パズル作家座談会 第37回

インタビュー作家座談会

橋をかけよう

nikoli.comの問題を作っているパズル作家と語りあう作家座談会のコーナーです。今回のテーマは、橋をかけろ。長年おもしろい橋をかけろを作りつづけている鴈野敏生さん鈴木悟さんのおふたりに集まっていただきました。ニコリからは(金)と(竹)が参加しました。

(竹)おふたりとも、橋をかけろ以外の問題も多く作られています。そんなおふたりの中で、橋をかけろはどんな位置づけなんでしょうか

鈴木悟ふつうにライフワークになっています。昔はいろいろ作っていましたけど、今は作るパズルの半分が橋をかけろで、もう半分がひとりにしてくれです

(竹)昔のインタビューでは、理詰めで解けるパズルは全部好きだと発言されていましたね

鈴木悟そうですね。橋をかけろを作りはじめたのは高校生のころだったんですが、当時は20種類くらい作っていた中のひとつでした。そのあと、(金)さんと初めて会ったときに、橋をかけろをもっと作ってくれたらうれしい、というようなことを言われたんです。当時は橋をかけろの投稿が少なかったんでしょうね。鴈野さんのようなライバルもまだいませんでしたし

(金)投稿が少ないというのもあったかもしれませんが、それよりもたぶん、鈴木さんの橋をかけろが当時からおもしろかったんですよ

鴈野敏生私の場合、橋をかけろは3番めに作りはじめたパズルです。数独、カックロの次

(竹)長いおつきあいなんですね。きっかけはなんだったんですか?

鴈野敏生与五沢秀芳さんの作品に刺激されて作りはじめました。彼の問題を何問か解いてみて、こんなこともできるんだな、と思ったんです。中でも『パズル通信ニコリ』84号の問題がよかった。142号の「私も脱帽、あのパズル」のコーナーで、私が選んだ問題です。1どうしがつながらない、という考えかたのおもしろさがよく出ていて、しかも見た目がすごくキレイなんです

鈴木悟キレイな配置の問題があると目立ちますよね。作者も目立ちたかったんだと思います

(金)橋をかけろは、ふつうに作るとどの問題も見た目が同じように見えますよね

鈴木悟そうですね。どう「魅せる」かが難しいです。橋をかけろを作るうえでの、ボクの永遠のテーマでもあります。ボクは見た目で「魅せたい」です。一目見て、「これはいったいなんなの?」という驚きが欲しい。それを試行錯誤した結果が、ボツ箱に載っているような「数字しばり」の問題です

(竹)橋をかけろで見た目に凝ってしまうと、たいていは単調な展開になったりして、問題としてはつまらなくなります。鈴木さんだからこそ、解いたときのおもしろさと見た目を両立できているんでしょうね

鈴木悟おもしろさのほうでいうと、昔はもっととんがっていました。ボツ箱に3と5だけでできている問題を載せてもらっていますけど、昔ならこの問題なら3だけで作っていたはずです。でも、それだと難しすぎておもしろくない。実際、1種類の数字だけの問題を5年くらいずっと投稿しつづけて、ずっとボツだった経験があります。数字を2種類にすると、解き心地がやわらかくなって、採用レベルになるんです。我ながら丸くなったなあと思います

(竹)そうなんですね。鴈野さんは自分で見た目に制約をかけることはありますか?

鴈野敏生ありません。そういえば昔、鈴木さんに影響されて、数字しばりの問題を試したことはあります。3しばりとか4しばりとかは見たことがあるので、じゃあほかの数字はどうなるかなと思ってやってみました。でも、1、2はつまらなくて、5以上になると今の橋をかけろのルールだと問題ができない。ルールを変えて、盤面をトーラスにすればできることはわかりました

(竹)トーラスというと、上下や左右がそれぞれ反対側につながっている盤面のことですね。角や辺といった概念がなくなります。『ニコリ』でも以前、「ループパズル特集」と題して、いろいろなパズルをトーラスにしてみたことがあります

鴈野敏生ただ、橋をかけろをトーラスにしてもおもしろくなるわけじゃないんです。ダメでした。逆に、橋をかけろというパズルは、角や辺といった概念があるからこそおもしろいんだ、ということに気づきました

(金)橋をかけろは、角や辺がとっかかりになることが多いパズルですからね

(竹)それらがまったくなくなるとパターンが限られてしまいそうです。辺といえば、鴈野さんは辺の5を使うのが好きですよね。完全には決まらないんだけど、どちらの方向にも1本だけ線が引ける、というパターンです

鴈野敏生好きです。全方向に2本ずつ引くのには、1本だけ足りない、というのがいいんですよ。もっといえば、辺に4があって、線が引ける3方向のうち1つが1だから、残り2方向に1本ずつ線が引ける、というのが特に好きです

(竹)ずいぶん限定的な好みですね。鈴木さんは、好きな数字や仕掛けはありますか?

(金)鈴木さんには「この解きかたが好き」というのはなさそうです。問題ごとのテーマがある感じがします

(竹)たしかに、「鴈野さんの橋をかけろ」といわれたら漠然とイメージが浮かんできますが、「鈴木さんの橋をかけろ」といわれても決まったイメージは浮かんできません

鈴木悟そうですね。解きかたへのこだわりはありません。もともと、橋をかけろは意図しない方向に解かれてしまうことが常にあるパズルだと思います。だから、あるていどの方向性は決めますけど、そこから先は解く人の自由だと考えて、コントロールするのを諦めています。このあたり、ひとりにしてくれとは対照的です。あっちはできるだけこちらでコントロールしようと思いながら作っています

(竹)なるほど、パズルによって違うんですね

鈴木悟好みというわけではないんですけど、最近は7や8をできる限り問題に入れようとしています。ライトな解き手向けになるかなと思って

(金)でも、鈴木さんの問題だと、7や8の線は引けるんだけど、引いたところでそのあとのヒントにつながらない、というものが多いですよね

鈴木悟そうですね。すぐ引ける線はあまりヒントにしたくないんです。そのくらいですぐに問題が解けちゃったらつまらないじゃないですか

鴈野敏生私は逆だなあ。せっかく十字形の壁ができるから、それを利用して解けるようにすることが多いです

(竹)鴈野さんの問題だと、7で線を4本引いたあと、すぐ近くにある3から2方向に1本ずつ線が出る、という展開をよく見かけますね。そのあたりの感性が180度違っているのはおもしろいです

鴈野敏生7と8の話でいえば、私は7は使いますけど、8はほとんど使いません。パッと決まっちゃうと物足りないと思ってしまいます。8で4方向に線を2本を引かせるくらいなら、4方向のうち2方向の数字を1にして、8を6にします。実質同じなんですけど、解く人に少し考えてもらえるほうが好きなんです。パズルは考えて解くものだと思っているので。同じ理由で、辺の6や角の4も自分の問題ではあまり使いません

(竹)少しでも多く、考えさせる部分を盛りこみたいということですね

(金)鴈野さんはそういう意味でのサービス精神が旺盛ですよね。だから鴈野さんの橋をかけろは解いていて楽しいんでしょう

鴈野敏生今日、橋をかけろの座談会があると聞いて、橋をかけろが実際にどのくらい解かれているか気になりました。それで、nikoli.comで問題を開いた人と解いた人の人数を調べてみたんですよ。そしたら、全部のパズルの中で、見ている人、解いている人、ともに2番めでした。1番は美術館です

(竹)そうですね。実は橋をかけろを解いている人はすごく多いんです

鴈野敏生それから、問題を開いた人に対する、問題を解きおわった人の割合がほかのパズルより多かったです。ルールがシンプルだからでしょうね

(金)それと、すごく難しい考えかたというのがほとんどないからでしょう

(竹)橋をかけろは、コツコツ解き進めていけばいつか解けるパズルですよね

鴈野敏生橋をかけろは解きやすいパズルなんだなと、改めて認識しました。本の『ニコリ』にほとんど載らなくなったのは残念です

(竹)本だとどうしてもスペースに限りがありますからね。nikoli.comではこれからも出題していくつもりなので、もりたてていきましょう。「これから」といえば、これから先、橋をかけろはどうなっていくと思いますか?

鴈野敏生もう、ネタはだいたい出つくしていますよね

鈴木悟そうですね

(竹)ネタで勝負している鈴木さんでもそういう考えなんですね

鈴木悟完全に新しいネタはもうないと思います。特にnikoli.comで出題されるようになって、研究しつくされてしまったなあと感じています

(竹)じゃあ、このまま淡々と続いていくんでしょうか?

鈴木悟新しいネタはありませんが、淡々とってわけではないと思います。もりあがっています。今のnikoli.comの橋をかけろは、おもしろいです

鴈野敏生解く人が多いということは、純粋にパズルとしておもしろいと評価されているんだと思います

(金)解いている人がちゃんと楽しんでくれているから、今でも解いている人があんなにいるんでしょうね

(竹)今後、橋をかけろでやってみたいことはありますか?

鴈野敏生とにかく、サバイバルです。ずっとnikoli.comで出題されつづけてほしい。そのために、これからもいい問題を作りつづけるつもりです。今の解いている人の数をキープしたいです

鈴木悟さっき新しいネタはないと言ったことと矛盾してしまうんですが、それでもまだボクは誰もやっていないことをやりたいという気持ちを持っています。数字しばりの問題を見ても驚かなくなってしまった人ですら、アッと驚くような問題を作りたいです

(竹)すごい。橋をかけろのベテランらしい野望ですね。おふたりとも問題を作りつづけていただけるようでうれしいです。今日はありがとうございました


座談会開催 : 2014年4月 2014年5月21日公開

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