パズル作家座談会 第39回

インタビュー作家座談会

意外性のある作家

nikoli.comの問題を作っているパズル作家と語り合う作家座談会のコーナーです。今回のゲストは、あかしょうびんさんと坂本伸幸さん。解く人が驚いたり、意表を突かれたりする「意外性」のある問題について話しました。ニコリからは(金)と(竹)が参加しましたよ。

※ボツ箱や逸品館のページは、nikoli.comに会員としてログインするとご覧いただけます。

(竹)今回は、意外性のある問題を多く作っている作家ということで、おふたりをおよびしました。自覚はありますか?

坂本伸幸あります。スタンダードな問題も作っていますけどね

あかしょうびんあります。意外性といってもいろいろな意外性がありますが、私の場合は解き手の裏をかくとか、だますとかいった方向で問題を作っています。腹黒いです(笑)。坂本さんは、だますというより「どんなものが出てくるんだろう」とワクワクさせる方向の意外性ですよね

坂本伸幸そうかもしれません。問題で解く人をだまそうと思ったことはあまりありません

(金)クリーンな意外性ですね

(竹)今日はおふたりに、「意外性」をテーマとして、過去にnikoli.comで出題された自作の問題の中から気に入っている問題を選んでいただきました。それを見ていきましょう

あかしょうびん坂本さんが選んだボツ箱のぬりかべ(2011年9月16日公開)はすごいですよね

(竹)たくさんの「1」で壁を作っていく問題です

(金)坂本さんの問題は、まず開いてみてびっくり、というパターンが多いですよね

坂本伸幸そうですね。なんでも極端にやって解く人の意表を突くパターンがほとんどです。そうすると、見た目も極端になりやすいんです

(金)あえてやりすぎることで意外性を出す、ということですね

坂本伸幸この問題で言うと、ネタとしてはたぶんいろいろな作家が考えていると思うんですよ。でもふつう実際には作らない。なのに、ほんとに作ってしまったのがボクだったということだと思います。ほかに、逸品館に選ばれた美術館の36x20のらくらく問題2つ(2009年7月分2012年1月分)もそうです。思いついた作家は多いと思います

あかしょうびんたしかにこの美術館は、作家ならいちどは誘惑にかられて、でも最後まで作り上げずに終わってしまうものだと思います。坂本さんの意外性は、誰でも思いついたことをほんとにやっちゃうことと、それをちゃんとおもしろく解けるレベルまでまとめあげるところ。希有な人だと思います

(竹)あかしょうびんさんは、2008年7月と12月に出題された、10x10のましゅを選んでいます。解いてみるとわかりますが、Bは最終的に線が外周をぐるっと回り、Aは線が外周を回りません

坂本伸幸見た目はほとんど同じだけど、最後の展開はぜんぜん違うんですね

あかしょうびんこの2つは、いっしょに作って、同時にnikoli.comに投稿しました。もちろん外周を回らないAの問題がほんとうに作りたかったほうです。BはAの意外性を引き立たせるために作ったつもりでした。Aが出題されたとき解いた人のコメントを見ていたんですが、「だまされた!」というコメントが並んでいて満足しました(笑)。Bのほうは楽しかった、おもしろかったというコメントが多かったですね。逸品館に選ばれたのもAじゃなくてBでした。予想はしていたから、いいんですけどね

坂本伸幸Aは、作家から見ると投稿するのに勇気がいる問題ですね。線が通らないマスが多いとつまらなくなって、ボツになってしまうかもしれません

(竹)2つの問題を並べて解き比べると、あかしょうびんさんの狙いがよりよくわかりますね。もうひとつ、逸品館に選ばれた10x10のおてごろナンバーリンク(2010年4月分)も見てみましょう。2つの「1」がすぐ近いところに置かれているんですが、ぐるっと遠回りしてつなげないと解けない、という問題です

あかしょうびんこの問題は「だましの入門」という意味合いで作った問題です。私はパズルでだますのが好きですが、だましたい対象はエキスパートなんです。初心者までだましたいとはあまり思っていません。逆に、初心者にはわかりやすい形でだましを見せたいと思っています。ナンバーリンクはだます方向で意外性のある問題を作りやすいパズルですが、わかりやすい形のだましを入れた問題を作る人はあまりいないように思います

(竹)たしかに、この問題はいかにも1がまっすぐつなげそうなのに、実際にまっすぐつないだらすぐダメだとわかりますね

坂本伸幸実は今回、事前にこの問題を解いてみたんです。そうしたら、まず1と1を結んでハタンしてしまいました。テーマが「意外性」で、いつも裏をかくあかしょうびんさんがわざわざみずから挙げた問題なんだから、きっと裏のさらに裏をかいて1はまっすぐつながるだろうと思ってしまったんです。深読みしすぎでした(笑)

(金)今のナンバーリンクはもう、誰が作ったどんな問題でも「たぶんこうだろう」と予測して解くのが難しくなっていますよね。近くにある数字がまっすぐ結ばれることも遠回りすることも、どちらもふつうにあって、裏をかこうにもどちらが「表」でどちらが「裏」なのかわからなくなっています

あかしょうびんいい意味でだましあいがあたりまえのパズルになっていますよね。だましの文化そのものが作家に広がっているのかもしれません。解き手も含めてみんなで作ってきた文化だと思いますが、私自身、だましのテクニックを開拓してきたという自負はあります

(竹)ナンバーリンクはこれからも意外性のある問題がどんどん出てきそうですね。パズルごとに見ていくと、ほかに意外性のある問題が作りやすいパズルはなんでしょうか?

あかしょうびんほかのパズルでは、四角に切れもわりといろんな作家が意外性のある切り方の問題を作っていますよね。逆に、理詰めでコツコツ解いていくしかないようなパズルは意外性を入れにくいですよね。たとえば波及効果なんて、意外性を入れる余地がないような気がします

坂本伸幸どうやれば意外なのか、というのがわかりにくいですよね。ただ、波及効果だとボクがたまに作っている8x8のらくらく問題みたいな方向があると思います

(竹)最初から数字をたくさんあかしておいて、どこからでも手をつけられるような問題ですね

坂本伸幸波及効果はもともと難しいパズルだと思うんですよ。だから、極端にやさしい問題には、それだけで意外性があると思っています

(竹)たしかに「こんなにカンタンに解けた!」という意外性はありますね

(金)波及効果といえば、ボツ箱のあかしょうびんさんの波及効果(2013年12月24日公開)はどうですか? あかされている数字が魔方陣になっている問題です。あの問題には意表を突かれました

あかしょうびんそうか、見た目の意外性という方向もありますね。私自身はふだんあまりやらない方向の意外性ですが、あの問題についてはうまくいきました。見た目を追求すると、解き心地に影響してしまって、駄作一歩手前までいってしまうんですよ。この問題も、独特な解き心地になっていると思います

(竹)独特ですけど、おもしろい解き心地ですよ

坂本伸幸意外性のある問題を作りやすいパズルというと、今はさとがえりが狙い目だと思います

あかしょうびんまだあまり開拓されていませんからね

坂本伸幸開拓されていなくて、あるていど普及してきている、というのがいいと思います。「ふつうはこうだろう」という共通の感覚がそろそろできあがりつつあるころだと思います。共通の感覚がないと意外性も出しにくいですからね

(竹)さとがえりといえば、坂本さんが作った、2013年10月公開分の逸品館は意外性がありましたよね。「2」による部屋の仮押さえが連鎖していく問題です

坂本伸幸あの問題は、さとがえりには難しい解きかたは存在しないのかな? と思ってあれこれ試していたときに思いついて、たまたまうまくいった問題です。さとがえりにはまだ発見されていない解きかたがいろいろあるんだとわかりました

(竹)なるほど、さとがえりの意外性には注目していきましょう。ところで、意外性のある問題を作るモチベーションはどこから来るんでしょうか? あかしょうびんさんはインタビューで「人をだますのが好きだから」と話していましたね

あかしょうびんそうですね。ほかには、自分のことを覚えてもらえるというのはあるのかもしれません

(金)自分の名前を解く人に覚えてもらいたいですか?

あかしょうびんはい。問題を通して、解く人に「あかしょうびんにだまされた」という記憶が残ってほしいです。その人が私の別の問題を見たときに、作者名を見ただけで「もうコイツにはだまされないぞ!」と思ってもらえるのが快感なんです。そのうえで、その人をまただませればさらに快感です

坂本伸幸ボクは名前についてはそんなにこだわりはありません。名前よりは、それぞれの問題を覚えてもらいたいです

(竹)なるほど。おふたりには、今後の野望はありますか?

坂本伸幸基本的には、今までどおり作っていきたいです。だます方向でなく、クリーンな方向の意外性で。でも、今日あかしょうびんさんからだましについての話を聞いて、そちらにも興味が出てきました。だまし系の問題もこっそり作ってみようかなと思っています

あかしょうびんそれは楽しみです。解く側も警戒していないから、坂本さんがやったらみんなコロッと引っかかっちゃうかも。いやあ、話をしに来たかいがありました(笑)

(竹)あかしょうびんさんの野望はなんですか?

あかしょうびんその道のエキスパートだけを鮮やかにだますような問題を作りたいです。具体的には、ナンバーリンクで、初心者や中級者は素直に解けるのに、ぽっつさんやおらけさんみたいなナンバーリンクのエキスパートだけがだまされてハタンしてしまう問題。もしそれができたら引退してもいいと思っています

(金)それはとても難しい野望ですね。とうぶんは引退できなそうです

(竹)ずっと引退しないでいただけるのは、nikoli.comとしてはうれしいことです。おふたりとも、今日はありがとうございました。これからも意外性のある問題を楽しみにしていますね


座談会開催 : 2014年7月 2014年8月22日公開

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