パズル作家座談会 第38回

インタビュー作家座談会

パズルについてあれこれ語る ~けんじゃ、湾狼子の巻~

nikoli.comで活躍中のパズル作家とあれこれ話す作家座談会のコーナーです。今回のゲストは、けんじゃさん湾狼子さん。どちらも20代前半の学生さんです。特にテーマを設けずに、パズルについて広く語りました。はてさて、どんな話になりますやら。ニコリからは(金)と(竹)が参加しました。

(金)おふたりともまだ学部生ですか?

けんじゃはい、学部4年生です

湾狼子ボクは修士の1年生です

(金)1年違いなんですね。学業とパズルの両立はうまくできていますか?

けんじゃちょうど今、うまく両立できるよう努力しているところです。卒業に向けて、必死に単位を集めています。忙しいです

(竹)無事に卒業できますように。湾狼子さんはどうですか? 大学院に進んでも以前と変わらず作れていますか?

湾狼子今のところは変わっていません。そのうち論文を書くようになったら、作る量が減るかもしれませんけど。今は、大学に行くとほとんどパソコンに向かっています。研究用のプログラムを動かして、結果を待っている時間に論文を読んでいます。その合間に、パズルを作っています

(竹)じゃあ、パズルはパソコンの画面上で作ることが多いんですか?

湾狼子いえ、パソコンでも紙でも作っています。パソコン向きのパズルとそうでないパズルがあるので

けんじゃボクはどのパズルも紙で作っています。紙のほうがほかのことに気を取られないぶん、作ることに集中しやすいです。集中しないと最後までやりきれない性格なので、紙のほうが性に合っています

湾狼子へやわけやシャカシャカは、ボクも紙のほうが作りやすいです。仕掛けを入れたいときに、「ここはこのあと、こういうふうに仕掛けが残る」というような目印を書き込みやすいから。でも、いちど盤面を組みあげてしまったあとはすぐにパソコンに入力して、そのあとの解きなおしや修正はパソコンの画面上でやっています。最近は、原稿はTeX(組版処理をするソフトのひとつです)を使って作っています。問題の盤面以外の部分を整形した雛形をあらかじめ作っておいて、新しい問題を作ったらその雛形に当てはめてそのまま印刷する、という流れができています

けんじゃ進んでいますね。『パズル通信ニコリ』の誌面をコピー機でコピーして、必要な部分以外を修正ペンで消して原稿を作っているボクとは大違いだ(笑)

(金)いいですね。ニコリの編集部でも昔そうやって本を作っていたことがありました。メリットもあるんですよ。問題の盤面を当てはめる部分の大きさがコピー前のものと同じになるから、絶対に問題サイズを間違えません。読者からの投稿作品の中には、通常のものとサイズが違っているものがたまにあるんですよ。そういう問題を意図せず載せてしまうミスを防げます

湾狼子そういえばボクも、サイズ違いの問題をnikoli.comに送って、(金)さんに送り返されたことがありました

(竹)なるほど、パソコンも万能ではありませんね。ところで、おふたりともパズルや大学の勉強とは別に打ち込んでいることがありますよね。けんじゃさんは水泳、湾狼子さんはSF小説を読むこと。パズルとの相互作用はあるんでしょうか?

けんじゃサークルを引退してしまったので、最近はあまり泳がなくなりました。でも、モチコロ(けんじゃさんが考案したパズルです)は、プールで泳いでいるときに考えついたようなものです。泳いでいるときって、ずっと床を見ているじゃないですか

(金)わかります。底がタイルになっているプールだと、タイルの模様がパズルのマス目のように見えますよね。ずっとマス目を見ながら泳いでいるから、どうしてもパズルのことを考えてしまいます

(竹)なにかできそうな気がしてきますよね

けんじゃ水泳も変わらず好きですが、最近は80年代のプロレスを観るのにハマっています。全日本プロレスと新日本プロレスがあって、新日で猪木がハデなことをやっていたころのプロレスです。プロレスにはパズルと似ているところがあると思います。プロレスには導入の演出がちゃんとあって、試合展開もしっかり組み立てられている。最初に取っ組み合いがあって、小競り合いがあって、ちょっとした波があって、大技で終わる。その流れがペンシルパズルとそっくりなんですよ。スリザーリンクでいえば、大きな2つの輪っかが最後にひとつながりになるのが大技です

(金)「来るぞ来るぞ」と思ったら大技が来る、というあの感じですね。私はリアルタイムで観ていたのでわかります。でも、たぶん湾狼子さんはプロレスを観たことがありませんよね?

湾狼子ありません。大学の授業で、題材として聞いたことがあるくらいです

けんじゃ湾狼子さんはSF小説が好きなんですよね。小説でもそういう「決まりごと」のようなものはありますか?

湾狼子それなりにあります。でも、どちらかというと決まりごとを破る人のほうが多いです。特にSFの小説だと「型にはまっていないのがよかった」というふうに評価されていることがよくあります

(竹)「型」というのは、たとえばどんなことでしょう?

(金)SFだと、たとえば「冷たい方程式」というものがありますね

湾狼子そうですね。「冷たい方程式」という有名な作品があって、その作品と同じシチュエーションを使った新しい作品を何人もの作家が書いています。シチュエーションは同じなんだけど、オチや問題の解決方法はみんな違います。「ほかの作家と同じことをしてはいけない」という感覚が作家側にも読者側にもあると思います

(金)新しいSF作家が今「冷たい方程式」のバリエーションで新しい話を書こうとすると、自分が思いついたネタを過去に誰かが発表しているかどうか、全部調べないといけません。めんどくさいですよね。今のSF作家の立場だと、新しいシチュエーションを独自に作ったほうがいいかもしれません。ペンシルパズルでも同じことがいえそうですね。昔から研究されているカックロには、今さら新しいネタはないだろう。だったらオレはカックロじゃなく新しいパズルをやろう。と最近のパズル作家は思いそうです

湾狼子そうですね。ただ、ペンシルパズルだと、同じことをしても見せかたを変えればだいじょうぶだと思います。SFだと同じネタを使うとそれだけで評価が下がってしまうところがあります

(金)エンターテインメントというくくりでは、プロレスもSF小説もパズルと通じるところはあると思います。どれも「いかにオーディエンスを楽しませるか」という要素がありますよね。ただ一方で、パズルの作家さんにはあまりそういうことを考えず、自由に好きなものを作ってくれたらうれしい、という気持ちも私にはあります

(竹)nikoli.comの話をしましょう。nikoli.comの問題はどのくらい解いていますか?

湾狼子半分くらいです。さとがえりは新しいパズルということもあって、もうちょっと解いています

けんじゃボクはnikoli.comの問題は全部解いています。解かないと、今どういうふうな問題がはやっているのかわからないので

(金)トレンドを気にするほうなんですか?

けんじゃ最近、気にするようになりました。まわりのトレンドと自分の傾向があっているのか気になります

(金)湾狼子さんはどうですか? 問題を見るかぎり、気にしていないように見えます

湾狼子気にしません。逆に、トレンドだとわかったらそのネタを使った問題は作りません

(竹)考えかたが違っていておもしろいですね。パズル別だと、けんじゃさんは今でもスリザーリンクがいちばんですか?

けんじゃそうです。スリザーリンクだけは自分のものにしているという感覚があります。ほかのパズルは、まだ作ることじたいが挑戦です

(金)湾狼子さんがいちばん得意なのはどのパズルですか?

湾狼子やっぱり、ましゅですかね。いちばんコントロールしやすいパズルです。ボクは、作るときに自由なほうがいいです。逆にスリザーリンクは、数字を点対称に配置するという作家側の決まりごとがあるので苦手です

けんじゃボクはあれくらいの制約があるほうが作りやすいです

(竹)じゃあ、もしスリザーリンクで「数字を点対称に置かなくていいよ」って言われたら、どうします?

けんじゃ自由すぎて、なにをやっていいかわからなくなってしまうかもしれません

湾狼子ボクはそのほうが作りやすいでしょうね

けんじゃあるていどの制約があって、その中でなにかやろう、というほうがボクは好きです。でも、最近は好き嫌いせずにいろいろなパズルに手を出すよう心がけています。nikoli.comでやっていないパズルも作りたいです。湾狼子さんみたいに、数字系やら言葉系やらなんでも作っているのはすごいと思います

湾狼子ボクはどんな種類のどんなサイズのパズルも作れるようになりたいんです。作れるパズルをとにかく増やしたいです

(金)たとえば、まちがい探しなんかも作りたいんですか?

湾狼子はい。絵を描けないので今はできていないんですが、いつかは作りたいです。単純にパズルを作るのが楽しいので、なんにでも手を出したいんです

(竹)純粋な野望ですね。けんじゃさんはパズルについてなにか野望はありますか?

けんじゃなんでも作りたいというのは湾狼子さんと同じです。それに加えて、ただ作るんじゃなくて、解く人と会話ができるようなパズルを作りたいです。ニコリのパズルのいいところは、編集、作家、解く人が通じあっているところだと思います。問題を解いてくれる人がいないと成りたたない世界だと思います。だからパズルの問題を通して通じあいたいです

(金)解いてくれる人がいてこそパズルだ、というのはそのとおりですね

(竹)おふたりの野望が聞けたところで、今回はお開きにしましょう。これからもすごい問題を解かせていただけそうで楽しみです。今日はありがとうございました


座談会開催 : 2014年6月 2014年7月8日公開

関連リンク