います

(金)でも、おがわみのりさんも、我が道を行っているとはいいつつ、ちゃんと解く人が楽しめる問題を作っていますよね

おがわみのり解く人を楽しませようという意識はありません。でも、自分の好きなものを作る以上、つまらない問題にはならないと思っています。自分の好きなものしか作りませんし

まいなすよんたぶん、ふたりとも「自分が楽しみたい」というところは共通しているんでしょう

(金)つまり、ふたりは「自己中作家」?

(竹)ややネガティブな表現の気がしますが、そういうことなのかもしれませんね。自己中といいつつ、ほかの人も楽しめる問題になっているところが素晴らしいですよ。ほんとうの自己中だと、きっと人が楽しめる問題はできないはずですから。そんな「自己中作家」のおふたりには、今後の野望などありますか?

まいなすよん美術館を作るときに、もう少し黒マスを増やしていきたいです。見た目がスカスカな美術館では、もうボクがやれることはなさそうなので

(竹)だいぶ具体的な野望ですね。おがわみのりさんは野望がありますか?

おがわみのりヤジリンにはこだわっています。しっかり計算して作っています。具体的には、遠くの矢印で黒マスが決まるような展開を入れるようにしています。あの仕掛けは、緻密に計算して作らないとできないんですよ

(竹)なるほど。まいなすよんさんの美術館とおがわみのりさんのヤジリン、要注目ですね。今日はありがとうございました。これからもぜひ「自己中」にパズルを作り続けてください


座談会開催 : 2013年10月 2013年11月11日公開

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